ロンドンのヒースロー空港で乗務予定だった副操縦士が、基準値を超えるアルコール値検出によって現地警察に逮捕、拘束された事例について、JALが調査の経過と再発防止策を発表しました。

当該副操縦士はまだ拘留中

 JAL(日本航空)は2018年11月16日(金)、ロンドンのヒースロー空港で乗務予定だった副操縦士が、基準値を超えるアルコール値検出によって現地警察に逮捕、拘束された事例について、調査の経過と、再発防止策について国土交通省へ報告したと発表しました。


羽田空港を発着するJAL機(2017年1月、恵 知仁撮影)。

 調査経過について、JALは以下のように発表しています。

(1)当該副操縦士の社内でのアルコール検査においてアルコールが感知されなかった要因について、11月1日に検査方法が適切であったか質問したところ、「申し訳ございません。」という発言をしている。また社内で検証した結果、使用したアルコール感知器は不正をすることもできるという結果を得ている。こうしたことを踏まえ、当該副操縦士は測定に必要な呼気を感知器に吹きかけず、意図的に不正な検査方法で検査を行ったと認識している。

(2)機長2名がアルコール臭に気がついていなかったという点について、両機長は、4度に渡る詳細な聞き取り調査において、アルコール臭に気がつかなかった発言している。また両機長は、副操縦士が距離を置こうとしていた様子であったとの認識があり、アルコール臭に気がつかなかった可能性が考えられる。

(3)機長やアルコール臭に気づいたバスの運転手以外の当該副操縦士に接触をした関係者(客室乗務員、保安担当者など)計13名にも聞き取り調査を行ったが、バスの運転手以外は申し出なかった。

(4)2名の機長は、測定時の相互確認を怠っていたことが判明した。

(5)制限値を超えるアルコールが検出されるほど多量の飲酒を行った要因としては、今回の事例を受けて調査したところ、本人が個人的にさまざまな悩みを抱えていたようで、過度な飲酒に至った可能性があると考えられる。また、当該運航乗務員の安全、および酒精飲料に関わる規定順守の意識の低さや、アルコールの影響や分解能力に関する認識の欠如、旧型感知器では不正な測定が可能であるとの認識を持っていた可能性などが挙げられる。

兆候が見られる社員をフォローアップ JALの再発防止策

 JALは再発防止策として、以下を挙げています。

・旧型アルコール感知器の正確な使用方法の徹底(実施済み)。
・文書などによる事例周知および注意喚起(実施済み)。
・アルコール検査の際の地上スタッフの立ち会い(実施済み)。
・乗務開始の24時間前以降の飲酒の禁止、国内・海外滞在地における飲酒の禁止(実施済み)。
・海外空港への(不正が困難な)新型アルコール感知器の配備(11月19日までに完了予定)。
・運航規程における、アルコール検査時の呼気中アルコール濃度の制限値の設定(可及的速やかに実施)。
・制限値を超えるアルコールが感知された場合の厳罰化の明文化(可及的速やかに実施)。
・アルコールの影響によるメンタル面や健康状態に何らかの兆候が見られる社員へのフォローアップ(2019年2月1日より実施予定)。
・客室乗務員、整備士、運航管理者、グランドハンドリング従事者へのアルコール検査の導入(可及的速やかに実施)。
・アルコールの正確な知識の付与、確認や各種酒精飲料の適度な摂取量の周知(12月末までに実施)。
・グループ各社も含めた上記再発防止策の実施(可及的速やかに実施)。

 JALは今回の事例について、大変重く、社員個人のみならず組織全体の問題であり、管理監督責任の観点も含めて厳正に対処し、再発防止に向けた取り組みを徹底するとしています。

【写真】イギリスらしい「Welcome」のヒースロー空港


帽子が特徴的なイギリス近衛兵が迎えてくれるロンドン・ヒースロー空港(2016年4月、恵 知仁撮影)。