朝青龍が引退を表明――。国技館で行われた引退会見で朝青龍は時折目に涙を浮かべ、横綱としての責任を取るために引退することを繰り返し話した。民放は夕方の情報番組でこぞってこれを取り上げる中で、相撲ジャーナリストらは引退という結果には協会の温情があった、と見ている。

「本日をもって、みなさまに大変ご迷惑をかけ、また日本相撲協会にも大変ご迷惑をかけ、報道をも大変騒がし、私は責任を取って引退をいたしました」

朝青龍と高砂親方が理事会に緊急招集

   記者会見の冒頭で朝青龍はこう話し、頭を下げた。

   朝青龍は2010年1月4日、日本相撲協会の理事会に緊急招集されていた。週刊誌報道が発端で、朝青龍が初場所6日目の16日、路上で人を殴ったことがわかったからだ。問題はその後大きくなり、相手が「一般人」だったことや、示談があったことなども明るみになった。理事会ではこの日、調査の中間報告だけだったのが一転。朝青龍本人に直接事情を聞くため、師匠の高砂親方とともに呼びだした。

   二人は午後1時から30分ほど事情を聞かれ、午後2時半には朝青龍が引退の意向を伝えたという。そして午後4時頃には急きょ、引退会見になった。会見で高砂親方は、「この事件が起きて、どう推移していくのかを見ながら、今日に至った。本人とも話し、引退の気持ちがあることを理事会に報告し、理事会の方でも引退(を認める)流れになった」と今日の経緯を説明した。

   一方、暴行問題に関しては、「(理事会では)事実関係を一生懸命聞こうとしているが、本人がすべておぼえているわけではないので難しかった。また、すべてのことにおいて、メディアの方で話が先行していて、その後をこちら側が追いかけ、調査委員会にも資料を提出していく、ということしか出来ない状況だった」と話した。朝青龍本人は「実はメディアに流れたことと、実際に起きたことはかなり大きな差がありました」と言うが、しかし、取材陣が「違うことを説明できるか」と水をむけると、「この話は控えておきます」と明言を避けた。

「事実上、解雇の内容に近いものではなかったか」

   朝青龍には引退する今の心境について質問が集まった。その際、本人が繰り返し話したのは、世間を騒がしたことには責任を感じていること、引退することでけじめをつけたい、ということだった。会見では終始、淡々とした口ぶりで、さばさばとした表情だった。だが、これまで相撲の取り組みについて「やるだけやったのか」と問われると、朝青龍は一転、「ふふふ」と少し笑って、目に涙を見せた。黄色いハンカチで目をぬぐいながら、横綱に上り詰め、25回優勝を達成したことは「誇りに思います」と語った。今後はちょっと休みたい、という。

   朝青龍の引退をめぐって、民放は夕方の情報番組ですぐさま取り上げた。とりわけ注目が集まったのは、朝青龍の引退が不本意なものだったかどうか、だ。

   日本テレビ「NEWS リアルタイム」に出演した、東京相撲記者クラブ会友・中澤潔さんは、理事会での議論が4時間にも及んだことを踏まえ、「会議の内容は事実上、解雇の内容に近いものではなかったかと思う」と推測する。ただし、朝青龍が相撲人気に貢献してきたことは事実だとした上で、「解雇で相撲界を終わるよりは自分から引退を申し出ることで、いわば温情の処置をとったのだろう」と述べた。

「解雇になると相撲の世界からの追放です。したがって、引退相撲を開くことも出来ません。おそらく秋に、10月頃に引退相撲の日程が決まっていると思います。最後の花道を飾ることができるのは同じ辞めるにしても、大きな違いがあります」

   一方、TBS「イブニングワイド」に出演した、東京相撲記者クラブ会友・山崎正さんも「なんらかの形で今日、理事長からの処分の決定があるのではないかと思っていました」と言う。引退に至ったのも中澤さんとおなじく、協会が温情をかけたのではないかとコメントした。ちなみに、引退には退職金があるが解雇には出ない。朝青龍の場合はその額、特別功労金などとあわせて1億4000万円とも推定されるという。

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