09年に正念場を迎えるアジア最終予選。中村は、アウェーよりもホームの戦い方に課題を感じている

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  サッカー日本代表は現地時間の19日、アウェーのカタール戦で快勝。これでアジア最終予選の成績を2勝1分けとし、勝ち点で単独2位に浮上した。来年2月に予定されている次戦、オーストラリアとのホームゲームで勝利すれば、単独首位の可能性も出てきた。

 とはいえ、予選はまだ序盤を終えたばかりだ。チームが内包する問題点も少なくはない。果たして、日本はアジア予選をキッチリと突破できるのか。代表チームの“現在地“を、大黒柱であるMF中村俊輔に聞いた。

――10月のウズベキスタン戦は、ホームでしたし、引き分けという結果は残念でした。

中村俊輔(以下、中村):9月のバーレーン戦は、初戦だったし、アウェーでもあったから、自然と選手にもプレッシャーがあって、良い意味での緊張感につながっていた。けど、ウズベキスタン戦は、ホームゲームのメリットを生かせてないというか、相手より精神的に優位に立って、良い意味での緊張感を持って、戦えたかというと、ちょっと疑問が残る試合になってしまった。

――ウズベキスタン代表は、予想よりも手ごわかったのでは?

中村:たしかに、守備的にやりつつも組織的で、アプローチしてくる位置も高くて、早かった。最初は面食らったかなと思う。ボンバー(中澤佑二)からヤット(遠藤保仁)のつなぎのところでミスが出てたり。本当は、相手に“オッ”と驚かせなきゃいけないのに、日本が驚いてしまったというか。精神的に先手を取られてしまった。攻めでも、守りでも、日本がイニシアチブを握ってなきゃいけないのに、逆に握られてしまった感じ。

 時間の経過とともに少しずつ回せるようにはなったけど、ようやく落ち着きはじめたところで先制(27分)された。で、“行かなきゃいけない”って状況になったから、やっと吹っ切れてチャンスが生まれるようになった。ホームなら、キックオフからそういうことがしたかったし、そのロスが結果的にも痛かった。

――技術、戦術的に問題はなかった?

中村:相手のプレッシャーがきつかったことで、みんな顔を上げたら、空いてる人の足元にあずけるってパターンの連続になってしまった。で、結局、要所では個人のキープ力とかでなんとか持ちこたえるような格好が多くなった。前からプレッシャーかけてくるなら、ひきつけてパス、ひきつけてパスといった形で、落ち着いてボールを回さなきゃいけなかったと思う。集団で時間的な余裕を作り出せなかったのは反省点。細かくつなぐのが難しければ、ときには相手DFの裏を狙うようなパスを繰り出していっても良かったかもしれない。ボールを失わないことも重要だけど、そのなかでトライのパスを交えていけば、相手DFは怖がるだろうし、そうすると最終ラインが下がるから、中盤にパスコースが生まれて、より崩しやすくなったかもしれない。

――チームとしての“引き出し”がまだ足りない?

中村:2人くらいの連携はできてるけど、3人目の動きが加わるような動きはまだ足りないと思う。相手のマークが捕まえきれないような、グループでのパス回しはこれからもっと増やしていくべき要素だと思う。

――単純な比較は難しいと思いますが、4年前に経験した前回の最終予選と、今回の予選で大きな違いはある?

中村:前回予選のほうが、対戦相手を強く感じた。それは、たぶん、自分が慣れたんだと思う。イタリア時代に残留争いを経験したり、セルティックでチャンピオンズリーグを戦ってきたなかで、自分の(所属)チームより、対戦相手のほうがずっと強いってことはたくさんあった。そうした試合を経験しているぶん、前よりは負荷を感じなくなったというか。

――たしかに、セルティックでミランやマンU(マンチェスター・ユナイテッド)とやるよりは、力の差は小さいですよね。

中村:とくにセルティックは、戦い方として、ハードワークを求められる。仕事量が多い。右サイドで前の選手を追い越したり、中央へ絞ったり。たとえば、相手が4−3−3みたいなシステムだったりすると、左サイドのエイデン(エイデン・マクギーディ/セルティックMF)は、タテに、前に、勝負していくタイプだから、そこでボールを取られて逆襲を食らったりすると、逆サイドのオレのポジションのところに、数的不利な状況が生まれたりして、そのケアや対応はやっていかなきゃいけない。そうした求められる役割をきっちりこなしたうえで、自分の持ち味というか、攻撃で自分らしさを発揮していこうとすると、かなりの仕事量になってくる。

――では、オシム監督時代や、現在の岡田ジャパンでのプレーというのは、セルティックに比べると、ずっと負担は少ない?

