日本の伝統食である「米」を使った洋食といえば「ピラフ」「パエリア」「リゾット」が思い浮かびます。いずれの料理も、お米を炒めたり、炊き上げたりする点は共通ですが、改めてその違いを考えてみると、正しく答えることは困難かもしれません。

 オトナンサー編集部では、ピラフとパエリア、そしてリゾットの違いについて、日本洋食協会の岩本忠会長に聞きました。

日本のピラフはチャーハンに近い

 まず、ピラフはトルコ料理の「ピラウ」やウズベキスタン料理の「プロフ」が原型とされ、どちらも「煮た米と肉」を意味します。生米を肉や野菜、香辛料と一緒にバターで炒め、スープを加えて炊き上げるのが特徴です。現在でもトルコやインド、中央アジアなどでは定番料理として親しまれ、羊の肉などを具材に干しブドウやヨーグルトをトッピングします。

 ピラフは欧米を含む世界中で食べられていますが、インディカ米が一般的ではない日本で普及しているピラフは、日本人好みにアレンジされたもの。「ピラフは本来、炒めた米にスープを加えて炊き上げますが、日本では炊いた米を炒めることが多く、チャーハンに近い手順と言えるでしょう」(岩本さん)。

 次に、パエリアはスペインに稲作をもたらしたアラブ人によって9世紀前後に発明された料理と言われます。パエリアはバレンシア語で「フライパン」の意味。両側に取っ手がついた、平底の浅くて丸いフライパン「パエジェーラ」を使って生米と具をオリーブオイルで炒め、スープとサフランを加えて炊き上げます。

 具材は白身魚やエビ、ムール貝などが有名ですが、スペインのバレンシア地方ではウサギ肉や鶏肉、インゲンなど山の幸を使ったものが主流です。

米を炒めて炊き上げるのは共通だが…

 リゾットはパエリアの製法に由来する説や、アジアから入ってきた米食文化がイタリアの食文化と融合してできた説など、その誕生には諸説ありますが、現在のイタリアではどのレストランでも出される定番メニューです。

 深鍋を使って米と具材をニンニクと油で炒めた後、白ワインや野菜のだしを入れて炊き、米がアルデンテの状態まで煮立てて完成させます。

 つまり、ピラフとパエリア、リゾットのいずれも米を炒めてスープ(だし)で炊き上げる点は共通ですが、大きく異なるのは以下のポイントです。

・ピラフは炊き込む際にフタを使用する。食感は米の種類にもよるが、日本の炊き込みご飯に近い

・パエリアは炊き込む際にフタを使用しない。最初にスープを全部入れて炊き上げ、パリッとした焦げを作るのも特徴

・リゾットも炊き込む際にフタを使用しない。少量ずつスープを加えて作り、ねっとりとした食感が特徴

(※それぞれ、フタを「する/しない」は店舗によって異なる場合もある)

「いずれも海外発祥の料理であり、日本米ではなく現地の米がよく合います。粘りが強い日本米は基本的に炒め物に向かないのです。ただし、日本のピラフやパエリア、リゾット、またチキンライスやガーリックライス、チャーハンなどは、本場と遜色ない技術とアイデアによって作られています」

(オトナンサー編集部)