アーセナルのアーセン・ベンゲル監督が、自らの補強戦略を改めて強調。「スーパースターは育てるものだ」と語り、アーセナルの補強に対する懐疑的な見方に真っ向から反論した。

 今夏の移籍マーケットで、長年エースを務めたFWティエリ・アンリをバルセロナに放出したベンゲル。しかし、戦力補強はクロアチア代表FWエドゥアルド・ダ・シルバなど、必要最小限に留めている。そんなフランス人指揮官の方針には批判的な声も多く聞かれるが、ベンゲル自身は補強の必要性を感じていないという。

「周りの人間が我々の補強についてとやかく言う理由がわからない。シーズンの滑り出しも順調だし、チャンピオンズ・リーグの本戦出場も決めた。試合内容にも満足しているよ。我々は今、セスク・ファブレガスやデニウソン、そしてアボウ・ディアビといった選手をワールドクラスに育てているところだ。そして、そのプロセスを私は楽しんでいる。このチームは、大きな成功を収めると心から信じている。彼らはとてもハングリーなんだ。中には、我々に十分な補強資金がないと揶揄する連中もいるが、それはデタラメだ。いずれにしても、これからの結果を見ていれば分かることだ」

 現在、ロシア人富豪のアリシェル・ウスマノフ氏によるクラブ買収の可能性が囁かれているアーセナル。もしも買収が成立した場合、同じくロシア人富豪のロマン・アブラモビッチ氏がオーナーを務めるチェルシーと同レベルの資金力を手にすることになる。しかしベンゲルは、潤沢な資金を手にしたとしても、補強の方針を変えるつもりはないと断言。アンリやパトリック・ヴィエラといった選手をワールドクラスに育て上げた智将は、金額に見合った能力を持った選手しか獲得する気はないと語っている。

「補強に大金を注ぎ込むことを恐れている訳では決してない。チームに是が非でも必要だと思うような選手がいれば、もちろん獲得に動く。ただし、『スーパースターは獲得するのではなく、育てるもの』というのが、アーセナルでの考え方だ。それに、獲得可能な選手の中に、ワールドクラスと呼ばれる選手がどれほどいるのかも疑問だ。値段だけがワールドクラスの選手も多い。もし我々が3000万ポンド(約70億円)の資金を用意したとしても、『その額では獲得出来ない』と言われるのがオチだ。チェルシーはロナウジーニョの獲得に乗り出しているようだし、彼らには十分な資金がある。だが、それでもロナウジーニョは移籍しなかっただろ? それに、私に言わせれば、6000万ポンド(約140億円)も払って獲得するなら、ボールを触るたびにゴールするような選手でないと金額に見合わないね。私は選手の能力に応じた金額しか支払うつもりはない。それに、ウチの選手を上回る選手がそれほど多くいるとも思わないしね」

 今後も若手育成に力を注ぐと宣言したベンゲル。マンチェスター・ユナイテッド、チェルシー、リバプールに続く4番手との評価を受ける今シーズンのアーセナルだが、若手中心のメンバーが持つポテンシャルは計り知れない。選手の評価に対して厳しい目を持つベンゲルは、今後もスター育成に情熱を傾け続けるようだ。