「バック・トゥ・ザ・フューチャー」でわかる因果推論
◎メタボ健診を受けていれば健康になれる
◎テレビを見せると学力が下がる
◎偏差値の高い大学に行けば収入が上がる
一見正しそうに見えるが、実はこれらの通説は経済学の有力な研究ですべて否定されている。ここでいう「メタボ健診」と「健康」のように、「2つのことがらが因果関係にあるかどうか」を調べる方法のことを「因果推論」(いんがすいろん)と呼ぶ。
この因果推論の考えかたを一般書で初めて紹介した書籍『「原因と結果」の経済学』 が全国の書店で話題。毎日新聞朝刊、日経新聞朝刊に書評が掲載され、池上彰氏も「私たちがいかに思い込みに左右されているかを教えてくれる」と推奨。
どうすれば、ある2つのことがらが因果関係にあるといえるのだろうか。『「原因と結果」の経済学』から、一部を特別に抜粋する。
因果関係を証明するのに必要な
「反事実」とは
ある2つの変数のあいだに因果関係があると言うためには、「まったくの偶然」(第13回)「交絡因子」「逆の因果関係」(第14回)の3つが存在しないということを証明しなければならない。
では、どのように証明すればよいのか。その方法が、現実と「反事実」を比較することだ(注1)。
反事実とは「仮に○○をしなかったらどうなっていたか」という、実際には起こらなかった「たら・れば」のシナリオのことを指す。
現実に起こったシナリオを「事実」というのに対して、事実と反対のことを思い浮かべるという意味で、「反事実」という。
私たちは日常生活でも、こんな風に考えることがあるはずだ。
「あのとき、この会社に転職していなかったら、今の収入はどうなっていただろう」
「あのとき、彼と結婚する決意をしていたら、今頃私はどんな生活をしていただろう」
かつて、フランスの哲学者であるブレーズ・パスカルはこう言ったといわれる。
「クレオパトラの鼻がもう少し低かったら、世界の歴史は変わっていただろう」
これらはまさしく反事実の考えかただ。
因果関係の存在を証明するためには、原因が起こったという「事実」における結果と、原因が起こらなかったという「反事実」における結果を比較しなければならない。