今年の4月にオープンした「まんだらけコンプレックス(新秋葉原店)」。外国人観光客に会う確率の高い場所でもあります。私も5人のガイジンさんにエレベーター内で囲まれた経験あり(同類なので特に危険は感じませんでした)。

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国際観光振興機構(JNTO)の調査によると、日本に訪れる外国人旅行客は年々増加傾向にあるようです。データによれば、2007年の外国人旅行客数は834万人。1997年は421万人だったので、ここ10年でほぼ2倍になっていることがわかります。先日、そんな外国人旅行客向けのツアーに密着したテレビ番組が放送されていました。中でも特に目を引いたのが、日本の漫画・アニメ文化に触れるツアーの部分。今回はそのあたりを中心にご紹介してみたいと思います。

■『日経スペシャル ガイアの夜明け』(テレビ東京)
サブタイトル:外国人観光客を呼べ〜変わりゆくニッポンの名所〜
放送日時:2008年4月29日(火)・22時〜22時55分

番組の中で紹介された試みは大きく分けて4つありました。その内訳は、
(1)日本の旅行会社「H.I.S.」が企画した「"寿司職人"体験ツアー」
(2)外国人向けフリーマガジン「メトロポリス」
(3)日本の旅行会社「JTB」が企画した「オタク・アニメツアー」
(4)和歌山県・田辺市の温泉地におけるブラッドさん(カナダ出身)のアドバイス
となっており、それぞれに見所があったのですが、ここでは(3)の「オタク・アニメツアー」について書いていきたいと思います。

「ニッポンの“オタク文化”」を体験するというツアーを企画したJTBの坂野さんは、欧州・中南米チームマネージャーという肩書きの持ち主。

「新しい日本の魅力というものを発信していかないといけないかなと。そこに大きなビジネスチャンスがあるんじゃないかなと思ってます」
と語る坂野さんは、練りに練ったこのツアーを海外の旅行会社に売り込みます。

「オタク・アニメアドベンチャープログラム(OTAKU-ANIME Adventure Program)」と名付けられた同ツアーの日程は5泊6日。カメラは、このツアーに参加する女性看護師のアナさん(26歳)の自宅に移っていきます。スペイン・マドリードに住むアナさんは『NARUTO -ナルト-』や『フルーツバスケット』といった日本の漫画を100冊以上持っている漫画ファン。部屋には『クレヨンしんちゃん』の目覚まし時計なども確認できました。

このツアーの料金は、航空運賃を含めてひとりおよそ20万円。ちなみにJTBで、日本からスペイン・マドリードへの添乗員付きツアーの料金を調べてみると、18万9,900円〜30万9,900円というのが最安値になってました。若者向けということもあるのでしょうが、なかなか良心的な料金設定のようです。

スペインからホセさん(アナさんの彼氏)とアナさんら計6名のツアー客が合流して、いよいよツアー開始! 今回の「オタク・アニメアドベンチャープログラム」の参加者は、総勢およそ40人です(※番組内では特に語られてませんでしたが、どうも参加者は複数の国からあったようです)。

まずは宿泊先のホテルで、企画した坂野さんがツアー客をお出迎え。
「東京へようこそ。JTBの坂野です。ご参加ありがとうございます。より日本の文化を感じてください」
と英語でご挨拶する坂野さん。そのジェントルマンな物腰は、アキバ系サブカルツアーのイメージとはかけ離れていて、妙に印象的でした。見ようによっては“国宝巡りツアー”でも始まりそうな雰囲気すら感じます。なんとも不思議な感覚ですが、あれが“プロフェッショナル”のたたずまいというものなんでしょう。

翌朝、ツアー客ひとりひとりにSuicaを配って、いよいよ出発! このツアーは基本的にすべて電車(JR local train)移動となっており、バス等の手配も一切ありません。これは実際の日本を肌で感じてもらえるようにとの配慮みたいです。なかなかのアイディアだとは思いますが、担当ガイドの女性は、
「これだけ多くの場所を公共交通機関(電車)と徒歩だけでというのは、初めてのことでもありますので……」
と少々不安も垣間見せていました。

