【柏×浦和】 ゼリコ・ペトロヴィッチ監督に対する疑問
■ 第10節
J1の第10節。3勝1敗と好スタートを切った柏レイソルが国立競技場で浦和レッズと対戦。浦和はここまで1勝3敗。第8節はベガルタ仙台に0対1、第9節は横浜Fマリノスに0対2で敗れたため2連敗中である。
ホームゲームとなる柏は<4-2-2-2>。GK菅野。DF酒井、増嶋、近藤、ジョルジ・ワグネル。MF栗澤、大谷、レアンドロ・ドミンゲス、大津。FW田中順、北嶋。32歳のFW北嶋は今シーズン初スタメン。第8節の甲府戦、第9節の山形戦はともに途中出場でゴールを決めている。DFパク・ドンヒョクは欠場で、DF増嶋がセンターバックに入る。
対するアウェーの浦和は<4-2-3-1>。GK山岸。DF高橋峻、スピラノビッチ、永田、宇賀神。MF山田暢、柏木、マルシオ・リシャルデス、原、原口。FWエジミウソン。清水エスパルスから加入のMF原一樹がトップ下で先発出場。MFマルシオ・リシャルデスが右サイドに入る。
■ レイソルが圧勝
試合は開始早々に柏が先制する。MFレアンドロ・ドミンゲスのパスからDF酒井が右サイドの裏に飛び出すと中央に鋭いクロスを供給。これをニアサイドに走り込んできたFW北嶋がうまく合わせてあっさりと先制する。FW北嶋は3試合連続ゴール。さらに柏は前半21分にもカウンターで追加点を挙げる。奪ったボールを素早くつないでDFジョルジ・ワグネルがボールを持つと、得意の左足でミドルシュート。これが豪快に決まって2対0とリードを広げる。
浦和は後半開始からMFマルシオ・リシャルデスをトップ下に戻し、いつもの布陣に変更。後半はボールを持って攻め込んでいくが、後半38分に柏がセットプレーを獲得し、こぼれ球をまたしてもFW北嶋が決めて3点目。3対0とリードをセーフティーリードとする。FW北嶋は今シーズン4ゴール目。終了間際に浦和はFWマゾーラのドリブルからMF原口が決めて1点を返すが、反撃は1点のみ。3対1で柏が快勝し、仙台が引き分けに終わったため首位に浮上した。
■ 首位に浮上
第9節にモンテディオ山形に敗れて初黒星を喫した柏だったが、国立で浦和を圧倒して4勝目。首位に浮上した。J2からの昇格組ではあるが、開幕前から評価は高く、「上位に加わっていくのでは?」と思われていたが、期待以上の成績を残しており、J1でもトップに立った。
この試合は開始わずか1分でFW北嶋のゴールで先制すると、前半21分に中押し、後半38分にダメ押しと、理想的な試合運びを見せた。初先発のFW北嶋が2ゴールを決めるところもチームが乗っている証拠であり、浦和にほとんど隙を与えない完勝だった。終了間際に1点を返されたが、DF近藤とDF増嶋のセンターバックコンビも好プレーを続けた。急造のコンビであり、コンビネーションは心配されたが、全く問題はなかった。
■ 昇格組の躍進
近年はJ2からの昇格組の躍進が目についており、2009年の広島が4位、2010年のC大阪が3位に入っているが、柏が同じくらいの成績を残してACLの出場権を獲得したとしても全く不思議ではない。もちろん、2008年の札幌、2010年の湘南のように、記録的な大差でJ2に降格してしまうチームもあるが、侮りがたいチームが多く、J1で存在感を示す昇格組は多い。
広島、C大阪、柏といったチームは、もともとJ1で長い間、プレーしていたチームであり、クラブの規模もJ1レベルなので、おかしなことではないが、J2でシーズンを過ごすことで、若手が出場機会を得て、層が厚くなってJ1に戻ってきている。
広島では、DF槙野、MF高萩、DF森脇、C大阪ではMF香川、MF黒木、柏ではMF茨田、FW工藤、DF酒井といった選手がJ2で出場機会を得て活躍し、チームの戦力となったが、J1にいると、10代後半や20代前半の若手を継続して使うのは難しく、出番に恵まれずに伸び悩んでしまうが、その点、広島、C大阪、柏あたりは、J2の中では最上位にランクされるので、若手も抜擢しやすく、彼らも試合に出て、勝ち続けることで力をつけていくという好循環が生まれている。
■ ベテランFW北嶋が2ゴール
