野球用語には和製英語が多い(写真:RBFried/iStock)

加速度的に暑くなる毎日、いよいよ全国高等学校野球選手権大会、「夏の甲子園」の季節がやってきます。2018年は記念すべき第100回で、キャッチフレーズは「本気の夏、100回目。」なのだそう。最近はサッカーや卓球、ラグビーなど、さまざまなスポーツが人気ですが、やっぱり野球は根強く熱いファンが多いですよね。


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今回はよく耳にする野球用語を英語で紹介していきます。野球にかぎったことではないのですが、スポーツ用語には意外に和製英語が多く使われているんです。そのまま英語だと思って使っても、ネーティブには通じないものもあります。まずは基本的な用語を英語ではなんと言うのか一緒に見てみましょう。

野球用語に意外と多い和製英語

先日行ったセミナーで、英語学習を継続するひとつのコツとして、自分の好きなことと英語を結び付けるようにアドバイスをしました。教材学習だけではなく、英語を使って自分の趣味や関心事に触れる機会も持つようにすると、自然に自分の生活に英語を取り入れることができ、学習にもよい効果をもたらしてくれます。

北関東在住のタロウさんが、セミナーの休憩時間に、「ボクは野球が好きなので、英語で野球の試合を観戦したりするのでも大丈夫ですか?」と筆者のところに聞きにきました。メジャーリーグの試合を見るのは楽しいですし、アメリカ人となら共通の話題が増えていいかもしれません。何よりタロウさんが英語学習をずっと続けていく支えになるのはすばらしいことですよね。

そんな話から、野球用語には意外と和製英語が多いので、日本で使っている用語と英語で使われる用語の違いを探してみることから始めるのをお勧めしました。「たとえば、どんなものが英語と日本語では違うのですか?」と聞かれたので、筆者でも知っているような基本的な用語を紹介すると、タロウさんは楽しそうにいろいろと野球の話を聞かせてくれました。

デッドボール hit by a pitch
フォアボール walk
ゴロ grounder
ランニングホームラン inside-the-park home run
ジャンピングキャッチ leaping catch
バックスクリーン batter’s eye screen
バックネット backstop screen
ネクストバッターズサークル on-deck circle
エンタイトルツーベース automatic double / book rule double
ナイター night game

デッドボールはhitを使って表現されます。たとえば、

Tsutsugo was hit by a pitch on the left arm. (筒香選手は左手にデッドボールを食らった)

のように言うことができます。ランニングホームランは、ボールがグラウンドの外に出ずにホームランになることからinside-the-park home runと言われます。in-the-park home runin-the-park homerのように言うこともできます。ジャンピングキャッチは、そのままjumping catchと言ってもおそらく通じますが、leaping catchという表現が一般的です。同様に、ネクストバッターズサークルやウェイティングサークルも、そのまま英語にしてもおそらく通じなくはないと思いますが、一般的にはon-deck circleと言いますので覚えておくといいでしょう。

野球好きな方なら、英語で野球観戦をしながら、解説を全部聞き取れなくても、こういった用語を拾い出していくだけでも、たくさん発見があって楽しいと思います。ほかのスポーツでも、同じように用語を拾って楽しむのはお勧めです。

さらに英語で知りたい野球用語

タロウさんに、「和製英語になっている用語だけでなく、ほかにも知りたいものがある」と質問されたのが次の用語です。

さよならホームラン walk-off home run / game-ending home run
満塁ホームラン grand slam
○○回表 top of the [ first / second… / ninth ] inning
○○回裏 bottom of the [ first / second… / ninth ] inning
三振 strikeout
ショート(遊撃手) shortstop
レフト(左翼手) left fielder
ライト(右翼手) right fielder
センター(中堅手) center fielder
変化球 breaking ball
敬遠 intentional walk

さよならホームランのように、試合を終わらせるものにはwalk-offを付けて表現することができます。そのまま訳してgame-endingのように言ってもいいでしょう。面白いのは、満塁ホームランはhome runではなく、grand slamと言うことがほとんどですので、覚えておいてください。さよなら満塁ホームランならwalk-off grand slamgame-ending grand slamとなります。

Yoshihiro Maru hit a walk-off grand slam with one out in 10th inning. (丸佳浩選手が10回ワンアウトでさよなら満塁ホームランを打った)

