マーリンズ・イチロー【写真:Getty Images】

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捕手との“名勝負”に爆笑…72キロ超遅球にアメフトばり小刻みステップ「これは最高だ!」

 米大リーグ・マーリンズイチロー外野手は26日の敵地レンジャーズ戦に「6番・右翼」で先発。3年ぶりの対決となったダルビッシュ有投手から適時二塁打を放つなど3打数2安打1打点、3四球3得点と大活躍した背番号51だが、18-8と大量リードした9回に敵軍が捕手を登板させた前代未聞の“名勝負”で繰り出した“ハッピーフィート打法”が米解説者に絶賛されている。

 久しぶりの先発出場で大車輪の活躍を見せたイチローも、思わず笑みがこぼれてしまうシーンが9回にやってきた。

 先発ダルビッシュが10失点炎上するなど投壊し、相手のジェフ・バニスター監督は投手陣の消耗を避けるため、捕手のブレット・ニコラスをマウンドに送り込んだ。

 そして、背番号6は炎上した。先頭のスタントンから4連打であっという間に3失点。ここで、背番号51が打席に入った。

 すると、マイアミで中継している「FOXスポーツ・フロリダ」の実況陣はニコラスの投球に盛り上がっていたが、「これは個人的に興味深いですね。イチローです」と大注目。しかし、さすがのイチローもキャッチボールのようなスローボールの連発にタイミングが合わず。2球目の時速56マイル(90キロ)のカーブはファウルで2ストライクに追い込まれてしまった。

希代の安打製造機がプライドかけた左前打、解説者「イチローの笑顔を見てください」

 イチローは打席で苦笑いを隠し切れない。かつてドジャースで新人王を獲得した解説者のトッド・ホランズワースは「2ストライクです。ニコラスは僕が殿堂入り選手を三振に抑えられるかもと思っているかもしれませんね」と悪ノリ。実況も「イチローは苦しんでいますね。打者の世界で56マイルのボールなんて存在しませんからね」とうれしそうに続けた。

 そして、ニコラスは4球目に45マイル(72キロ)の“超遅球”を投じた。しかし、イチローはタイミングを合わせ、レフト前にヒットを放った。

 実況は「イチローはレフトにライナーでヒットです。イーファス(超スローボール)だ」と爆笑しながら絶叫。ホランズワース氏も前代未聞の対決に大笑いだった。

イチローの目を見てください。時速45マイルですよ。見てください。彼はバッターボックスから一度走り出そうとしたのです! ハッピーフィートを見てください。これはいい! これは最高だ! 絶対に三振はできない、そんなことは絶対に起こさない、という感じのバッティングでしたね。ライナーを見るイチローの笑顔を見てくださいよ」

あまりの遅さに小刻みに3度ステップ、繰り出した前代未聞の“ハッピーフィート打法”

“72キロの魔球”に対応したイチローの打法は、前代未聞だった。

 あまりの遅さに一度は右足に体重移動したが、バックステップを踏みながらスイング。この瞬間、3度、左右の足でステップを踏んでいるように見える。「ハッピーフィート」とはアメフトなどでクォーターバックがスロー直前に相手をかわすために見せる細かいステップだった。

 史上30人目のメジャー通算3000本安打を放った男が捕手に打ち取られたとなれば、確実にニュースになる。ひょっとするとテレビの解説陣もレジェンドをいじりたい気持ちになっていたかもしれない。

 絶対にヒットを打たなければいけない、希代の安打製造機のプライドをかけた局面で飛び出した仰天のハッピーフィート打法。イチローも打った瞬間に笑顔がこぼれるのも無理はなかった。

 マーリンズ史上最多22得点を記録した乱打戦。イチローのバットに不可能はない。背番号51の伝説の一打は、テキサスの夜を大いに盛り上げていた。