「後部座席にティーセット! メルセデスの「超高級EV」は、なぜ中国で発表されたのか」の写真・リンク付きの記事はこちら

自動車産業の未来は中国にある。急成長する世界最大の自動車市場で、地球上で最も厳しい排ガス規制が敷かれているために、メーカーはガソリンエンジンを放棄する方向へさえ向かっている。

中国の顧客の好みに合わせて、クルマには後部座席の足元の空間を広げたデザインや、消臭芳香システムまで採用された。そして中国のおかげで、世界はついにダイムラーの超高級車ブランド「メルセデス・マイバッハ」の新型SUVを手に入れることになったのだ。

ダイムラーは4月25日に始まった北京モーターショーで、メルセデス・ベンツの新型電気自動車(EV)コンセプトのコンセプトモデル「ヴィジョン・メルセデス・マイバッハ アルティメット ラグジュアリー」を発表した。内装は極めて耽美的なアイデアで埋め尽くされており、風変わりな外観のデザインなどどうでもよくなってしまうほどだ。

セダンとSUVの長所を取り入れることを目指したそうだが、そのバランス感覚は必ずしもいい方向に向かっているとは言えないかもしれない。まず、エンジンは収納されていないにもかかわらず、ボンネットは過度に長い。そのうえ車体の後ろ3分の2は、押しつぶされて車高が高くなってしまったかのように見える。外観でそれなりに魅力的なのは、タービン型の24インチホイールと、テスラ車のようにドアを開け閉めするときだけボディから飛び出すドアノブだろうか。

SLIDE SHOW FULL SCREEN FULL SCREEN FULL SCREEN FULL SCREEN FULL SCREEN FULL SCREEN FULL SCREEN 1/6フロントグリルは昨年に発表された衝撃のコンセプトEV「ヴィジョン・メルセデス・マイバッハ6・カブリオレ」と同じデザインになっている。PHOTOGRAPH COURTESY OF DAIMLER AG 2/6SUVとセダンのクロスオーヴァーモデルで、メルセデスによると「この融合はスポーツ性とメルセデス・マイバッハの高級感という両極端な性質の興味深い緊張感を生みだした」。つまりなんというか、「生焼けのケーキ生地は、焼き過ぎて焦げたケーキと山積みの卵と小麦粉の間に興味深い緊張を生み出した」という感じなのだろうか。PHOTOGRAPH COURTESY OF DAIMLER AG 3/6ドライヴァーは12.3インチのディスプレイ2枚だけでなく、おそらく給料も手にするだろう。お抱え運転手のためのクルマでもあるのだ。PHOTOGRAPH COURTESY OF DAIMLER AG 4/6後部座席にはティーポットと、カップを載せた黒檀の保温トレイが用意される。PHOTOGRAPH COURTESY OF DAIMLER AG 5/6後部座席にはティーポットと、カップを載せた黒檀の保温トレイが用意される。PHOTOGRAPH COURTESY OF DAIMLER AG 6/6タービン型の24インチホイールと、ボディと一体化したドアハンドルが特徴だ。PHOTOGRAPH COURTESY OF DAIMLER AG Prev Next

各車輪に1つずつ合計4基の電動モーターにより、750馬力のモンスターマシンが誕生した。最高時速は250kmだが、容量80kWhのバッテリーパックの連続走行可能距離は500kmと比較的普通だ。テスラの「モデルX」は9万6,000ドル(約1,050万円)で、100kWhのバッテリーパックをオプション搭載すれば走行可能距離は最大で565kmになる。

なお、EV市場に参入したばかりの中国資本メーカー、SFモーターズが近く発表する予定のSUVは、走行可能距離が300マイル(482km)。ほかの高級EVでは、ジャガーの「I-PACE(アイペース)」は最長480kmの連続走行ができる。

そうは言っても、このクルマの場合は走行可能距離などどうでもいいのかもしれない。当然のことながらお抱え運転手がいるのだから、充電の場所とタイミングを気にかける必要はないのだ。

並外れた豪華さに満ちたインテリア

そんなことより注目すべきはインテリアだ。メルセデス・マイバッハは並外れた豪華さを約束するブランドで、どのパーツをとっても妥協は一切ない。マイバッハという名は、贅沢であることとイコールなのだ。

最高品質の木材と、牧場半分を埋め尽くせるだけのヤギからとった白いナッパレザーを補完するために、シートの後ろはきらめくローズゴールドのアルミ素材で覆われている。シートにはもちろんマッサージ機能が付いていて、後部座席にはレッグサポートもある。

運転席のダッシュボードは12.3インチのスクリーンを2枚搭載し、後部座席にはティーセットまで用意されている。そう、なんとティーポットとカップを載せた黒檀の保温トレイがあるのだ。

プレスリリースによると、この装備で「極上のティータイムを楽しむ」ことができる(執事の方に言っておきたいのだが、リプトンのティーバッグなんてとんでもない。最高級の茶葉を用意してほしい)。あとはお茶をこぼしてしまわないように、クルマがあまり揺れないことを祈ろう。

今回の発表では残念ながらコンセプトモデルということだったが、数年後には市販されることが期待されている。規制を満たすために仕様を大きく変える必要はないはずだ。

SUV市場の爆発的な拡大と中国政府によるEV販売の奨励があれば、近い将来この超豪華モデルをドライヴすることが可能になるだろう。もちろん、買うだけのお金があればの話だが。

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