【日刊埼玉西武ライオンズからのお知らせ】
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中島裕之選手のメジャー移籍に暗雲が立ち込めてきた。ここまで中島選手の代理人とヤンキース側が交渉を続けてきたが、なかなかお互いが納得できる結果を導き出せないようだ。中島選手サイドは昨季の2億8000万円に近い年俸と出場試合数を要求しているが、ヤンキース側は年俸8000万円前後を提示し、出場試合数は確約できないと明言している。交渉期限は日本時間の1月7日で、残りは3日にも満たない。この現状を考えると、中島選手のヤンキースとの契約は難しいと言わざるを得ないだろう。

ヤンキースが250万ドル(1億8800万円)で中島選手との交渉権を落札したのは12月上旬。ヤンキースは最初から中島選手をバックアップ要員と考え、250万ドルという入札額を設定した。そして他のメジャー球団が250万ドル以上の入札額を設定しなかったということは、現状ではこれが中島選手に対する最大限の評価だと言える。ポスティングを表明した直後は、サンフランシスコ・ジャイアンツや、バルティモア・オリオールズなどが中島選手に興味を持っていると報じられたが、結局彼らの中島裕之評は、250万ドル未満だった。

このような状況ははじめから想定されたことだった。例えどんな評価だったとしても、中島選手はポスティングで落札してくれた一球団との交渉しか認められない。これがポスティングとフリーエージェントの最大の違いだ。もし中島選手があと一年待ち、フリーエージェントでメジャー移籍を表明していれば、まさに中島選手が求める契約条件で移籍先を探すこともできた。だがポスティングとなると、入札金+契約金+年俸という獲得資金が必要となるため、メジャー球団と言えど下手に入札することはできなくなる。

ヤンキースのショートにはデレク・ジーター選手が君臨し、サードにはアレックス・ロドリゲス選手(Aロッド)、セカンドにはロビンソン・カノ選手がいる。つまり中島選手が守れるポジションに、空きはまったくない状態なのだ。だが160試合の長丁場を戦うメジャーリーグでは、主力選手を月に数試合休ませることがある。ヤンキースはその際のバックアップ要員として、中島選手の獲得を表明したのだった。しかしバックアップ要員では、例え中島選手がセカンド、サード、ショートのすべてをこなせたとしても、スタメンで出場できるのは月に10試合にも満たないだろう。

だが、中島選手はそれでもヤンキースと契約すべきだと筆者は考えている。そもそもメジャー最強の内野陣を間近で見ることができるのだ。それは中島選手の今後を考えれば、間違いなく大きな財産となるはず。特にカノ選手は中島選手と似た体格でセカンドを守り、その姿は大いに参考になるはずだ。そしてショートを守るジーター選手に関しては190cmあり、これだけ大柄な選手がどのようにしてショートを守っているのかを学べば、これも大きなプラスとなるはずだ。

スタメンで月に10試合も出られなかったとしても、その10試合+途中出場の機会で安定したプレーを披露し続ければ、トレード期限である7月31日までに必ず中島選手を欲しがる球団が現れるだろう。中島選手はヤンキースという常勝球団で自らをさらに高めつつ、そのチャンスを待つべきだと筆者は考えているのだ。

だがヤンキースとの交渉が決裂した場合、果たして中島選手はライオンズに残留することができるだろうか。昨季の100打点と3割弱の打撃、キャプテンとしての大きな働きを考えれば、2億8000万円からの年俸の高騰は避けることはできない。少なくとも5000〜8000万円のアップは西武球団は考えなければならないだろう。そうすれば3億5000万円という数字が契約交渉のラインとなってくる。すでに中島選手が抜けることを前提に補強を進めてきた西武球団が、今季中島選手にこの金額を出すことができるだろうか。

もちろん人気度が抜群で、集客力もある中島選手が残留すれば今季の観客動員数や勝ち星もある程度は計算することもできる。FAではないため、ポスティングによる交渉が決裂すれば中島選手の保有権はそのままライオンズに戻ることとなる。しかし低い入札額でもポスティングを受諾してくれた球団、ユニフォームに温かいメッセージを書き贈ってくれたチームメイトたちのことを思えば、ここは男気を強く持ち、まさに下から這い上がる覚悟で中島選手にはヤンキース入りを果たしてもらいたい。

ヤンキースに所属することでポスティングにかかる費用が必要なくなったとなれば、メジャー他球団は間違いなく中島選手への視線をさらに熱くするはずだ。だからこそ中島選手には今はヤンキースからの低い評価を甘んじて受け入れ、少ないチャンスをものにすることで自らの価値をここから高めていってもらいたい。そして秋には、ヤンキースのGMキャッシュマンを後悔させるような活躍をポストシーズンで魅せてもらいたい!