北京軍区総医院(病院)敷地内で11月27日、病人を乗せて出発しようとした救急車の医師や運転手が見知らぬ男6、7人に殴られたことが分かった。襲撃者は違法に営業する救急車の関係者で、“商売をじゃまされた”として襲撃したとみられている。北京青年報系のニュースサイト北青網などが報じた。

 救急車に乗り組んでいた医師によると、11月27日午後7時50分ごろ、北京軍区総医院から長峰医院に転院する患者がいるとして出動要請を受けた。北京軍区総医院に到着して患者家族に事情を聞くと、自宅に連れて帰ってほしいと懇願された。

 患者が衰弱したため治療をあきらめて自宅ですごさせてやりたいとの意向だった。正規の救急車には、医療機関から搬送する場合、別の医療機関を目的地しなければならないとの規則がある。一方、違法営業の救急車は、病院の敷地内に乗り入れられない。患者家族は「途中で、違法営業の救急車に患者を乗り換えさせてほしい」と求めた。

 出動した救急車の医師は、「規則を破るわけにはいかない」と説明。家族も最終的に、長峰医院まで搬送することを了承した。

 救急車が発進しようとすると、乗用車1台が近づいてきて6、7人の男が降りた。男らは運転席や助手席のドアを開け、いきなり医師や運転手を殴った。しばらくすると襲撃した男らは救急車内に医療用機器があることに気づき、「上部から派遣されてきたのか」などと言い、立ち去ったという。

 殴られた医師によると、襲撃した男らは北京軍区総医院を拠点に“営業”している違法な救急車の関係者である可能性が高いという。

 違法営業をしている救急車は、それぞれが特定の病院を「地盤」にしている。患者家族は最初、長峰医院を「地盤」としている違法営業の救急車に連絡をしたが、「北京軍区総医院の敷地内には入れない」として断られた。

 一方で、北京軍区総医院を地盤としている違法営業の救急車関係者は、正規の救急車を長峰医院方面から来たと誤認し、「縄張りを荒らして商売のじゃまをした」と考えて襲撃したとみられる。

 中国では、違法営業の救急車が極めて多いとして問題になっている。米国などと同様に救急車の利用が有料であるため、低料金である違法救急車に対する需要が存在する。しかし、違法救急車は一部車両に酸素吸入の装置がある程度で、正規の医療スタッフも乗り組んでいない。そのため、搬送中の患者の容体が急変して死亡する例も相次いでいる。(編集担当:如月隼人)