ソフトバンクは高谷裕亮(左)、栗原陵矢と2人の捕手が相次いで離脱【写真:荒川祐史】

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高谷は右肘関節炎、栗原は左肩関節前方脱臼で残る支配下捕手は4人だけの緊急事態

 2年連続の日本一を目指すソフトバンク。現在、宮崎・生目の杜運動公園で春季キャンプを行っている王者だが、第5クールに入って想定外の事態に襲われた。

 高谷裕亮、栗原陵矢と2人の捕手が相次いで離脱。しかも、1日のうちに、だ。

 高谷はキャンプ序盤から抱えていた右肘痛が悪化し、第4クール終了後に一時チームを離脱。キャンプ休日だった19日に福岡市内の病院でMRI・CT検査を受け、右肘関節炎と診断された。20日にキャンプ地に戻ったものの、今後はリハビリ組で患部の回復を待つことになる。

 工藤公康監督は36歳のベテラン捕手について、表情を曇らせながら、「時間をかけた方がいいということだったので、しょうがない。リハビリ組にいって、保存療法でやると聞いています」と語った。全治期間は明らかにされていない。今後の回復具合にもよるが、シーズン開幕までに復帰出来るかは微妙だろう。

 一方の栗原は、この日B組練習試合のJX-ENEOS戦に出場していた。アクシデントが起きたのは、その試合後。個別メニューの特守でノックを受けた際に左肩を負傷した。そのまま宮崎市内の病院へ直行し、CT検査を受けた結果、左肩関節前方脱臼と診断された。こちらも全治期間は明らかになっていないが、21日からはリハビリ組に合流する。

オフに山下斐紹と鶴岡慎也がチームを去り、支配下の捕手は6人の編成に

 危惧されていた事態だった。甲斐拓也が急成長を示した昨季のオフ、ソフトバンクから2人の捕手がチームを去った。山下斐紹がトレードで楽天へ移り、鶴岡慎也がFA権を行使して古巣の日本ハムへと復帰。一方で、捕手の補強はなく、支配下契約の捕手は6人。高谷、栗原、甲斐の他は2016年に育成から支配下に昇格した張本優大、3年目の谷川原健太、2年目の九鬼隆平の3人だ。

 今季は昨季同様に、高谷、甲斐を併用し、第3捕手に栗原を置いて経験を積ませることプランが有力だった。だが、このタイミングで1軍の捕手の枠を埋めるはずだった2人が一気に離脱。正捕手は甲斐が担うことになるが、控え捕手に不安がよぎる。2016年ドラフト3位の九鬼がこのキャンプをA組で送っているが、まだ2年目と経験不足は明らか。張本が最もファームでの経験があるが、こちらも1軍経験はない。甲斐にまで何かあったら、と想像すると、ゾッとしてしまう。

 突如、降って湧いた“捕手不足”の事態に、工藤公康監督は「痛いですよ、痛くて、痛くて…。ただ、怪我はトレーニングをやっていれば、表裏一体というか有り得ることなので」と語り、「前から期待は大きい。彼には頑張ってもらわないといけないというのは最初からあるんだけど。本来なら(甲斐が)1人でというのは目指すところで、早くなるけど、そういうところも考えてやっていかないといけないのかもしれない」と甲斐を固定して起用していく方向性も示唆した。

 その甲斐は侍ジャパンのメンバーに選ばれ、3月3日、4日のオーストラリア戦のために一時チームを離れることになる。九鬼をはじめ3人の捕手は、そこが大きなアピールのチャンスとなるだろう。ピンチをチャンスに変えられるか。王者ソフトバンクがオープン戦が始まる前に、まさかの緊急事態に陥った。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)