首位浮上の立役者の一人になっているのが、32歳のベテランのFW北嶋。この日も2ゴールで、これで3試合連続ゴール。J1の得点ランキングでも単独トップに立った。2000年のアジアカップの優勝メンバーでもあるFW北嶋がJ1でこれだけの活躍を見せるというのは驚きで、シーズン序盤のサプライズといえる。
1点目はクロスにピンポイントで合わせたゴールで、2点目はポジショニングの良さで奪ったゴールだったが、ともにストライカーのFW北嶋らしいゴールで、抜群の嗅覚は衰えてはいなかった。ネルシーニョ監督がフォワードに求めていることは多いので、若い選手と同じような働きをするのは体力的にも厳しいと思われるが、守備でも良く頑張っており、ここまでは見事な活躍を見せている。
■ 光るネルシーニョ采配
ネルシーニョ監督の選手起用も巧みで、ここまでのところ、豊富な前線と2列目の選手をうまく使い分けている。先発組のみならず、途中出場の選手もしっかりと結果を残しており、チームはうまく回っている。
J1には、C大阪のクルピ監督、鹿島のオリベイラ監督、柏のネルシーニョ監督と3人のブラジル人監督がいるが、クルピ監督とオリベイラ監督はメンバーを完全に固定してしまうタイプであり、決まったグループを使い続けて成熟させていく監督であるが、ネルシーニョ監督はかなり柔軟で、二人とは異なる。
それゆえに、なかなかレギュラーで起用されなくなってチームを去っていった有力選手もいるが、うまい具合に競争意識を植え付けている。途中出場のDF橋本、FW澤も好プレーを見せたが、サブ組もモチベーションが高く、バリエーションは豊富である。
■ レッズは1勝4敗
一方の浦和は終了間際にMF原口のゴールで1点を返すのみで3連敗となった。再開初戦の第7節で王者の名古屋グランパスに3対0で勝利したときは、「今年は違う。」と思わせたが、ここまでの結果を見ると、近年でもワーストのスタートになっている。
「先制点を取られると厳しい。」というのは、ここまでではっきりしていたことであるが、この試合は開始1分で先制ゴールを許してしまった。2点目はミドルシュート、3点目はセットプレーということで、守備陣は崩されて失点したわけではなかったが、大事なところでのマークが甘かった。
今シーズンはMFマルシオ・リシャルデス、DF永田という新潟の攻守の軸の選手を獲得し、FWマゾーラという強力なアタッカーも獲得した。ロンドン五輪代表候補の選手も多く、戦力的だけをみると、J1では屈指のものであり、上位争いに加わってこなければおかしいほどであるが、17位に転落してしまった。
■ ペトロヴィッチ監督に対する疑問
こうなると、ペトロヴィッチ新監督の能力に疑問符が付くのも仕方がないところである。もともと、指導者としての実績に乏しく、「なぜ、新監督がペトロヴィッチ氏だったのか?」という問いに答えられる人は少ないと思うが、ここまでは、引き出しの少なさを感じさせてしまう。
アタッカー陣の能力は高いので、ハマったときは名古屋戦のように相手を圧倒することもできるが、ハマらないとあっさりとした内容で敗れてしまう。「MFマルシオ・リシャルデスをどのポジションで効果的なのか?」という問題を解決するために、この日は、右のウイングで起用したが、持ち味は出せなかった。
「今の浦和がちょっと危ない。」と感じてしまうのは、現時点でも、ペトロヴィッチ監督が思い描いているサッカーが、それなりの形で、出来ているという点にある。明らかに悪い状態であれば、今後、悪い部分を改善していけば、浮上の道も開けてくるが、実際には、ペトロヴィッチ監督が考えているサッカーは出来ており、主力選手が怪我等で欠けているわけでもない。しかしながら、それでも結果がついてきていないというところに深刻さを感じてしまう。
試合を観ると、MF原口やDF高橋峻といった選手は奮闘しているし、MF柏木もボランチとしては悪くない。また、DF永田とDFスピラノビッチのセンターバックコンビもまずまずで、(消去法ではあるが、)MF山田暢のボランチ起用も、持ちうる選択肢の中では最適なものである。
