シンプルながら“ちゃんと伝える”大切さが心に響く映画―No.26 大人の上質シネマ

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「親より先に死ぬのは親不孝」と言うが、もし自分が末期がんで入院中の親よりも短い余命宣告を受けたとしたら? 『ちゃんと伝える』というストレートなタイトルがつけられた本作は、これまで背を向けて生きてきた厳格な父親がガンに倒れ、初めて向き合おうと決めた矢先に、自らもガンに侵されていることが発覚し、父よりも短い命と宣告される青年の物語だ。

他の写真も見る: 病を通して、息子との絆を深めていく厳格な父親に扮するのは奥田瑛二

いわゆる“難病もの”ではあるが、よくあるセンシティブで感傷的な“難病もの”と違うのは、父親がガンに倒れ、その息子もガンに侵されるという理不尽な現実に目を向けつつも、お決まりの“泣かせ”シーンがないところ。もちろん、父親を気遣い、家族はおろか、結婚を約束した恋人に対しても真実を告げることができない主人公の葛藤には胸が痛むが、それ以上に、日々繰り返される何気ない日常から見えてくる人の思いや優しさがじっくりと心に染み入り、本来なら悲劇であるはずのガンという病が、父と息子をつなぐある種の絆のように見えてくるのだ。

特に印象的なのが、長らく会話のなかった父子が、父親が倒れたことをきっかけに親子の対話を取り戻し、母親には内緒で「退院したら、一緒に釣りに行こう」と約束するシーン。ようやく理解し合ったときには残された時間はあとわずか、というのは皮肉なものだが、互いの気持ちを共有し合った二人の姿からは「ちゃんと伝える」ことの大切さを教えられる。

人は限られた人生のなかで何を思い、それをどうやって相手に伝えるのか。たとえ血が繋がった親子だとしても、言葉に出さずして気持ちを伝えることは難しい。だからこそ「ちゃんと伝える」というシンプルながらも奥深いメッセージが込められた本作を観た後は、きっと身近な誰かに語りかけたくなるだろう。【トライワークス】

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