イラク戦の教訓は生かされるのか(撮影:PICSPORT)

写真拡大

24日、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は31日オーストラリア戦、5日サウジアラビア戦に臨む日本代表27人を発表した。

「最近は批判なども耳に入ってきてます」「批判が多ければ多いほど、私はそれに応えるために強くなります」

ハリルホジッチ監督はそう言って胸を張ったが、説明の中には批判を呼ぶ2つの不安要素が転がっていた。

まず戦い方。監督は日本代表のサウジアラビア戦での戦い方を「たくさん、そして速く走って」戦うと言う。だが、ナイトゲームとはいえ、8月31日に走力を90分間維持できるだろうか。イラク戦が引き分けに終わったのは、暑さに対する配慮が足りず、選手たちのエネルギーが切れたからではなかったのか。

日本人だから日本の気候に慣れているので、オーストラリアの選手より走れるだろうという考えもあるかもしれない。だが、海外で活躍する選手が増えている現在、帰国した選手は湿度も気温も高い状況になれなければいけない。しかも選手が全員揃うのは火曜日の予定なのだ。

試合序盤から飛ばしすぎて終盤に足が止まり、オーストラリアのパワーにやられてしまった2006年ワールドカップの戦いが再現される危険性を感じずにはいられない。

もうひとつは、攻撃を担う選手たちのコンディションだ。選手選考の標準的な考え方は、各ポジションに2名ずつ、GK3人の合計23人。今回、4人多く招集しているのは、監督が選手のコンディションに自信が持てないからだろう。

監督が迷っているのは、3人ずつ選んでいる、攻撃的MF、FWの3つのポジションということになる。ではそのポジションの選手と直近リーグ戦のおおよその出場時間は次のとおり。

【攻撃的MF】
香川真司(5分)
柴崎 岳(75分)
小林祐希(75分)

【右FW】
本田圭佑(32分)
久保裕也(45分)
浅野拓磨(90分)

【センターFW】
大迫勇也(0分)
岡崎慎司(75分)1ゴール
杉本健勇(90分)1ゴール

【左MF】
原口元気(15分)
乾 貴士(90分)
武藤嘉紀(90分)

各ポジションの一番上の選手のコンディションに不安があるため、あとの2人の選手を呼んでリスクを減らしたかったのだろう。

ところが、この攻撃を担うポジションに選ばれている12人のうち、11人が海外組だ。10時間以上のフライトを経て日本に帰国し、火曜日と水曜日の全体練習の後、木曜日の大切な試合に臨むことになる。これが安全策と言えるのだろうか。

監督は「代表でプレーするコンディションにあると感じた選手」を呼んでいると言うが、これほど国内組が少ないのはなぜか。たとえば金崎夢生は20日の試合で1アシスト1ゴール。小林悠は19日の札幌戦で決勝ゴールを奪い、メンバー発表の前日、ACLの川崎vs浦和で2ゴールを決める大活躍を見せている。Jリーグの得点王争いトップを走る興梠慎三という手もあったはずだ。

もっとも、この「縦に速い」戦い方も、海外組の選び方も、これまでのハリルホジッチ監督の流儀と何も変わっていない。今回も自分を貫いて勝利をもたらそうと考えているのだろう。

この頑なな姿勢は「信念」か、あるいは「頑迷」さの現れか。オーストラリア戦の結果ではっきりする。

【日本蹴球合同会社/森雅史】