中村:やりにくくはないね。いまの代表チームはとくに、ある程度形ができているから、予測ができる。このシチュエーションでは、ヤットからボールが来るとか、事前に予想できる。そのぶん、対応は早くなるし、ミスも減るし。

――ジーコ監督の時代よりも、組み立ては統一された意識のもとでできてますね。

中村:ジーコ監督のころは、個人の瞬時の発想とかを重視していたからね。それはそれで、大きなメリットもあったから一概にどちらが良い悪いとはいえないし、どっちを取るかっていう選択の話だろうけど。

――メンバーそのものも、ジーコ監督の時代とはずいぶん変わりましたが、その変化はどう感じてる?

中村:どうすればチームに貢献できるかって目線が、とても強い。そういう選手が多い気がする。チームとしても、監督からそういう貢献は求められているし。逆に、チーム目線でプレーしつつ、いかに選手の個性を出していくのかって難題はあるけど、そこはクレバーさを磨いてカバーしていけると思う。

――現段階で、チームの最大のミッションは、もちろんアジア予選突破になると思います。ただ、ワールドカップに連続している日本にとって、“世界で戦う”という視点も大切だと思います。そんな視点でみたとき、いまのチーム力というか、現在位置はどのあたりにあると思いますか?

中村:んー、難しい。正直いって、分からないといったほうがいいかもしれない。そもそも、ここ最近は、いわゆる強豪国と試合をしていないから。去年、ヨーロッパで戦ったスイス戦が、けっこう本気だったけど、それくらい。前回予選の前は、アルゼンチンやドイツとか、ワールドカップで上位に入る国と何度か戦っていたけど、それがないので、差が縮まっているのかどうか、分からない。

 ただ、かりに強豪と戦ったとして、やっぱり“個”の力の差で、一発でやられてしまう可能性は高いと思う。クリスティアーノ・ロナウドとか、1対1で普通に勝負してしまったら、やられるでしょう。だから、日本がアプローチしていかなきゃいけないのは、集団でボールを奪う、集団でパスを回していくって形だと思う。

――チャンピオンズリーグで強豪クラブと対戦した経験は、日本代表での強豪国との対戦で生きる?

中村:んー、難しいと思うのは、たとえばスコットランドだと、攻めは1、2人しか人数を割かずに、10人ぐらいで守るようなサッカーをしても、それで格上の相手に1−0で勝ってしまえば、大喜びになる。ただ、日本だと、なかなかそうは評価されないと思う。場合によっては“内容が悪い”と言われるかもしれない。そこは難しいところだと思う。

 自分たちの普段どおりのサッカーをして、0−3で負けたとする。それは選手個々にとっては財産になるケースも多々あるかもしれない。でも、守り倒して1−0で勝ったら、さらに上の強豪と戦うチャンスが生まれる。それも悪いことではないと思う。内容はともかく、“守ることができた”という実績は、また強豪と対戦して、苦しい時間帯が出てきたときに、自信やノウハウとなって生きるだろうし、そうした積み重ねのなかで、いままで10分しか攻めることができなかった相手に、20分は攻めの時間を作れるかもしれない。そういうアプローチも大切かなとオレは思う。トルシエ監督の時代に、フランスに大敗したあとのスペイン戦で5バックのような守備重視の戦い方をしたことがあったでしょ。それで、ある程度、強豪でも守れるって自信になることはある。

――予選は来年が正念場になります。中村選手の直感では、どの国との対戦が大きなウェイトを占めてくると考えていますか?

中村:やっぱり、ホームが大事だと思う。“勝たなきゃいけない”ってプレッシャーを自分たちにどれだけかけていけるかも含めてね。国でいうと、09年の最初に予定しているホームでのオーストラリア戦がポイントかもしれない。オーストラリアとはまだ2試合残っていて、この国に引き離されるのは予選を突破するうえでも避けたい。なぜかといえば、オーストラリアはゼロで抑えるだけのディフェンス力があるから。もし、予選終盤のアウェーでのオーストラリア戦を迎えたとき、日本は“勝たなきゃいけない”、オースラリアは“負けなければいい”という条件だったりすると、日本は苦しくなってしまう。その意味でも、来年2月のオーストラリア戦は、ホームできっちり勝ち点3が欲しい。というか、獲らなきゃいけないと思ってる。

(取材/livedoor スポーツ)
※インタビューはカタール戦前の11月上旬に行われた

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