「インスタ映えする大手町の楽しみ方」とは? 箱根駅伝マニアによる箱根駅伝の細かすぎる楽しみ方、#1につづく2回目は現地観戦の方法だ。『あまりに細かすぎる箱根駅伝ガイド! 2018』も話題の「EKIDEN News」(@EKIDEN_News)メンバー、西本武司さん(@setagaya_1971)、駅伝マニアさん(@ekiden_mania)、ポールさん(@m_paul_paul)が、今日もディープに語り合う。

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インスタ映えする大手町の楽しみ方

――実際に箱根駅伝を見に行くときの楽しみ方を教えていただきたいのですが?

西本 まず大手町のスタートは一度は味わってみたいという人も多いと思うので、「インスタ映えする大手町のタイムテーブル」をざっと把握しておきましょう。朝6時にスタート地点に横断幕が張られ、オフィス街にスタートが出現。7時に読売新聞社の黒い壁にエントリー変更が反映された大きな模造紙が掲示。7時45分ごろ選手登場からの選手コール。そして8時スタート。この一連をすべて味わうためには、スタート地点読売新聞側に陣取る必要があります。当日は始発だとすでに人が集まっているので、僕らは毎年朝4時〜5時の始発前に大手町に集合して、スタートを待ちます。ただそこから先はそれぞれの楽しみ方が違うので、基本別行動です。


2006年のスタートシーン ©文藝春秋

マニア みんなで観戦とかはないですね。

西本 それぞれにテーマがあって、僕はレース展開によって、途中下車をしながら写真を撮っていくというもの。

マニア 僕は全区間・全選手を見たいというのがあって。

西本 マニアさんは鉄道マニアでもあって、どう移動すれば全区間見れるかを網羅している。実はこの本に入れたかったけど、入れられなかったもののひとつが箱根駅伝専用時刻表なんですよ。

監督車のGPS情報をチェック

マニア 移動が秒単位になっちゃうから無理なんですよね。ここは駅までダッシュで移動、次のポイントへは1km7分ペースでいいかとか。レース展開によって降りる駅も変わります。大迫傑(早稲田大学→現・オレゴンプロジェクト)が1区のスタートから飛び出したときは、追いつけないから、Bパターンで移動だ!とか。青学が優勝したとき(91回)と日体大が優勝したとき(89回)では20〜30分はタイムが違いますし。臨機応変に対応しないと全区間、全選手は見れないんです。最近は監督車にGPSがついていて位置が発表されるので、それをアプリでリアルタイムでチェックしながら、移動しています。

ポール 駅を降りてからコースまでの混雑状況もありますしね。ぼくは荷物もないし、身軽だからいいけど、お二人はいつもカメラや機材をかかえて走っているから大変そうです。

マニア 荷物は必要最低限にしぼっているけどね、走って移動してるときも、この駅には歩道橋があるけど封鎖されてるから渡れないとか。僕は大体インプットしてますけど。

西本 そうそう。いつもは通れるはずの道が通れなくなっていたり、地元の人も歩道橋あるからいいや、と思ってると封鎖されてるので注意してください。

マニア 逆にみんなが登れるいい歩道橋もあるんですよ。

西本 いい歩道橋(笑)。地元の方々の情報をもとにして、調べて今度載せたいですね。

「見るだけじゃない、選手に声をかけたいんです」

ポール 僕もマニアさんと同じで全選手を見たいんですが、見るだけでなく声をかけたいんです。母校の後輩とか、ずっと応援してきた選手に直接、声をかけたい。

西本 しかもポールさん、体でかくて、沿道の観客の中でも、あたまひとつ抜けているから、声が本人に伝わるんですよね。

ポール そうですね。でもただ声をかけるんじゃなくて、ここで声をかけたらあいつは絶対元気になる、っていう場所に行って声をかけたいんです。

西本 大手町のスタート直後は応援団や声援でかき消されて、声をかけても届かない。だからスタートのとき、ポールさんと僕はスタート裏でぶらぶら散歩してます(笑)。

ポール 僕は写真撮るわけじゃないので、最前列にいなくてもいいんです。だからニュースさんも持ち上げますし。

西本 そうそう、見えないときはポールさんがラグビーのリフトみたいにグンと持ち上げてくれる。

マニア 爆笑

西本 ロンドン世界陸上の競歩のゴールシーンを押さえようと、マニアさんを肩車して同じことをやったら、周りの外国人たちに「あいつら、クレイジーだ」って言われました(笑)。


見やすい場所を探したい ©文藝春秋

観戦は「いいカーブ」を狙え

西本 ひとつ現地で観戦するときのポイントがあって。これはマニアさんに教えてもらったんですが、「いいカーブ」を確保するといいです。テレビで見ると気づかないんですけど、レースの先頭は、まず中継車が来て、報道バスが来て、白バイがいて、それからやっと選手が来るんです。直線だと車の陰に隠れてほとんど選手が見えない。苦労して最前列を確保しても、ものの1秒で、誰が来たかも分からず通り過ぎて終わってしまうんです。

マニア それがカーブだと隊列が崩れますから。すごくきれーいに見えるんですよ。カーブのときは選手の足の筋肉も強めに出るので、かっこいい写真も撮れます(笑)。初心者におすすめするなら2区・9区の新子安のカーブですね。

西本 細かいカーブがあるので、複数のカーブで迎えうてる。京急線の新子安駅からも近いので移動も楽ですしね。

マニア しかも道路がめちゃくちゃ広いので、旗に邪魔されず、見やすくて、撮りやすい。車線が少ないほうが選手との距離が近いと思いがちですが、視界が遮られやすいので、観戦するなら広い道路のほうが見やすいですね。

西本 一番いいのは下ってきて、曲がるカーブだよね。

マニア それはありますね。藤沢の藤沢橋もいいんだけど、あそこは激戦区だからなあ。

ポール 6区はカーブで下ってるんだけど、勾配が急なので速すぎる(笑)。

西本 色々調べて自分だけの「いいカーブ」を見つけてほしいですね。あと、我々は現地観戦派ですけど、テレビでも十分楽しめるんですよ。これはあまり気づかれていませんが、日テレの中継はすごいんです。

マニア 完成しています。完成されすぎています。

日テレの中継はなぜすごいのか?

