ストーリーや音楽、キャストなどと一緒に映画を構成する要素の1つとしてVFX(視覚効果)があります。撮影した映像にコンピューターで合成処理・加工を行い、現実にはあり得ない状況を画面内で表現することができるというものです。かつての映画は、スタジオで撮影した映像と映画館で上映される映像に大きな違いはありませんでしたが、コンピュータ技術の進歩によって、今や画面内のほとんどをVFXによって合成・加工できるようになりました。以下のムービーを見ると、最近のハリウッド映画がどれだけVFX処理を施されているのかがよく分かります。

All Hollywood VFX Removed! What Movies Really Look Like - YouTube

日本では2013年に公開された「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」では、パイ少年がベンガルトラのリチャード・パーカーとボートで漂流する様子が描かれましたが……



海と空はもちろん合成です。



さらにトラも合成。つまり実際のスタジオではこんな感じ。



激しい嵐のなかで大波をかぶるシーンは、合成用のブルースクリーンで構成された真っ青なスタジオで撮影されました。



合成されるベンガルトラももちろん本物のトラではなく、全てCGで作られたものです。



パイの膝枕で眠りにつくリチャード・パーカー。息づかいやしぐさはまるで本物のトラのようですが……



もちろんこれもCGを合成したもの。スタジオでの撮影では、本物のトラの代わりに青いぬいぐるみを使用しました。



2016年公開の「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」で、崩れる建物から脱出するソーとキャプテン・アメリカのシーン。



実際はスタジオでの撮影で、背景は全て緑色になっています。



ソーがハルクと乗り物の上で戦うシーンでは……



乗り物がシンプルな舞台になっていて、スタジオの背景も青一色で、単に舞台をハンマーでなぐりつけるマントマンにしか見えません



2013年に公開された「ウルフ・オブ・ウォールストリート」は実在した株式ブローカーをモデルにした映画で、レーザービームやヒーローも出てこないので一見するとVFXは出番がないように思えますが、この作品も合成や加工をふんだんに行っています。



こちらはロケーション撮影での1シーンですが、作品内の時代設定や季節と現実が違うのもあり、大きく加工されています。



手前に映る枝や空、公園からの風景に建物も描き足し、さらに芝生まで塗り重ねられています。



港のボート乗り場を歩く男女ですが、なんと男女と床以外ほぼ全てが合成となっています。



実際のスタジオでの撮影の様子が以下の画像。左奥のスタジオ機材は丸ごと海になってしまい、右手の別セットもキレイに消されていることが分かります。



2013年公開の「ゼロ・グラビティ」は、宇宙飛行士が「最も忠実に宇宙空間を再現した映画だ」と評するほど、宇宙空間のシーンが素晴らしいと絶賛された作品ですが、宇宙空間はもちろんのこと、宇宙ステーション、宇宙服に至るまですべてが合成されています。



実際のスタジオでの撮影風景はこんな感じ。背景に映る地球や機材が、背後に設置されたモニターパネルに表示されています。宇宙服も本物とは形が全く違います。



宇宙服やアーム、ソーラーパネルはCGで作られており、さきほどのスタジオで撮影した映像に重ねます。



宇宙飛行士を演じるサンドラ・ブロック。宇宙空間での船外作業のシーンですが、真っ白なスタジオでの撮影です。



その映像に、宇宙服や機材、装置のCGを重ねます。



さらに背景に地球を合成して色調を調整すれば、実際に映画館で見る画面となります。



日本の東宝による本家「ゴジラ」シリーズは、ゴジラは着ぐるみに役者が入って演技したものを撮影するSFX(特撮)映画でした。



しかし2014年に公開された「GODZILLA ゴジラ」はSFXではなく、そのほとんどがVFXによって処理されています。たとえば橋にいる米軍兵がゴジラと遭遇するシーンでは、巨大なゴジラの背びれが映っています。



まず背景として空の雲や向こう岸をCGで作成。



さらに海を合成し、海に浮かぶ軍艦も重ねます。



その上からゴジラのワイヤーフレームを描き、表皮のテクスチャを貼り付けます。



そして水しぶきを付け足したら……



グリーンバックのスタジオで撮影した橋と米軍兵の映像を合成します。



背景の緑色を透過させて、上からフィルターをかけたり色調を調整したりすれば完成。この画面に映っているほとんどがコンピュータによって作り出されたものとなっています。



2015年に公開された「ジュラシック・ワールド」は恐竜を題材にしたパニック映画ですが、恐竜は現代には生き残っていないので全てCGです。



スタジオでのセット撮影なので背景は合成ではなく、実際の撮影では恐竜の帽子をかぶった人間が恐竜たちのおおまかな動きを行い、そこに恐竜のCGを重ねるという形でVFX処理が行われました。



また恐竜を増やすだけではなく、スタジオのセットをよりリアルにするためにもVFXは利用されます。一例として以下の画像は、スタジオで撮影した森林セットの映像です。



この映像にCGで大量の草を生やします。



草にテクスチャを貼り、さらに光の色や画面の明るさなども調整すると、うっそうと生い茂るジャングルができました。



2016年に公開された「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」では、バットマンとスーパーマンの死闘が描かれましたが……



もちろん本当に夜中のビルの屋上で撮影した訳ではなく、このシーンはグリーンバックのスタジオ撮影によるもの。さらにジャンプしてスーパーマンにキックを入れるバットマン役のベン・アフレックの体にはワイヤーアクション用のハーネスがとりつけられています。



ガチガチのパワースーツ型のバットスーツも……



もちろんCGを合成しています。ベン・アフレックの着ているタイツにはCG合成の基準となる印がプリントされていました。