自民党は12月11日の党役員会で、来年の参議院選挙・大阪選挙区に現職の太田房江氏(67)を擁立する意向を固めた。すでに同選挙区では、新人の柳本顕氏(44)が党からの公認を受けており、自民党は異例とも言える複数の候補者で臨むことになった。

 太田氏は旧通産省のエリート官僚で、全国初の女性首長として大阪府知事に就任。赤字財政の立て直しや、「大阪都構想」に道を開いたまではよかったが、講演のギャラや事務所費用の不手際で3選出馬を断念した。
「その後、大阪維新の橋下徹の天下になったことから、『太田さんがしっかりしていれば橋下の出番はなかった』と嫌味を言われ、長らく冷や飯を食わされていた。'13年の参院選に自民党から出馬した際も、同党の比例区候補者としては最下位で、あやうく落選するところだった」(地元関係者)

 そんな太田氏を、なぜ今ごろ担ぎ出すのか。
「本当は柳本一本でいく予定でした。ところが、本部から“複数候補者擁立”の指令が出た。そこで、この夏に党員や支持者を対象に“世論調査”をやったら、太田さんのほうが柳本さんより人気やったんです」(自民党大阪府連の関係者)

 しかし、今回の決定には、党内の力関係も大きく影響しているようだ。
「柳本さんは二階派の切り札。しかし、細田派が強い大阪府連にしてみれば、これが面白くない。そこに複数擁立の指令が飛んだので、細田派で官邸の覚えもめでたい太田さんを担いだんでしょう」(政治部記者)

 二階派と細田派の“代理戦争”ということか。
「野党も強力な看板候補が出そろっています。大阪選挙区の改選定数は4。自民党はうまくいけば2議席獲得できますが、共倒れの危険性もあります」(同)

 大阪維新の代表も務める松井一郎大阪府知事は、早くも政策論争で太田氏を牽制し、さらに強力な2人目を擁立する構えまで見せている。激戦は必至だ。

 大阪選挙区では、公明党が現職の杉久武氏(42)、立憲民主党が新人の亀石倫子氏(44)、共産党が現職の辰巳孝太郎氏(42)、日本維新の会が現職の東徹氏(52)の公認候補の擁立を決めている。いずれも侮れない面々だ。果たして自民2人両立は正解なのか? 大阪では「共倒れするんやないんか?」の声が聞こえてくる。