世界の経済連携が活発だ。今年は新たにASEANとインド、ASEANとオーストラリア・ニュージーランド、韓国とインドの連携協定が発効。韓国はEUとの協定も年内発効の見通し。日本はこの流れに乗れずこのままでは競争ハンディを負ってしまう。状況を打破するには何が必要か。政財官各界の取材で探った。(「週刊ダイヤモンド」副編集長・大坪亮 本誌委嘱記者・田原寛)

「韓国とEUのFTA(自由貿易協定)に最も脅威を感じているのが電機メーカー。自動車メーカーもここにきて危機感を募らせている」。日本経済団体連合会のある幹部はこう語る。

 2009年10月に仮署名を果たした韓国・EUのFTAは、現在、分厚い協定書をEU加盟各国の言語に翻訳、今後、欧州議会と韓国議会の承認を経て、年内にも発効する見込みだ。

 EUは現在、電気・電子製品に最高で14%という先進国では異例の高い関税をかけている。日本メーカーが得意とするテレビやDVDレコーダーなども関税は14%。FTAが発効するとこの関税が5年以内に撤廃される。韓国メーカーは関税ゼロでEUに輸出できるようになるのである。

 EUとFTAを結んでいない日本を含む他国は、この恩恵を受けられない。日本製品は韓国製品に対して14%分の価格競争力を失うことになる。

 ユーロに対する韓国ウォンと日本円の為替レートの差で、ただでさえ日本製品は現地で割高になっているのにである。

 調査会社の米ディスプレイサーチが発表した世界テレビ市場の最新のメーカー別シェアは、サムスン電子、LG電子の韓国勢が1位、2位を占め、ソニー、パナソニック、シャープの日本勢は後塵を拝している。2位LGと3位ソニーの差はこのところ広がるばかりだ。

 その状況で韓国勢はEU5億人市場へのフリーアクセス権を手に入れ、日本勢は取り残されるのである。危機感を募らせるのも無理はない。

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