「〜回」は日本語でも「イニング」と言うことがありますので、知っている方も多いと思いますが、意外に知られていないのが、「表」や「裏」。これは、topbottomを使って表します。

With the bases loaded and two outs in the bottom of the ninth inning, Ichiro Suzuki hit a single. (9回裏、ツーアウト満塁で、イチロー選手がヒットを打った)

この例文のthe bases loadedというのは、すべてのベースが埋まっているという意味で「満塁」という意味です。こうやって用語を押さえていくだけで、もう英語で野球の解説が聞けそうな気がしませんか? 野球を知っていれば、意外に難しくなく意味を追っていけるはずです。

二刀流は英語にすると?

タロウさんと野球の話で盛り上がっていると、都内の大学に通っているというジロウくんが寄って来て、「野球の話ですか?」と輪に加わってくれました。

すると、ジロウくんに「エンゼルスの大谷選手みたいな『二刀流』は英語でなんていうのですか?」と聞かれました。大谷選手がエンゼルスに移籍したころのニュースや新聞などでは、

Japanese two-way star Shohei Ohtani has selected the Los Angeles Angels as the next team he will play for.
(日本の二刀流スター、大谷翔平選手は、ロサンゼルスエンゼルスを、次にプレーをするチームとして選んだ)

という感じで、two-way playerとかtwo-way starのように書かれていました。宮本武蔵のような両手に武器を持って戦う「二刀流」はdual wieldingといい、dual-wielding samurai 「二刀流で戦う侍」やdual-wielding fighter「二刀流で戦う戦士」、dual wielder「二刀流で戦う人」などの表現に使われます。でも、大谷選手はバットを2本両手に持ってボックスに立つわけではありませんので、彼にdual wieldという表現は使うことはできません。

(野球の)二刀流 two-way player
(侍などの)二刀流 dual-wielding fighter

大谷選手がエンゼルスで活躍をしてIt’s Sho-Time!showtimeshowと翔平のShoをかけて話題になっていましたね。そのあとで、エンゼルスがツイッターでアメリカの子どもたちが学校で行うプレゼンテーションのshow and tellにかけて、Sho and tellとつぶやいて、次の「大谷翔平ワード」と一部でざわついていたこともありました。showという単語なら、どれでも置き換えて「大谷翔平ワード」にできそうですね!Sho-downshowdown 対決)とかSho-offshow-off 見せびらかし、自慢)とかはなんとなくやめてほしいですけれど……。

大谷選手は、日本語と英語の野球用語の違いに戸惑ったりすることはあるのでしょうか。海外に出て活躍する日本のアスリートたち、本当に頑張ってほしいものです。

そのためにも、日本のスポーツ界を「すべて英語で」とは言いませんが、「和製英語の用語だけはやめて、正しい英語表現にすればいいのに!」と英語教師視点では思ってしまいます。

セミナー終了後も、タロウさんとジロウくんと一緒に、熱く「スポーツ&英語」ネタで盛り上がってしまいました。

ビジネスで使う「野球場の数字」って?

野球の用語を紹介しましたので、ちょっと関連してビジネスでも使える表現の話です。ビジネス英語ではよくballpark figureballpark estimateというフレーズが出てきます。

ballpark figure 概算・どんぶり勘定
ballpark estimate おおよその見積もり

このballparkというのは、表現上は「おおよその」という意味で使われていますが、元々は「野球場」という意味なのです。

ballpark 野球場

これがどうしてこのような意味で使われるようになったのかは、いくつか説があるようですが、in the ballpark 「ある一定の範囲内」という表現から、「正確ではないけれど、妥当な範囲での概算」という意味で使われるようになったのだとか。

Can you just give me a ballpark figure? (だいたいの数字でいいから、教えてくれる?)
The ballpark figure is around $200-$300. (どんぶり勘定で200〜300ドルくらいです)

また、「野球のボールはどこに飛んでいくかわからないけれど、野球場内のどこかではある」という意味で、「おおよその」という意味になったという説もあれば、「たまに場外にボールが飛んでいくこともあるけれど、そうはいっても届く範囲には限界がある」という点から、「一定の範囲内でだいたいの」という意味になったという説もあるようです。語源はともかく、よく使う表現ですので、覚えておくと便利ですよ。