そこで拡大が見込まれるのが、中国を中心に利用者が急増中のQRコードを使った決済方式。スマホの画面や、店頭のレジに表示したQRコードを読み取って決済する。代表格は中国アリババが展開する「支付宝」(アリペイ)や、同テンセントの「微信支付」(ウィーチャットペイ)だ。

 野村総合研究所の田中大輔上級コンサルタントは、「中国ではスマホやネットの普及と若者人口の多さなど、タイミングが重なり、QRコードが爆発的に普及した」と分析する。中国からのインバウンドを見据え、国内でもイオンやローソン、家電量販店、百貨店など小売業を中心に、対応が拡大している。

 アリペイやウィーチャットペイは日本だけでなく、東南アジアへの進出をもくろむ。ただし決済手数料でもうけるのが目的ではない。その狙いはデータを活用したプラットフォームビジネスだ。

 決済を押さえることは、消費者との接点を押さえることだ。すでに世界の多くの事業者が、決済そのものではなく、支払う行動から得られるデータに価値を見いだしている。アリペイなどが積極展開するのも、「ユーザーの個人情報を得てビッグデータ(大量データ)を活用し、ビジネスにつなげる狙いがある」(田中上級コンサルタント)。

 もちろん、国内の各事業者も狙いは同じだ。JR東日本は13年に情報ビジネスセンターを立ち上げ、情報ビジネスを推進。「スイカから得た統計情報を活用し、店舗開発などに役立てている」(広報)。

 キャッシュレスの決済プラットフォームをどこまで広げて利用者を増やせるかは、将来のデータビジネス競争をも左右する可能性がある。

 普及拡大に向けて動きだしたフェリカ。だが、国内では電子マネー業者が乱立して、それぞれの囲い込み戦略から抜け出せないでいる。

 決済システムもそれぞれ個別に構築する必要があり、このままでは新しい決済方式にシェアを奪われる可能性もある。「各社の垣根を越えて新たな仕組みを作れるか、流通業者なども巻き込んで議論する必要がある」(田中上級コンサルタント)。
(文・政年佐貴恵)