同じようなサッカーを続けるのであれば、今後、改善できそうなのは、「MFマルシオ・リシャルデスをうまくフィットさせること。」と、「FWエジミウソンのコンディションを上げていくこと」くらいで、あまり、策は見当たらない。となると、「いいときはいいが、悪いときは悪い。」という不安定な試合が続いていくのは確実である。
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ホームゲームとなる柏は<4-2-2-2>。GK菅野。DF酒井、増嶋、近藤、ジョルジ・ワグネル。MF栗澤、大谷、レアンドロ・ドミンゲス、大津。FW田中順、北嶋。32歳のFW北嶋は今シーズン初スタメン。第8節の甲府戦、第9節の山形戦はともに途中出場でゴールを決めている。DFパク・ドンヒョクは欠場で、DF増嶋がセンターバックに入る。
■ レイソルが圧勝
試合は開始早々に柏が先制する。MFレアンドロ・ドミンゲスのパスからDF酒井が右サイドの裏に飛び出すと中央に鋭いクロスを供給。これをニアサイドに走り込んできたFW北嶋がうまく合わせてあっさりと先制する。FW北嶋は3試合連続ゴール。さらに柏は前半21分にもカウンターで追加点を挙げる。奪ったボールを素早くつないでDFジョルジ・ワグネルがボールを持つと、得意の左足でミドルシュート。これが豪快に決まって2対0とリードを広げる。
浦和は後半開始からMFマルシオ・リシャルデスをトップ下に戻し、いつもの布陣に変更。後半はボールを持って攻め込んでいくが、後半38分に柏がセットプレーを獲得し、こぼれ球をまたしてもFW北嶋が決めて3点目。3対0とリードをセーフティーリードとする。FW北嶋は今シーズン4ゴール目。終了間際に浦和はFWマゾーラのドリブルからMF原口が決めて1点を返すが、反撃は1点のみ。3対1で柏が快勝し、仙台が引き分けに終わったため首位に浮上した。
■ 首位に浮上
第9節にモンテディオ山形に敗れて初黒星を喫した柏だったが、国立で浦和を圧倒して4勝目。首位に浮上した。J2からの昇格組ではあるが、開幕前から評価は高く、「上位に加わっていくのでは?」と思われていたが、期待以上の成績を残しており、J1でもトップに立った。
この試合は開始わずか1分でFW北嶋のゴールで先制すると、前半21分に中押し、後半38分にダメ押しと、理想的な試合運びを見せた。初先発のFW北嶋が2ゴールを決めるところもチームが乗っている証拠であり、浦和にほとんど隙を与えない完勝だった。終了間際に1点を返されたが、DF近藤とDF増嶋のセンターバックコンビも好プレーを続けた。急造のコンビであり、コンビネーションは心配されたが、全く問題はなかった。
■ 昇格組の躍進
近年はJ2からの昇格組の躍進が目についており、2009年の広島が4位、2010年のC大阪が3位に入っているが、柏が同じくらいの成績を残してACLの出場権を獲得したとしても全く不思議ではない。もちろん、2008年の札幌、2010年の湘南のように、記録的な大差でJ2に降格してしまうチームもあるが、侮りがたいチームが多く、J1で存在感を示す昇格組は多い。
広島、C大阪、柏といったチームは、もともとJ1で長い間、プレーしていたチームであり、クラブの規模もJ1レベルなので、おかしなことではないが、J2でシーズンを過ごすことで、若手が出場機会を得て、層が厚くなってJ1に戻ってきている。
広島では、DF槙野、MF高萩、DF森脇、C大阪ではMF香川、MF黒木、柏ではMF茨田、FW工藤、DF酒井といった選手がJ2で出場機会を得て活躍し、チームの戦力となったが、J1にいると、10代後半や20代前半の若手を継続して使うのは難しく、出番に恵まれずに伸び悩んでしまうが、その点、広島、C大阪、柏あたりは、J2の中では最上位にランクされるので、若手も抜擢しやすく、彼らも試合に出て、勝ち続けることで力をつけていくという好循環が生まれている。
■ ベテランFW北嶋が2ゴール
首位浮上の立役者の一人になっているのが、32歳のベテランのFW北嶋。この日も2ゴールで、これで3試合連続ゴール。J1の得点ランキングでも単独トップに立った。2000年のアジアカップの優勝メンバーでもあるFW北嶋がJ1でこれだけの活躍を見せるというのは驚きで、シーズン序盤のサプライズといえる。
