終盤の84分についに均衡を破った小林。日本に大きな1勝をもたらした。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 E-1選手権の中国戦は、小林悠と昌子源がともに代表初ゴールを決めて2対1での勝利。これで北朝鮮の勝利に続いて2連勝。日本は2大会ぶりの優勝に向けて王手をかけることができた。

 
 この日の日本は、北朝鮮戦からスタメン7人を入れ替えて臨んだ。序盤から押し込んでいただけに、早い時間帯で先制ゴールを奪えれば、苦しい展開にはならなかったと思うけれど、ゲームメイクの起点となっていた大島僚太が前半途中で負傷離脱するアクシデントが重なった。それでもボールポゼッション率で上回り、シュートも中国の2倍以上の本数を打っていたのだから、ゴールに対する意識の高さは十分に感じることができた。見方を変えれば、決定力不足に苦しんだとも言えるけれど、急造チームゆえ“呼吸”が合わないのだから、最後まで決定力不足に苦しんだのも致し方なしといったところか。
 
 ベタ引きの北朝鮮とは違って、中国が組織立ったディフェンスをしていたのも、日本が苦しんだ要因のひとつだろう。中国の攻撃を見ても、なかなか迫力があった。時折見せた右サイドからの攻撃にも、スピード感があったし、対峙していた山本脩斗が最後にPKを与えてしまったプレーに表われていたが、彼らのスピードに乗った攻撃には怖さを感じた。19、20歳の選手を中心とした構成ながら隙のないチームを作るあたりは、さすが名将リッピ監督だと感心させられた。

【PHOTO】日本2‐1中国|小林、昌子の代表初ゴールで2連勝!
 日本はそうした相手の隙のない守備や鋭い反撃に遭いながらも、しっかりと勝ち切った点は評価できる。チーム最年長の今野泰幸が最後まで走り回っていたのは印象的だったが、選手たちの強い気持ちが感じられたゲームだった。
 
 さらに特筆すべきは、小林がゴールを決めたことだ。国内組を中心としたこのチームにおいて、Jリーグトップスコアラーの小林がエースFWの立場にいることは、誰の目から見ても明らかだ。今大会の彼の起用法を見ても、初戦から2試合連続でスタメン起用されている小林が、ハリルホジッチ監督から大きな期待を寄せられていることも十分に伝わってくる。1試合遅れながら、指揮官の期待に応えてみせたのだから、小林はやはりエースFWとなりえる選手だと思うし、当の本人もひと安心したんじゃないかな。
 
 もちろん、小林がこの1点でロシア行きのチケットを手にいれたわけではない。海外組が不在で、なおかつ浦和レッズ組もいない。セカンドグループのなかでひとつ目の結果を出したにすぎない。トップグループの輪のなかへと入っていくには、さらに強烈なインパクトを残すことが必要だ。
 次の韓国との第3戦は優勝をかけた一戦となる。まさに勝負どころのゲームで誰が“個の力”を発揮しアピールするのか。それこそがこの大会の一番のポイントになる。そこでチャンスを掴めなければ、候補止まりで終わってしまう。
 
 現状、チームの骨組みとなるメンバーは決まっているはずだ。半年前の段階でまだ決まっていなかったら、それこそ大問題だ。23人中19、20人くらいは決まっているとして、最後の椅子を手にするのは、今回のメンバーの中から3、4人といったところだろう。
 
 先月の欧州遠征メンバーから外された本田圭佑や岡崎慎司、香川真司だって調子を上げている。どう考えても、チャンピオンズ・リーグであのレアル・マドリーとの試合にスタメンで出場している選手が入らないはずがない。厳しい言い方かもしれないけれど、今回のJリーグ組は、ワールドカップ最終予選を戦ってきたトップグループと同じ土俵にあるとは言えない。
 
 だからこそ、代表チーム内の“序列”を覆すためには、誰もが納得するほどの分かりやすい“結果”を出すしかない。2013年大会で柿谷曜一朗が3試合で3ゴール・1アシストを奪って、そのまま翌年のブラジルへの道を切り開いたが、今大会を通して3試合で2点取れたら十分だろう。次の相手はライバル韓国。2大会ぶりの優勝が懸かった大一番でゴールを決めることができたら、ワールドカップのメンバー入りはぐっと近くはずだ。