若い女性にモテるおじさんは何が違うか。『「モテ」と「非モテ」の脳科学』(ワニブックス)の著者である脳神経外科医の菅原道仁氏は「そういう男性は、加齢とともに減退する『生殖能力』ではなく、『フェロモン』で女性の本能に訴えかけている。ポイントは『フェロモンを高める聞き方』にある」という――。

■生殖能力が衰えると男性の魅力は低下するのか

20代の若い男性と、50代のオジサン。さて、どちらがモテると思いますか?

「本当にモテるのは、酸いも甘いもかみ分けたシブいオジサンだ!」という強気な回答もあるでしょうが、まあ、たいていの人は「そりゃ若いほうがモテるだろう」と思われるのではないでしょうか。

また、パートナーがいる場合でも、結婚して年月が経ち、50代にもなれば「お互い男として、あるいは女として相手を見ることはできない」という人ばかりです。

仮に、20代と50代の男性が50人ずついたとしたら、パートナーの年齢を問わず、恋人ができる確率はやっぱり20代のほうが高いでしょう。人間も動物ですから、やはり第一の目的は「種族の保存」です。女性が「生殖能力の高そうな」すなわち、「若い」男性に引かれるのは、ある意味で当然です。

だとすれば、生殖能力が衰えると、異性にとってパートナーとしての価値はなくなってしまうのでしょうか。

私はそうは考えていません。むしろ、ここまで複雑に進化した人類の行動を、なんでもなんでも「種族保存本能」のひとことで片付けるのは、逆にズルいのではないかと思います。

■「言語」によって退化した人間の感覚

50代どころか60代、70代になっても輝いている男性はたくさんいますし、モテる男性はいくらでもいます。

たとえば、サッカーの三浦知良選手の年齢を考えてみてください。あのキングカズも、はや御年52歳。さらに、俳優の岩城滉一さんは68歳、ハリソン・フォードが76歳、クリント・イーストウッドにいたっては88歳(!)です。果たして、生殖能力の高さだけで、彼らの魅力に勝てる20代がいったいどれだけいるでしょう。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/ajr_images)

「人間の視覚と嗅覚が退化した理由は、言語を手にしたから」という説をご存じでしょうか。

人間は「しゃべる」ことで「社会性」を身に付けたゆえに、嗅覚や視覚が衰えても身の安全を保てるようになりました。視覚や嗅覚だけで敵の接近を察知したり、食べられるものと食べられないものを自ら判断しなくても、言語や会話によって他の人から教えてもらえるからです。

とはいえ、衰えたといってもそうした動物としてのセンサーがなくなったわけでありません。認識できない匂いやビジュアルは、今も脳に強く作用しています。

■フェロモンの正体

「20代の頃はモテたのに」「どうせオジサンはモテないよ」とぼやく中年男性の多くは、過去のデータ、つまり言語化された情報に頼りすぎ、女性の本能的な部分に訴えかける魅力を無意識下で封印してしまっています。

確かに「生殖能力」そのものは男女とも加齢によって減退しますが、脳が相手を魅力的と感じるかどうかは、生殖能力以外の要素も大きいのです。それが「フェロモン」とも言うべきものでしょう。多くのオジサンはフェロモンが減退しているため、過去のマニュアルに従った「言語」でいくら口説いても、若い頃のようには「モテない」のです。

人間のフェロモンに関しては、まだ未解明の部分が多いですが、似た作用があるものとして有名なのが「オキシトシン」です。

オキシトシンとは主に脳の視床下部の神経分泌細胞で合成され、下垂体後葉から分泌されるホルモンのこと。別名「抱擁ホルモン」「幸せホルモン」などとも呼ばれています。

女性は子供を産むとこのオキシトシンが盛んに分泌されるようになり、わが子に対して「愛おしい」という気持ちが強くなることがわかっています。つまりオキシトシンはストレスを減らし、愛情深く、幸せな気持ちを生み出すホルモンなのです。

「サッパリモテない」「男として見てもらえない」とお悩みの方は、このホルモンを上手に使う工夫をしてみてはいかがでしょうか。

■「幸せホルモン」を意図的に分泌させる方法

男性の性衝動には、「テストステロン」というホルモンが関係し、このホルモンの分泌量は加齢によって減少します。そのため若いときほど性欲を感じなくなります。このテストステロンと違い、オキシトシンの分泌は意図的に増やすことができるのが大きなポイントです。

『「モテ」と「非モテ」の脳科学』(菅原道仁著・ワニブックス刊)

たとえば、男女がお互いに「愛情深い気持ち」になっているときは、大量のオキシトシンが分泌されています。とりわけ盛んに分泌されるのは、「交際3カ月ごろまで」といわれています。しかし実際はそれ以降も、セックスのときはもちろん、軽くハグをしたり、手をつないだり、肩を抱いたりといったスキンシップで優しい気持ちになっているときに、多くのオキシトシンが分泌されています。

すでにパートナーがいる人は、ぜひスキンシップを増やし、オキシトシンの分泌量を増やす努力をするといいでしょう。ドイツの神経学者ルネ・ハーレマン博士の研究によれば、パートナーの浮気を防止する効果もあるとされていますから、末永く円満な関係を続ける1つの秘訣になるはずです。

また、オキシトシンは「添い寝」「マッサージ」「ぬいぐるみを抱く」「ペットをなでる」といった行動でも分泌が高まります。つまり、相手との関係に応じて、適切な方法でオキシトシンを増やせば、お互いが愛情深く幸せな気持ちになれるわけです。

若い女性がオジサン世代に求めるのは「安心感」「信頼感」。お互いのオキシトシンを増やすことが、「いくつになってもモテる男」「パートナーと長くいい関係を築ける男」の条件なのです。

■女性の共感を得る6つのポイント

さらにオキシトシンは、「信頼できる相手との会話」によっても分泌されることが知られています。

相手への信頼感は恋愛に不可欠で、そのためにはまず「感情」を共有(共感)する必要があります。人間は誰しも「しゃべりたがり」で、年齢や経験を重ねるほどに「それを人に話したい」という欲求は強くなります。

そうした習性を利用して、共感の空気を作る工夫をしましょう。大切なのは聞き上手になること。そのためのポイントをいくつかまとめてみました。

・低めの声でゆっくり話す。オジサン世代ならではの声はそれだけで効果的。
・相手の話をいきなり「否定」せず、まず受け入れる。矛盾している、間違っていると思っても、「なるほど」「そうなんだ」「よくわかるよ」といったん受容する。
・アドバイスは求められた場合のみ。上から目線の説教は絶対にNG。
・相手の言葉をうまく繰り返す。たとえば「遊びに行ったんだけど」と言われたら「へえ、遊びに行ったんだ」。「困ったことがあって」と言われたら「困ったことがあったの」など。「どこに行ったの?」「何に困っているの?」と矢継ぎ早に質問をすると、相手の安心感、信頼感を阻害してしまう。
・自分の話題は1〜2割にとどめ、8割以上は相手に話をさせる。
・「うなずく」「身を乗り出す」など、相手への共感を身振りでも伝える。

こうしたポイントを押さえることで相手の「しゃべりたい欲求」を満たし、共感の空気を作ります。目の前の女性に「信頼する相手と話している」という感覚を与えることができれば、オキシトシンも大量分泌。

――するとほら、あなたはもうモテているはずですよ。

(脳神経外科医 菅原 道仁 写真=iStock.com)