1点目はクロスにピンポイントで合わせたゴールで、2点目はポジショニングの良さで奪ったゴールだったが、ともにストライカーのFW北嶋らしいゴールで、抜群の嗅覚は衰えてはいなかった。ネルシーニョ監督がフォワードに求めていることは多いので、若い選手と同じような働きをするのは体力的にも厳しいと思われるが、守備でも良く頑張っており、ここまでは見事な活躍を見せている。
■ 光るネルシーニョ采配
ネルシーニョ監督の選手起用も巧みで、ここまでのところ、豊富な前線と2列目の選手をうまく使い分けている。先発組のみならず、途中出場の選手もしっかりと結果を残しており、チームはうまく回っている。
J1には、C大阪のクルピ監督、鹿島のオリベイラ監督、柏のネルシーニョ監督と3人のブラジル人監督がいるが、クルピ監督とオリベイラ監督はメンバーを完全に固定してしまうタイプであり、決まったグループを使い続けて成熟させていく監督であるが、ネルシーニョ監督はかなり柔軟で、二人とは異なる。
それゆえに、なかなかレギュラーで起用されなくなってチームを去っていった有力選手もいるが、うまい具合に競争意識を植え付けている。途中出場のDF橋本、FW澤も好プレーを見せたが、サブ組もモチベーションが高く、バリエーションは豊富である。
■ レッズは1勝4敗
一方の浦和は終了間際にMF原口のゴールで1点を返すのみで3連敗となった。再開初戦の第7節で王者の名古屋グランパスに3対0で勝利したときは、「今年は違う。」と思わせたが、ここまでの結果を見ると、近年でもワーストのスタートになっている。
「先制点を取られると厳しい。」というのは、ここまでではっきりしていたことであるが、この試合は開始1分で先制ゴールを許してしまった。2点目はミドルシュート、3点目はセットプレーということで、守備陣は崩されて失点したわけではなかったが、大事なところでのマークが甘かった。
今シーズンはMFマルシオ・リシャルデス、DF永田という新潟の攻守の軸の選手を獲得し、FWマゾーラという強力なアタッカーも獲得した。ロンドン五輪代表候補の選手も多く、戦力的だけをみると、J1では屈指のものであり、上位争いに加わってこなければおかしいほどであるが、17位に転落してしまった。
■ ペトロヴィッチ監督に対する疑問
こうなると、ペトロヴィッチ新監督の能力に疑問符が付くのも仕方がないところである。もともと、指導者としての実績に乏しく、「なぜ、新監督がペトロヴィッチ氏だったのか?」という問いに答えられる人は少ないと思うが、ここまでは、引き出しの少なさを感じさせてしまう。
アタッカー陣の能力は高いので、ハマったときは名古屋戦のように相手を圧倒することもできるが、ハマらないとあっさりとした内容で敗れてしまう。「MFマルシオ・リシャルデスをどのポジションで効果的なのか?」という問題を解決するために、この日は、右のウイングで起用したが、持ち味は出せなかった。
「今の浦和がちょっと危ない。」と感じてしまうのは、現時点でも、ペトロヴィッチ監督が思い描いているサッカーが、それなりの形で、出来ているという点にある。明らかに悪い状態であれば、今後、悪い部分を改善していけば、浮上の道も開けてくるが、実際には、ペトロヴィッチ監督が考えているサッカーは出来ており、主力選手が怪我等で欠けているわけでもない。しかしながら、それでも結果がついてきていないというところに深刻さを感じてしまう。
試合を観ると、MF原口やDF高橋峻といった選手は奮闘しているし、MF柏木もボランチとしては悪くない。また、DF永田とDFスピラノビッチのセンターバックコンビもまずまずで、(消去法ではあるが、)MF山田暢のボランチ起用も、持ちうる選択肢の中では最適なものである。
同じようなサッカーを続けるのであれば、今後、改善できそうなのは、「MFマルシオ・リシャルデスをうまくフィットさせること。」と、「FWエジミウソンのコンディションを上げていくこと」くらいで、あまり、策は見当たらない。となると、「いいときはいいが、悪いときは悪い。」という不安定な試合が続いていくのは確実である。
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