空白の1年を埋める最適解。“橋渡し監督”ラングニック、再び

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1年後のユリアン・ナーゲルスマン監督就任――前代未聞の交渉により生じる空白期間を埋めるのに、彼以上の適任者はいない。ラルフ・ラングニック。スポーツディレクター(SD)としてRBライプツィヒの哲学を創り上げている張本人が、再び表舞台に立つ。

文 木崎伸也

Ralf RANGNICK
ラルフ・ラングニック
RBライプツィヒSD兼監督
1958.6.29(60歳) GERMANY

 ナーゲルスマンが2019年夏からクラブを率いることが発表された時点で、今季のRBライプツィヒの監督人事はもはやこの「緊急プラン」しか残されていなかった。SDのラングニックが監督を兼任し、1年限定で指揮することに。来季に繋ぐことが役目の“橋渡し監督”だ。

 すでにラングニックには、RBライプツィヒがまだ2部にいた15-16シーズンにこの経験がある。激しくプレスをかける“パワーフットボール”で見事に1部へ導き、前監督のラルフ・ハーゼンヒュットルにバトンを渡した。その時代を知るMFディエゴ・デンメは「彼は完璧主義者。今回も確実にチームを進化させてくれるはず」と期待している。

 早くもピッチ内外で変化が現れている。昨シーズン、フランス語圏の選手が増え、チームの一体感が弱まっていた。そこでラングニックは選手間の会話を促すために、今シーズンからロッカールームでの携帯電話の使用を禁止。また、食事の際に自由だった席順を指定席に変更し、年齢や言語が異なる選手たちが交流しやすくした。新加入のマテウス・クーニャ、マルセロ・サラッキ、ノルディ・ムキエレには合宿中にドイツ語の家庭教師がつけられた。

 戦術改革も進行中だ。昨シーズン、ハーゼンヒュットルはプランBとしてポゼッションサッカーに挑戦し、本来の武器であるプレスが弱まってしまった。ラングニックは「まずは武器を取り戻したい」と公言している。

 「かつて『RBライプツィヒのプレスは欧州一だ』と絶賛されたが、昨シーズンは誰もそう言わなかった。再び欧州一のプレスと呼ばれるようになりたい」

 ただし、プレスだけにこだわるつもりはない。ラングニックは武器を尖らせたうえで、「柔軟さ」も身につけようとしている。

 「私自身が3バックを採用したのははるか昔だが、ナーゲルスマンは3バックで強みを発揮し、さらに試合中のシステム変更で相手を混乱させている。今シーズン、私たちもそれに取り組むつもりだ」

 ある意味、ナーゲルスマン流への移行準備とも言えるだろう。また、W杯でセットプレーによるゴールが50%を超えたことを受け、「練習の3割をセットプレーのメニューにあて、得点源にしたい」と考えている。

 現在、彼らは選手獲得の際に「最高年俸400万ユーロ、24歳以下」という独自ルールを設定しているが、ラングニックは例外を検討し始めている。実際、この夏はホッフェンハイム時代、ナーゲルスマンのパスサッカーを支えたドイツ代表MFルディの争奪戦に参戦。実現はしなかったものの、要所に欧州レベルの人材を補強しCL出場権を確保できれば、最高の状態でナーゲルスマンに“橋渡し”できるはずだ。

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