まず一行が向かったのは、中野ブロードウェイでした。初日にここに行くというのは、流石「オタク・アニメアドベンチャープログラム」を名乗るだけはあります。大量の漫画が陳列された「まんだらけ」店内を見たホセさんは、「信じられない。ここは“漫画の殿堂”みたいだ」とご満悦。

ツアー客のある人はナース姿のレイとアスカのフィギュア(※1)を購入し、ある人はナルトのコスプレ衣装はないかと問い合わせを求めます。殺到する数々のリクエストにガイドの人も大変そうです。
(※1)ナース姿のレイとアスカのフィギュア:UFOキャッチャー景品「新世紀エヴァンゲリオン エクストラナースフィギュア」のこと。こういう景品系のグッズもまんだらけでは扱っている。

数日後に訪れた秋葉原では自由行動が許され、ホセさん達はどうしても行きたかったという“メイドカフェ”「@ほぉ〜むカフェ」に向かいます。店内でメイドさんは、ホセさんが頼んだスパゲティを「混ぜ☆混ぜ、萌え☆萌え、きゅん☆きゅん」と言いながらかき混ぜます。ホセさんは、この“美味しくなるおまじない”に合わせて「moe☆moe」と手を叩きながら笑顔でリピート。その後、あの萌え萌えじゃんけん(※2)にもしっかり参加してました。
(※2)萌え萌えじゃんけん:秋葉原の超有名メイド喫茶「@ほぉ〜むカフェ」の名物行事。ねこさんやうさぴょんのポーズをしながらするじゃんけんのこと。免疫のない人間にとっては、ほぼ羞恥プレイに近いので来店時には注意が必要。基本的に全員参加で、最後まで勝ち抜くとオリジナルグッズが当たる「ガチャガチャ」を回せるコインが1枚もらえる。

ホセさんは「こんなに笑ったのは久しぶりです」と語り、隣に座っていたアナさんは「こんな店があるなんて、スペインでは考えられない」と驚いた様子でした。

さらにこの日の夕食は、お好み焼き屋をチョイス。彼らはお好み焼きを実際に食べるのは初めてでも、存在自体は知っていたようで、具体例として『らんま1/2』の名前が挙がってました。ホセさんが言うには、「ピザみたいな食べ物が度々出てきていたので、どんな味なのか食べてみたかった」とのこと。

お好み焼き屋で個室に案内された一行は、昼間体験した“萌え萌えじゃんけん”のポーズをしながら大盛り上がり。お好み焼きの具を混ぜる時も自然と「maze☆maze」の大合唱です。これはなかなか高レベルな光景でした。日本人としては、なんだか“ニッポン”が激しく誤解されているような気がして複雑な気分でしたが、本人達は楽しそうなのでスルーしておこうと思います。

お好み焼きを食べたホセさんは、「おいしい。こんな食べ物食べたことがない。新しい味ですよ」と絶賛。日本人には馴染みの味でも、スペイン人には未体験の味だった模様。

JTBの坂野さんは、「お客さんはとにかくハッピーです」という報告を受けて一安心。
「このパッケージを来年も再来年もシリーズ化していってですね、もっとたくさんのお客さんに来ていただきたいなと思ってます」
と、この「オタク・アニメアドベンチャープログラム」に対する思いを語っていました。

■今こそ日本政府は、サブカル分野の価値を再認識すべき
漫画やアニメがきっかけで、日本に興味を持った外国人観光客の姿は、我々に色々なことを気付かせてくれます。漫画・アニメといったサブカル分野は、日本が世界に対して存在感を示せる貴重な資源であることは、もはや言うまでもありません。この国際競争力のあるコンテンツをどのように保護して、育てていくべきかという問題は、真剣に国策として考えるべきでしょう。素晴らしい作品が世界に広がれば、その作品が巡り巡って日本に益をもたらしてくれるはずなのですから。

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レッド中尉(れっど・ちゅうい)
プロフィール:東京都在住。アニメ・漫画・アイドル等のアキバ系ネタが大好物な特殊ライター。企画編集の仕事もしている。秋葉原・神保町・新宿・池袋あたりに出没してグッズを買い漁るのが趣味。

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