カンファレンスデーでのワンシーン。気持ちで圧されない不屈の精神が挑戦者パトリック・コーテには必要だ

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いよいよ大会開催を明日25日(土・現地時間)に控えた『UFC90 SILVA vs COTE』。カウントダウン最終回は、メインの世界ミドル級選手権試合に焦点を当てたい。

「UFCのタイトルに挑戦できる、夢が実現した想いだ。アンデウソン・シウバは世界最強の男、心から尊敬している。ただ向かい合って、殴り合うだけじゃ勝てない。しっかりと戦略を立てて、自分のすべきことを全うする」

22日のカンファレンスデー、挑戦者のコーテはこのように語っている。1980年2月生まれ、28歳のカナディアン。アマチュアボクシングからキックボクシングに転向を果たした頃にTVでUFCを見て、MMAファイターを志す。

柔術(現在は紫帯)とレスリングのトレーニングを始め、02年にカナダのメジャーMMAプロモーション=UCC(現TKO)でプロデビューを果たした。キャリア4、5戦目にスティーブ・ビグノー、ビル・マフードを下し、カナダのナンバーワン・ミドル級コンテンダーに。

GSP、デイヴィッド・ロワゾー、サム・スタウトらTKOで活躍したファイターのUFC進出が目立っていた当時、5戦5勝の勢いをかって、UFCデビューを果たす。

本来はミドル級マッチでの出場だったが、ティト・オーティズと対戦予定だったガイ・メッツァーが急遽欠場となり、ライトヘビー級契約でバッドボーイと対戦。テイクダウン+トップキープに判定負けするも、1Rに右フックでティトが両ヒザをマットにつけたこともあり、コーテは高い評価を与えられた。

しかし、この高評価が仇となり、ジョー・ダークセン&クリス・レーベンという実力者とのマッチアップに連敗。契約解除の憂き目にあってしまう。UFCを離れた期間中にKOTCカナディアン・ミドル級、MFCミドル級を獲得、TKOミドル級のベルトも巻いていた彼は、敗者復活戦ともいえるTUFシーズン4に参加することとなった。

UFCベテランばかりが集まったシーズン4、コーテはホルヘ・リベラ&エドウィン・ディウィーズを下し決勝戦進出を果たしたが、公式戦と認められる決勝戦ではトラビス・ルターの腕十字に一本負け。公式戦となんら変わりないタフなTUFマッチの2勝はレコードされないため、UFC4連敗という結果だけが残ってしまった。

ただし、この間、テイクダウンディフェンスを磨きあげたコーテは、TUFフィナーレ以降、TKOの1試合を含み5連勝を達成。EXCでタイトルコンテンダーとなったスコット・スミス、TUF3王者ケンドール・グローブを下し、今年の7月にはヒカルド・アルメイダをスプリットで破り、ついにタイトル挑戦権を手にした。

本来は日本の岡見勇信が9月に王座挑戦が決まっていたが、拳の負傷で実現に至らず、お鉢が回ってきたタイトルショット、誰もが王者有利を口にし、賭け率でも大きく引き離されているのが現状だ。

ただし、格闘技は何が起こるか分からない。実際、アンデウソン・シウバはUFCで7戦7勝という鉄壁の強さを誇っているが、キックを操るストライカーとの対戦経験はない。

ばかりかトータル・ファイター系、もしくはグラップラー、レスリング+パンチという対戦相手ばかりで、ストライカーはダーディ・ボクシングのクリス・レーベンのみ。

ライトヘビー級を一発で沈めることができるコーテ。石の拳を持つ彼に、勝機がないわけではない。

長いリーチとコンパスを生かしたアンデウソンは、左ストレートがテレフォン・パンチになる(もちろん、テイクダウンを警戒してのパンチ)傾向にある。ここでコーテが石の拳をヒットさせることができれば――。

石の拳で王者を打ち抜くには、鉄の心が必要になる。アンデウソン・シウバの尋常ならざるプレッシャーを前にして、多くの辛酸をなめてきたコーテが心の開き直りと、正しい戦略を実践し、一歩でも深く踏み込めることができれば――。新世界王者誕生も決して夢ではない。

対戦カードは次ページに。