自分のゴルフを貫いた時松隆光 世界で戦えるレベルのパットも優勝の要因の一つ(撮影:佐々木啓)

写真拡大

アマチュアの久保田皓也の活躍などで、大きな盛り上がりを見せた「関西オープン」は、最後に“プロの意地”を見せた時松隆光が接戦を制し、ツアー3勝目を挙げた。JGTOのコースセッティング・アドバイザーを務める田島創志は、今回の優勝の理由を、時松が「自分のゴルフを理解し、しっかりと長所で勝負しきった」点に見出した。
■コースにハマった時松のスタイル
今年の関西オープンの会場となった小野東洋GCの全長は7,124ヤード。コースが狭く、林でセパレートされた作りが特徴だ。このコースでは「ロングヒッターにアドバンテージな点はない。270ヤードという距離があれば、全員が戦えるコースだと思う」と田島は分析した。
そのうえで、「時松選手は、ボギーを打たずに、チャンスが来たらバーディをとるスタイル。(ティショットの)距離は出ないけど、パーセーブ率の高さに支えられているのが強みです。それを割り切ってプレーしていました。すごくいいゴルフでした」と称賛を送った。
今大会の時松のパーキープ率は「93.06%」で堂々の1位。本人も優勝会見の席で、「自分はガンガン攻めるタイプではなく、パーでしのぐタイプ」と言い切った。それがコースの特徴とマッチし、今回の戴冠をもたらした一つの要因だ。
■日本でもトップクラスの「100ヤードの精度」
田島は、時松のパーセーブ率の高さを支える要因として、「アプローチの精度」と「パッティング技術」を挙げる。
「100ヤード以内のアプローチの精度は、他の選手と比べても圧倒的に高く、日本でもトップクラスです。ピンは外れないし、距離もずれない。そして、それによって得意のパッティングに勝負を持ち込める。そこを理解し、長所で勝負しようという気持ちは彼の強みです」
昨年の「ブリヂストンオープン」優勝で、時松は今年8月に開催される世界選手権シリーズ「WGC-ブリヂストン招待」の出場権を得ている。実は関西オープン優勝後に、今後の目標を聞かれた時松は「ブリヂストン招待でドベ(最下位)にならないこと」と答え、周囲を笑わせた。それは飛ばし屋が有利なコースというのが理由だったのだが、田島は「そんなことはない」と否定する。
それは、「自分のゴルフを貫き通せる」時松だからこそかける期待だ。「ボギーを打たなければ『72』で回れます」と笑った後、真剣な表情で「100ヤードの精度の高さを生かせば、パットは世界でもトップで戦えるレベル。自分のゴルフが確立されていますから。ゴルフの勝負所はアプローチとパッティングです」と言った。そして、世界のパワーヒッターに、ショットで渡り合う時松の姿を思い「楽しみです」と口にする。
■地区オープンが持つ可能性
また田島は、「関西オープン」が男子ツアーに示す可能性についても話した。1926年に第1回が開催された“日本最古のオープントーナメント”は、91年に1度ツアー競技から外れた過去がある。2009年に復帰したが、関西ゴルフ連盟主催の地区オープンの一つだ。
「地方にはゴルフを楽しみにしている方も多い。関西オープンだけでなく、関東オープン、九州オープンなど他の地区オープンもツアースケジュールに組み込まれていくと、個人的には面白いと思う」
これが田島の思いだ。元々「日本オープン」の予選会という意味合いも持つ、これらの地区オープンだが、優勝者しか本戦に出場できない点や、日本オープンが統一予選会をやっている現状を踏まえ、「本来の意義が薄れている」と田島は指摘する。そのうえで、「地区オープンがトーナメントに組み込まれることで、地方活性化と、男子ツアーの盛り上がりに一役買うのではないか。そのうえで、関西オープンは今後のいい可能性を見せてくれる大会」と語る。
会場は持ち回りのサーキット方式のため、様々な場所で試合を開催できる点や、アマチュアの活性化・啓蒙・入口にもつながっていく点など、大きな可能性が地区オープンには秘められている。そのポテンシャルを発揮させるため、JGTOと地方連盟が連携し、実現の可能性を模索していくことが重要と田島は考えている。
■今週は8,000ヤード超のモンスターコースが舞台
今週の「ミズノオープン」が行われる、茨城県鉾田市のザ・ロイヤルGCは、小野東洋GCと打って変わり、全長8000ヤードを超える男子ツアー史上最長となるコースだ。一見、パワー重視のゴルフとなりそうだが、これを田島はどう見るのか。
「マネジメントができないと難しいコース。たしかに広いが、ターゲットゾーンを間違えないようにしていく必要があります。それを無視して、パワーゲームに持ち込むと苦しみます」
長さに惑わされない戦略性が重要になるというのが田島の意見だ。自身で回った際の印象について、「時にはグリーンをわざと外して、チップインを狙った方がスコアに結び付きやすい場所もある」といい、「飛ばすだけではダメ。選手のマネジメント能力も見どころの一つ」と繰り返した。
また昨年までの開催コースだったJFE瀬戸内海GCと比較し、「グリーンが瀬戸内海くらい硬いと飛距離がある人が有利になるけど、ザ・ロイヤルGCはそうではない。形状の面白さなどが特徴なので、攻略法をしっかりと練らないといけません」という。とかくその長さが注目されるが、考え抜くゴルフが求められるミズノオープン。観戦する我々もそのポイントを意識すると、また別の魅力をこのモンスターコースから感じ取れるかもしれない。
解説・田島創志(たじま・そうし)/1976年9月25日生まれ。ツアー通算1勝。2000年にプロ転向し、03年『久光製薬KBCオーガスタ』で初日から首位を守り、完全優勝。青木功JGTO(日本ゴルフツアー機構)体制では、トーナメント管理委員会 コースセッティング・アドバイザーを務める。

<ゴルフ情報ALBA.Net>

【ツアーの深層】谷口徹の勝因は“凄み”とマネジメント力にあり!
“多度おろし”が吹き荒れる!安定感を見せた重永亜斗夢と進化した石川遼が激突した最終日【ツアーの深層】
冷静に、しかしガンガン攻めたものが上にいく!【ツアーの深層】
【LIVE写真】リゾートトラストレディス 開幕前の様子も現地からフォト配信!