西本 1月1日のニューイヤー駅伝と、2日・3日の箱根駅伝、どちらが選手のレベルが高いかといったら、当然ニューイヤーなんです。じゃあ何が違うかというと映像技術。聞いた話によると12月のガキの使いの「笑ってはいけない」シリーズの収録には、日テレ系列局中のカメラがかき集められるらしいんです。そのカメラが、今度は全部箱根に行くらしい。とてつもない数のカメラが選手を追いかけるわけです。

 そして、各区間には襷わたしをする中継所だけでなく、固定中継ポイントがあるんです。そこで、先頭とのタイム差を1区間の中でも何回も確認できる。つまり、箱根駅伝はどこから見ても、すぐにレース状況が把握できるようになっているんです。それは色々な角度から撮影をしているわけです。

 あとは明らかに総合演出が効いてる。ここはこういう風に見せたい、感じさせたいという、スポーツ報道とは違うドキュメンタリー的な演出なんです。しかも1週間もたたずに「もうひとつの箱根駅伝」が放送されます。ちょっと映像編集をかじった人なら、わかると思うのですが、バイクや監督車などあらゆるカメラが撮影した10時間以上の映像をデジタイズするだけで、大変です。その映像をこの短時間でドキュメント番組にするなんて、ほんと素晴らしいですよ。

マニア ゴール前で待ってるとリハーサルやってますもんね。ADみたいな人が何度も何度も走って、繰り返しゴールシーンをやらされてるんですよ。そのたびに沿道から「がんばれ〜!!」って拍手が起きる(笑)。ゴールにリハーサルのあるレースなんて他にないです。


2017年の箱根駅伝を制した青山学院 ©文藝春秋

何てことないコーナーが「箱根遺産」に見えてくる

西本 カメラワークが徹底されているところも日テレの箱根駅伝の面白さなんです。毎回、同じ景色を同じように撮る。良い意味でマンネリにすることで、たとえば「高野コーナー」(2011年第87回大会で、早稲田の高野寛基が凍結気味の路面で転倒したカーブ)。「ローリング族禁止」と書かれた何てことない6区のコーナーが、突然「高野コーナー」として輝きを放つ。何でもないものが、「箱根遺産」に見えてくるんですよ。

ポール 一度見に行きたいと思っている人は、まずはテレビでじっくりと沿道の状況をチェックするといいですね。

西本 何も考えず、軽はずみに見に行ったら、観客の熱に圧倒されて何もできないまま終わってしまいますから。あっ、ここが空いてた。と思って、選手を待っていても、観客が突然、目の前で読売新聞の旗を振り始るから、何も見えなかったってことは「箱根あるある」ですからね。

マニア 確かにそうですね。

人の少ない穴場で観戦したい

西本 苦労して行ってみたけど人垣で見れなくて、よく分からないまま「なんだ箱根、何も見れないじゃん」って嫌になって帰ってくるのを僕らは一番懸念してるんです。そうやって箱根を嫌いになってもらいたくない。箱根駅伝の沿道には観戦歴何十年という猛者が「主」のようにいますから。行き当たりばったりに沿道に行かずに、まずは日テレの事前番組をしっかり見て、この辺は人が少ないなとか、あの場所に行ってみたい。と確認してから現地に行くとよりいっそう楽しめる(笑)。

マニア たしかに。あと、人がいる、いないも大切ですね。たとえば9区の横浜駅前は激混みです。ニュースさんが毎年観戦している5区の山中は人いないですよね。

西本 5区は小涌谷を越えると、空いてきます。僕は例年、箱根湯本駅からカメラをかついで大平台手前のヘアピンカーブ下くらいまで走っていきます。全選手が通過した後は下りながら写真をスマホに取り込んでいると、遠くの方で花火の音がするんですよ。ああ、ゴールしたか、と感慨にひたりながら湯本まで降りてきて、空きっ腹にサッポロビール(箱根駅伝好きはだいたいサッポロビールが好き)を飲んで、早川の河原で寝てます。


右から西本さん、マニアさん、ポールさん

マニア 箱根だけでなく、1月1日のニューイヤー駅伝から動いてますからね。ぼくら朝から飲まず、食わずですし。

ポール 食事のことは考えないですよね?

マニア 集中しすぎてて考えたこともない。

西本 僕ら、前日からニューイヤー駅伝のために、群馬-東京を往復してますからね。1月1日〜3日の駅伝3daysの移動距離はハンパないですから。往路、終わった後にサッポロビールを飲むとふらふらになるんです。

ポール 僕はゴール後は芦ノ湖で青学の友人から豚汁頂いたりしてますよ。

西本 マジで!? それ、知らなかった……。

構成/モオ 撮影/榎本麻美

 

(「文春オンライン」編集部)