「人の脳細胞を模した脳チップが世の中かを変えるかもしれない」と語るのは新野隆NEC社長。将来、スマホに脳チップが組み込まれれば、より個人の特性に沿ったパーソナルAIが登場するかもしれない。日本の消費者のニーズは細分化されており、これに対応する“おもてなし”の感性は日本勢に一日の長がある。

 モノづくりでのAI活用も同様だ。日本の製造業の価値の源泉は人。究極は匠(たくみ)であり、設備に異常が発生すると、マニュアルを見ずとも、五感と経験を生かして迅速に対処する。AIにこうしたノウハウを学ばせて、伝承しようする試みも日本が先行している。

 ただ「日本がAIで勝てるのか」といった疑問は残る。AIのプラットフォーム(共通基盤)は海外勢が牛耳っているためだ。これに対してポール与那嶺日本IBM社長は「日本企業は膨大なデータを持っている。これをもとに業種ごとにソリューションを作り上げる競争はグローバルで始まったばかりだ」と日本勢が勝ち抜ける可能性を示す。

 その一方で「プラットフォームをいちから作っていては間に合わない」とも警告。AIでリードするためには、日本の知見と感性をいかしたソリューションビジネスに活路を見いだす必要がありそうだ。
(文=斎藤実、松沢紗枝)
※内容、肩書は当時のもの

日刊工業新聞2017年1月11日

日産とDeNA、自動運転車の配車実証
 日産自動車がモビリティーサービス事業に本腰を入れる。ディー・エヌ・エー(DeNA)と組み、一般消費者向けに自動運転車を使った配車サービスの実証実験を3月に実施する。行きたい場所だけでなく周辺のお勧めスポットなども表示することで、移動だけにとどまらない新たな乗車体験を味わえるサービスを実現する。人々の車への価値観が「所有」から「利用」へシフトする中、日産がサービス化に踏み込む上での大きなステップと位置付けられる。

 「新しい事業領域で競争力を確保するには、専門性を持つパートナーとの協業が重要なポイント。両社でサービスの共同開発に進めたことは大きな一歩だ」。日産の西川広人社長は新事業の確立に向けた両社の取り組みの重要性を強調する。

 両社が開発した配車サービス「イージーライド」は、スマートフォンの専用アプリケーションを使い無人運転車両を呼び出し、目的地に移動する。今後、実証実験に加えて限定環境でのサービスなども実施し、20年代前半の本格開始を目指す。

 今回の実証は、横浜市のみなとみらい地区内で乗降地4カ所を設置し、300組の一般モニターが参加。利用者はアプリで行きたい場所や行動を入力し、人工知能(AI)が推奨した店舗や場所から行き先を決める。

 移動中は車内のタブレット端末から周辺地域のイベント情報や提携店舗のクーポンを取得できる。地域のバス、タクシー会社とは運転手不足解消などで補完関係を築き、地域のニーズに合ったサービス形態を検証する。DeNAは「今後到来する完全自動運転社会の主役を担えるサービスにすべく、長期的にしっかり育てていく」(守安功社長)方針。両社はサービスの品質を高めつつ、地域の自治体や事業者と連携したビジネスモデルの確立を目指す。

 シェアリングサービスの普及を見据えて、国内外で取り組みが活発化している。トヨタ自動車はタクシー配車アプリのジャパンタクシー(東京都千代田区)に出資し、タクシー会社向け配車支援などのサービスを検討。米国では米ゼネラル・モーターズ(GM)が19年に自動運転タクシーのサービス化に乗り出す。米グーグルも米国で自動運転タクシーの実証実験を計画する。

日刊工業新聞2018年2月26日

そだねージャパン、AI新人アナが実況