歌舞伎のメイク『隈取』について、化粧師の島田さん教えて!

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歌舞伎といえば、顔を白く塗って赤で力強い線を描いたあの独特の化粧、「隈取(くまどり)」が思い浮かぶ人も多いはず。そんな「隈取」は、ただインパクトがあるだけじゃない。そこにはきちんと意味があるそう。そこで、化粧師(けわいし)であり和粋伝承人である島田史子(しまだちかこ)さんを訪ね、「隈取」について教えていただきました。

◆「隈取」にはどんな意味があるの?


歌舞伎を象徴する「隈取」ですが、これは、顔の筋肉や血管を強調したお化粧法で、人物の役割や感情を表現しています。赤色の線を描く印象が強いのですが、ほかに青色(藍色)、数は少ないのですが茶色(代赫色)もあり、役柄によって以下のように描き分けます。

<色の描き分け>
[赤色]…正義や勇気を表し、善を意味します。
[青色]…冷酷さを表し悪を意味していて、敵役に用いられます。
[茶色]…鬼や妖怪など、人間ではない役に使われます。

「隈取」が使われる舞台は主に、歌舞伎を娯楽として楽しんだ江戸時代に起こった出来事を昔の時代に書き替えて描く「時代物(じだいもの)」の演目です。その柄は100通りぐらいあり、演目によって一つひとつ違います。さらに、同じ演目の中でも、場面によって少し変えられることもあります。また、役者の顔立ちや顔の大きさによってわずかに太くしたり細くしたり、舞台映えするようアレンジされる場合もあります。

◆「隈取」を描くときにどんな道具を使っているの?


道具については、お化粧の手順を踏まえてご紹介します。

<お化粧の手順>
1)おしろいののりをよくするため、そして毛穴から汗が吹き出ないようにするため、まずはじめに鬢付(びんつけ)油を顔全体に塗ります。
2)おしろいを刷毛で塗ります。
3)最後に紅で「隈取」を描きます。

「隈取」を描くときは、筆で縁取って指でぼかす、時間があるときは筆で描く、早変わりのときは指でささっと描くなど、その時々の状況や役者の好みによってそれぞれです。歌舞伎の世界では「隈取」を“描く”、ではなく“取る”と言います。

そんな「隈取」のエピソードを1つ。役者が舞台を終えた後、顔を絵絹などに押しあてて顔拓を取る「押隈(おしぐま)」というものがあります。そこに公演日と演目名、役者の名前などを入れ、舞台鑑賞の記念にご贔屓に差し上げます。

◆実は、歌舞伎で使っている紅は現代のメイクにも活かせます


歌舞伎で使用している紅は、口紅はもちろん、頬紅やアイシャドーとして、普段のメイクにも活かせるんです。実際に染五郎さんも使用されている「擽紅(らくべに)」を例に、その使い方をご紹介します。血色がよく見えて明るく健康的なイメージを与えてくれるのでおすすめです。

■チークとして
少量を薬指先にとり、頬骨の一番高いところからこめかみに向かって3箇所ぐらいにのせ、円を描くようにぼかしてなじませます。よりナチュラルに仕上げたい場合は、ぼかしたチークの上からフェイスパウダーなどで軽く押さえます。

■アイメイクに
少量を薬指先にとり、まぶた全体にぼかすようにしてなじませ、その上からいつものアイシャドーを重ねて使います。浴衣や着物のときは紅を筆にとり目尻に引き、アイライナーとして使うと女性らしく艶っぽく見えます。

【擽紅とは?】
市川染五郎さんとともに島田史子さんがプロデュースした紅。艶やかな発色が特徴。「色合いと描きやすさに、まるで『くすぐられたような気分』になり自分の理想となる顔に変身していきます」(市川染五郎談抜粋)
東京・東銀座にある「歌舞伎座」の木挽町広場の和のセレクトショップ「蘭蝶」で買うことができます。

◆歌舞伎は意外とみなさんの身近にあるものだから気軽に楽しんで


江戸時代、歌舞伎は庶民のお楽しみだったんです。それは、今、私たちが楽しんでいるミュージカルやお芝居と同じで、江戸時代のエンターテインメントの1つでした。「助六寿司」や「幕の内弁当」などのように、普段の生活でよく聞く言葉で歌舞伎にちなんだものがたくさんあります。意外とみなさんの身近なところに歌舞伎はあるんですよ。ぜひ気軽に楽しんでみてはいかがでしょう。

<島田さんプロフィール>
化粧師、和粋伝承人。歌舞伎役者、九世澤村宗十郎の番頭として23年間を経て、現在はエステサロン「まゆ月」の代表取締役。サロン経営のかたわら、化粧師として国内外で講演を行い、和粋伝承人として、歌舞伎界界の話はじめ和装に合うメイクや自分でできる髪の結い方など、講座を開いて日本の伝統文化の楽しみ方を伝えている。



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