輝け!未来の天才プログラマー! 子どもの成長は大人の支援次第? Pepper社会貢献プログラムで見えたプログラミング教育のあり方

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●全国約600校が参加した巨大プログラミングコンテスト
ソフトバンクは2月10日、都内にて「Pepper社会貢献プログラム プログラミング成果発表会」を開催しました。
本発表会は小中学生を対象としたプログラミングコンテスト。
・ソフトバンクの人型ロボット「Pepper」を自由にプログラム
・Pepperの動作やプログラミングのアイデアを競う
というものです。

2017年度に行われた第一回プログラムでは、約270校が参加しました。
第2回となる2018年度は、前回の倍以上の約600校が参加。各都道府県での予選を勝ち抜いた30チームが集いました。

プログラミング内容は、
・小学生部門
・中学生部門
・クラブ・部活動部門
この3つのカテゴリーで競われました。

小学生部門では「身の回りで役立つPepper」というテーマがあり、
・学校の図書館で本を紹介する
・学校の保健室で応急処置の処方をアドバイスする
・避難所の案内をする
・家庭で献立や料理のレシピを紹介する
といった、小学生にとって最も身近な、学校や家庭で役立つアイデアが多く見られました。


兵庫県神河町立長谷小学校の発表の様子



小学生ながらも大人顔負けのプログラムを作る


中学生部門では「社会の課題を解決するPepper」という、
若干難しいテーマが与えられました。

発表された内容も
・保育士不足、待機児童問題の解決
・超高齢化社会を支える介護ロボット
・地元地域のPR活動
・英語教育などをサポートする教師ロボット
・自動車運転時の危険予知と予防(眠気感知や標識認識)
など多岐にわたりましたが、社会問題という広いテーマを上手くロボット技術へ落とし込んでいる学校が多かった印象です。


自動車運転時の危険予知プログラムを発表した滋賀県草津市立老上中学校



Pepperを運転支援ロボットとして活用しようという発想が斬新だ


クラブ・部活動部門のテーマはフリーとなっており、子どもたちの想像力のままに出されたアイデアが実演発表されました。
・体力づくりの支援ロボット
・認知症予防や進行を遅らせるための介護ロボット
・プログラミングに親しんでもらうための教育ロボット
この部門の特徴は、Pepperを大人が思いつかないアイデアで活用する子どもたちが多かったことです。

例えば、佐賀県武雄市立武雄北中学校の生徒たちは「Muscle Pepper」(マッスル・ペッパー)と題し、Pepperを筋力トレーニングに活用しました。
Pepperの手や足に備えられた触感センサーを上手く活用し、腹筋やスクワット、腕立て伏せなどをカウントさせるというものです。
Pepperのセンサーをそのように活用するアイデアなど、大人にはなかなか発想できません。
審査員の方々もその発想力に感嘆していました。


マッスル・ペッパーのアイデアは人々の運動不足を示す調査結果から生まれた



Pepperに組み込まれた触感センサーに触れることで腹筋をカウント



トレーニングメニュー名を面白くしたり、カウントダウンにジョークを交えたりするなど、楽しくトレーニングさせる工夫が光った



●学校単位で継承されていくプログラミング技術
発表は午前中に行われ、審査ののち午後には表彰式が行われました。
各部門で受賞したチームは以下の通りです。

・小学生部門
金賞……岡山県新見市立野馳小学校「避難所で役立つPepper」
銀賞……福岡県飯塚市立上穂波小学校「みんなの健康を守るPepper」
銅賞……佐賀県武雄市立橘小学校「応急処置に役立つPepper」

・中学生部門
金賞……静岡県藤枝市立葉梨中学校「外国人観光客増加問題対策 藤江PA千客万来キャンペーン」
銀賞……岡山県新見市立新見第一中学校「Let’s learning English with Pepper 〜ペッパーと一緒に英語を学ぼう〜」
銅賞……東京都港区立三田中学校「社会問題を解決するのに役立つPepper 〜駅で困っている人をサポート〜」

