ソフトバンクの孫社長         

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 “携帯料金値下げ”をめぐり、大手キャリアが揺れている。NTTドコモが最大4割の値下げを表明したことを皮切りに、ソフトバンクは通信事業の人員4割を削減し、値下げにつなげると公表。一方、KDDIは追随した値下げはしないと強調するなど、大手3社は三者三様の対応を見せる。2019年秋には楽天の携帯電話事業参入も控え業界が混沌(こんとん)とする中、各社は顧客獲得と囲い込みに向け難しいかじ取りを迫られている。

変化捉える
 「NTTドコモはマーケットリーダーになる」。NTTの澤田純社長は、グループの稼ぎ頭であるドコモについてこう宣言した。ドコモは19年度に料金を2―4割程度値下げすることを決めた。

 ドコモが他社に先駆けて値下げを表明したのは「大きなマーケット変化を捉えたもの」(澤田社長)と説明。人口減少で携帯電話事業の大きな成長が見込めない中、いち早く値下げを表明して顧客を獲得。金融や旅行、ヘルスケア商品など通信以外の「『スマートライフ』を広める」(同)狙いという。

 ソフトバンクはRPA(ソフトウエアロボットによる業務自動化)を導入して業務の効率化を進め、低廉な通信料金につなげる。RPA導入で通信事業の人員4割を新事業へ移管し、コスト削減しながら新たな成長の芽も育てる。

実質3割値下げ
 KDDIの高橋誠社長は「我々はドコモに先駆けて『分離プラン』を導入し、既に成果を上げた」と追随した値下げを否定。端末料金を割引きしない代わりに通信料金を安くする「分離プラン」を17年から先行実施し、既に実質3割値下げしたという。さらに、KDDIはライバルとなる楽天に通信設備を貸し出すことも決めた。楽天は大手3社より安いサービスを提供する予定だが、今回の提携はこういった競争力にも影響を与えるかもしれない。

顧客流出の恐れ
 値下げの余波は格安スマートフォン市場にも広がる。「IIJmio」を手がけるインターネットイニシアティブ(IIJ)の勝栄二郎社長も「心配している」と吐露する。低廉な料金を強みの一つとしてきた格安スマホ事業者にとって顧客流出の恐れがあるからだ。

 KDDIは「UQモバイル」と「ビッグローブモバイル」、ソフトバンクは「ワイモバイル」と、それぞれ傘下に格安スマホブランドを抱える。このため通信料金を見直す場合、こういった格安スマホブランドとどうすみ分けるのか、今後の焦点となりそうだ。
(文=大城蕗子)