2018年1月12日に発売されてから、「LGBT」や「しまなみ海道」の記述に誤りがあるとの指摘が相次いだ『広辞苑』第7版(岩波書店)。とはいえ、当然だが何の問題もなく新たに掲載された言葉も多数ある。

約1万語あるという新掲載の言葉の中で、四国新聞や瀬戸内海放送(KSB)など香川県の地方紙やテレビ局がこぞって報じた言葉があった。容易に想像がつくかもしれないが――「讃岐うどん」だ。

「稲庭うどん」も新掲載

これまで『広辞苑』に讃岐うどんという言葉が掲載されていなかったのは意外だが、第6版を確認してみると、「讃岐」の項目はあるものの、その中に「讃岐うどん」はない。

「さぬきうどんってなんだっけ」と広辞苑を引くシチュエーションはあるのか(Ryosuke Sekidoさん撮影, Flickrより)

だが第7版では「讃岐」内に「讃岐うどん―讃岐饂飩」が追加されており、

「香川県特産のうどん。麺はこしが強く、太め」

とその食感にまで言及されている。今やうどんと言えば讃岐うどんと言えるほど周知されている言葉だけに、新掲載されたという事実にツイッター上でも驚きの声が挙がっていた。

だが、讃岐うどん一強気味ではあるものの、今や全国各地にご当地うどんが勃興している時代だ。

といった指摘もあり、他のうどんも掲載されているのか気になるところだ。日本うどん学会の公式サイトでは讃岐うどん以外によく知られているうどんとして、秋田の「稲庭うどん」、群馬の「水沢うどん」、三重の「伊勢うどん」、愛知の「きしめん」、奈良の「三輪そうめん」、福岡の「博多うどん」を挙げている。この中に掲載されているものはあるのか。

第7版を確認してみたところ、「稲庭うどん」「きしめん」の2つがあった。ただし、きしめんは第6版にも掲載されており、掲載順序で言えば讃岐、稲庭に先駆けていたわけだ。

ちなみにJタウンネット編集部近くには「武蔵野うどん」を提供する店があり、記者もよく通っているが、こちらも未掲載だった。あごだしの風味がおいしい長崎の「五島うどん」もない。『広辞苑』はグルメ情報誌ではないので、あらゆるご当地うどんを網羅することはないだろうが、「うちの地元のうどんは広辞苑にも載ってるぞ」と自慢できる日がくるかもしれない。

余談になるが、固有名詞としてのご当地うどんではなく、品名としての「きつねうどん(狐饂飩)」や「たぬきうどん(狸饂飩)」は当然、昔から掲載されている。その説明は

きつねうどん「甘辛く煮た油揚と刻んだ葱とを入れた掛けうどん」

たぬきうどん「揚げ玉と刻んだ葱とを入れた掛けうどん」

といずれも「刻んだ葱」へのこだわりが見られる内容だった。「油揚や揚げ玉だけじゃ、ちょっとさびしいんじゃないか。刻んだ葱くらいは入れよう」という著者の心遣い(?)が感じられる。