すでに外国人実習生を受け入れている企業も多い(イメージ)

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人手不足もう限界…!
 日刊工業新聞社が実施した中堅・中小企業アンケート(全国58社が回答)では、人手不足対策として、単純労働を含む外国人労働者の受け入れについて、60%以上が「賛成」と答えた。ただ、その理由を詳しく見れば、積極的に賛成を掲げる企業は少ない。人手不足が限界を迎えようとしている中、「外国人労働者の受け入れ拡大はもはや避けて通れない選択肢」(都内機械メーカー)と消極的ながらも支持しているのが現状のようだ。

消極的だが賛成―自動化追いつかず、このままでは生き残れない
 人手不足対策としての外国人労働者の受け入れについて、前向きな意見としては、「地方の中小企業も世界とつながっている。人口が減る中、海外とのつながりを考えないといけない」(東北の機械メーカー)、「外国人であれ、まじめでやる気のある人材なら賛成。これからの世の中は国籍に関係なく、多国籍の社員が働く日本になる」(都内の切削加工業)などの声が聞かれた。

 さらに、「いろいろな国の人が入ることで国が活性化し、発展する。シンガポールが好例」(関東の機械メーカー)、「日本人社会が硬直化することを避けるため、多様性を実現するにも、外国人材の受け入れを進めるべきだ」(九州の機械メーカー)などの意見のほか、「当社ではすでに外国人に働いてもらっている。いずれも日本人以上に仕事に誠実で意欲的」(中部の中小)と実績のある企業からは好意的意見も挙がる。

 ただ、賛成と答えた大半の企業から聞こえてくるのは、深刻化する一方の人手不足を外国人労働者の受け入れを進めても何とかしたいという、悲鳴にも似た声だ。

 「国籍を問わず、人材が必要。中小にとって人手不足は避けては通れない」(関東の機械メーカー)、「人手不足は深刻。議論を尽くす余裕がない。早急に(出入国管理法の)改正を進めてほしい」(近畿の加工業)、「人材の確保は年々難しくなってきている。国内の労働人口の減少は今後ますます顕著になるため、受け入れは必要」(別の近畿の加工業)、「中小の人材不足は待ったなし。単純作業も多く、自動化などは設備投資に費用と時間がかかる」(近畿の部品メーカー)など、人手不足を深刻な危機と捉える様子がうかがえる。

 ある中小の産業機械メーカーは、「人手不足では大都市圏ばかりに目が向いている。地方では人手不足に拍車がかかり、企業の閉鎖、小さな地方の町の壊滅が始まる」とまで言い切る。

 一方で、「人が増えればいいが、本当に中小まで人材が入ってくるのか分からない」(都内の部品メーカー)と外国人労働者の人材確保すら危惧する企業もある。

 アンケートでは、中堅・中小企業の置かれた現状の厳しさがあらためて浮き彫りになった。

“移民政策”に懸念―時期尚早・安易な賛成は…
 「反対」や「どちらともいえない」と答えた企業の声を拾うと、「女性や高齢者が就業しやすい社会にしてほしい」(関東の切削加工業)、「今後、人工知能(AI)やロボットが普及すれば、日本人の働き場所が不足する。その対策が議論されていない」(北陸の中小)と、外国人労働者の受け入れ拡大より、日本人労働者の活躍を優先すべきだとの意見があった。

 こうした声は、賛成と答えた企業からも聞こえ、ある産業機械メーカーは「人手不足対策ではロボット化のほか障害者や高齢者の活用、生産の効率化を推進すべきだ。ただ、すぐに実現できない以上、外国人労働者に頼らざるを得ない」と主張する。

 一方、都内のメーカーは「今回の法案は事実上の移民政策。欧米の現実を直視すれば移民を拙速に受け入れることは論をまたない。日本社会全体にわたる大きな禍根になりかねない」と手厳しい。