・クラブ・部活動部門
金賞……静岡県掛川市立北中学校「学校生活をより良くするPepper」
銀賞……佐賀県武雄市立武雄北中学校「Muscle Pepper」
銅賞……岡山県新見市立新見第一中学校「インクルーシブ 〜支援学校の生徒と一緒につくるプログラム」


中学生部門で金賞を受賞した静岡県藤枝市立葉梨中学校


表彰の場で審査員から、
「昨年からのレベルの上昇が凄い。出場したチームが遥かにレベルアップしている」
という言葉が聞かれるほど子どもたちのプログラミング技術は向上しており、プログラミング技術が個人だけではなく学校単位で向上し、次の子どもたちへと継承されている様子が伺われました。

また主催したソフトバンクのCSR統括部 統括部長の池田昌人氏は、
「驚きの一言。どの部門も1位を取ったチームは全て実証実験を行い、それをさらにフィードバックしていた。学校の中の授業から社会との接点を持っていただけたことが非常に嬉しいポイントだった。」
と壇上で述べ、トライ&エラーから学ぶ姿勢の大切さや、社会について考える機会となってくれたことを嬉しそうに語っていました。


ソフトバンクグループ ソフトバンクCSR統括部 統括部長 池田昌人氏


●子どもたちの「やりたい!」を実現させる支援
ソフトバンクがプログラミングコンテンストを始めた背景には、2020年より小中学校で必修化されるプログラミング教育があります。

プログラミング教育とは言っても、その本質や目標はプログラムを組める人材を養成することではありません。
プログラミングを通して論理的思考力やトライ&エラーから学ぶ姿勢を養い、創造性を育むことが最大の目的です。

今回のコンテストは、その目的に対して非常に有意義だったのではないでしょうか。


Pepperを活用した教育プログラムは今後も継続され、さらにIoTモジュールなどへの対応も予定されている


また表彰式で印象的だったのは、静岡県藤枝市や佐賀県武雄市など、受賞校の地域が一部に偏ったことです。そこには、地域の学校や市町村などの支援体制の差がありました。

例えば、中学校部門で金賞を受賞した静岡県藤枝市立葉梨中学校の場合、
外国人観光客への観光PRにPepperを使うアイデアでした。
・実証実験のために高速道路の藤江パーキングエリアへPepperを設置
・実際に外国人観光客にPepperを使ってアンケートを実施
こうした検証を経ることで、これまで判明していなかった観光客の需要を見つけ出すことに成功しています。

これら実証は、地域の学校や市町村、教育委員会による協力と支援なくしては実現できません。

審査員や池田氏が感嘆するほどの子どもたちのプログラミング技術の向上は、こういった学校や市町村、教育委員会といった場を、取り仕切る大人たちのバックアップがあったからこそ実現したものです。
逆に言えば、子どもたちにどれほどの才能ややる気があっても、大人がそれを支え引き出す場を与えなければ、伸びることはないのです。


子どもたちの「やってみたい!」を実現させるのが大人の役目だ


小中学校へプログラミング教育が導入されるまで、あと約1年となりました。
ソフトバンクに限らずIT関連企業の多くは、絶好の機会とPCやプログラミング教材の売り込み合戦を開始していますが、本プログラムのように積極的な技術教育に着手している企業はまだ多くありません。

今回各部門で金賞を受賞した3チームには、ソフトバンクよりシリコンバレーへの視察旅行が副賞として授与されました。
IT技術の本場を自分の目で見ることの意義の大きさは計り知れません。そういった機会を提供することもまた、大人たちができるバックアップの姿でしょう。

少子高齢化や労働人口の減少など、将来を担う子どもたちに苦しい未来を負担させてしまうことばかりを考えがちです。しかしこんな時代だからこそ本当にすべきことは、前をまっすぐ見つめる子どもたちを後ろから支えること、それだけかもしれません。


秋吉 健