宮里藍=毎年順位を上げていることだけでも、成長している証明だろう。(写真/田辺安啓=JJ)

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「思えども 道のり遠き メジャーかな」――宮里藍の父・優氏がメジャー最終日に一句詠むことが恒例化している。父親としてコーチとしての愛情と厳しさが織り交ざる一句だ。今回の句から伝わってくる通り、宮里にも父・優氏にもメジャー優勝に対する「思い」はもちろんある。しかし、ただ勝ちたいと喘ぐだけでは優勝への道のりは遠のくばかり。だからこそ、宮里親子は惜しみない努力を重ねているのだが、それでもなおメジャー優勝への道のりは遠い……。そんな思いが伝わってくる。

だが、その道のりを大幅に縮めるヒントを宮里はつかんだ。それが、今大会における最大の収穫だったのだと思う。

トップ10を目標にしていながら結果は15位タイだった。3日目のようにアンダーパーを出したかったのは山々だろうが、最終日は1オーバーのラウンドだった。もしアンダーが出ていればトップ10に食い込めた。しかし、そうした数字より、宮里は最終日のラウンドの手ごたえと自らの成長に心から納得し、満足していたことのほうが大切だ。米ツアー2年目のシーズン初メジャーという段階で、そんな「納得」ができたのだから、ちょっと無責任な言い方をすれば、15位でも10位でもいい。順位より今後への活力。大切なのは今後だ。

最終日の宮里は前日同様、メンタル面を重視し、意識して自信を抱いた。そうやって心を鍛えることで「全然違う」と宮里。確かに、メンタル面の持ち方を変えたという2日目以降、ショットは目に見えて安定感を増した。一定以上の技術がある宮里レベルのプロであれば、そこから先はメンタル面が技術面を支え、引っ張っていく。そんな理想のメンタルゴルフをメジャーの最終日にやり遂げた宮里は「今まで以上の充実感。大きなステップになる試合だった」とキラキラ目を光らせながら喜んでいた。自分なりの手ごたえ、自分なりのキーポイントを見つけたとき、プロの目は輝く。宮里の目はうれしさに溢れ、早く次の試合でも試してみたいと言っているようだった。

もちろん反省点もしっかり見据えている。最終日はボギーを2つ叩いた。14番はカラーから寄せたものの1.5メートルのパーパットを外した。15番は第2打がガードバンカーにつかまり、2.5メートルのパーパットを外した。「アンラッキーだった。それでもパーセーブしなきゃ。今後の課題です」。パーオン率100%は現実的ではない。だとすれば、パーセーブ率を向上させることが必要。課題は小技。だが、これから「鍛えていく」と目を輝かせる宮里のメンタル面に引っ張られ、小技だって自然と磨かれる可能性は高い。

メンタル面を強くして「優勝する準備をしていく」。そう断言した宮里のメンタル面は、すでに強まりつつある。(舩越園子/在米ゴルフジャーナリスト)