大阪で行なわれている代表合宿で、ザックことアルベルト・ザッケローニ監督が3バックのトレーニングをしたという。3−4−3、ウディネーゼ、ミラン、ザックの代名詞、といったキーワードがスポーツ紙に躍る。

いまさらいうまでもなく、システムは相手があって成り立つ。こちらが3バックで戦いたくても、相手が3トップなら守備の組織を修正しなければならない。1トップの相手に対して、ストッパータイプを2枚置くのはもったいない。

アジアカップのグループリーグで対戦するヨルダン、シリア、サウジアラビアは、4バックを基本としている。4バックが主流となっている現代サッカーにおいて、3バックは少しばかり使いにくいシステムになっているのだ。相手チームとの〈噛み合わせ〉が良くないのである。ザック本人が語っていたように、あくまでもオプションと考えるべきだろう。

南アフリカW杯や10月のアルゼンチン戦のように、このところの日本は主導権を握られたゲームで結果を残してきた。9月のパラグアイ戦もボール支配率とプレー時間で先行されながら、香川真司の一発で勝利をつかんだ。

パラグアイ戦の3日後に行なわれたグアテマラ戦は、日本がイニシアチブを掌握していたゲームである。ボール支配率は63・8パーセントに達し、シュート数でも23対11と圧倒している。

しかし結果は2−1なのだ。3点目を奪う好機を逃したのが接戦の原因だったが、ポゼッションほどには崩しきれなかったとの印象が残る。格下に手を焼いてしまう典型的なゲームでもあった。

アジアカップのグループリーグでも、日本はゲームの主導権を握るはずだ。ホールポゼッションでは圧倒するだろう。初戦で相対するヨルダンはポゼッションスタイルを志向しているが、日本戦ではカウンターアタックに勝機を見出してくるに違いない。

第2戦で対戦するシリアは、12月21日に監督が交代した。06年のドイツW杯でガーナを16強へ導いたラトミール・ドゥイコビッチが、休暇後も帰国しないという理由で解任されたのである。後任には国内クラブのアル・イティハドを率いていた、ルーマニア人のティタ・ヴァレリュが就任した。

シリアは年末から年始にかけて韓国、UAEとテストマッチを行なうが、新監督がどこまでチームを作り上げられるのかには疑問符がつく。準備期間の短さを補うために、守備ベースの戦術を採用してくると考えるのが妥当だ。

グアテマラ戦に似た試合展開が予想されるシリアとヨルダンとのゲームで、確実に勝利をつかめるか。アジアカップの最初のポイントである。

サウジとの第3戦は、前2試合の結果次第で試合の位置付けが変わってくる。準々決勝で対戦するグループAは、日本より一日早くグループリーグを終える。すでにベスト8入りが決まっているのであれば、主力を休ませてもいいだろう。

いずれにしても、対戦相手との力関係や相手の心理状態を推測すると、日本のチーム戦術は過去のアジアカップやW杯予選と同じだ。守備的な相手をいかに崩すのか、である。少なくとも準々決勝までは、ポゼッションで圧倒されるゲームはないと予想する。

そのうえで、試合の位置付けを踏まえつつ、相手のウィークポイントをどうやって突くのかといったゲーム戦術が重要になる。さらには、時間帯やスコアといった試合中の状況にも反射神経を鋭くしたい。チーム戦術とゲーム戦術に折り合いをつけるための手段であれば、3バックも有効な武器になるかもしれない。

【関連記事】
ノルマは3位以内
スキを見せなかったインテル
非ポゼッションの方法論
バルセロナ、その強さの裏にあるもの
2強撃破の原動力となった永井謙佑