1

By Liam McManus

高度1万メートルを飛行中だった乗員乗客およそ20人という小型のビジネスジェット機が、世界最大の旅客機・エアバス「A380型機」の作った乱気流に巻き込まれてコントロールを失い、あわや墜落という事態に陥っていたことが判明しました。ビジネスジェット機は空中で最大で5回も回転(ローリング)し、一気に高度を3000メートルも落としたにもかかわらず、奇跡的にコントロールを取り戻して無事に着陸していますが、数名の負傷者が発生しています。

Accident: Emirates A388 over Arabian Sea on Jan 7th 2017, wake turbulence sends business jet in uncontrolled descent

http://avherald.com/h?article=4a5e80f3

Jet caught in the wake of a superjumbo nearly crashes | Daily Mail Online

http://www.dailymail.co.uk/news/article-4337974/Jet-caught-wake-superjumbo-nearly-crashes.html

この事故に巻き込まれたのは、ドイツ・ミュンヘンの航空会社MHS Aviationが運航していたボンバルディア(旧カナディア)の「チャレンジャー600」型機です。1978年から現在に至るまで生産が続くロングセラー機で、世界中でビジネスジェットとして広く運用されています。実際に宙返りの事態に巻き込まれたのは、以下の写真に写っている機体記号「D-AMSC」の機体です。



By Mark Murdock

事故が発生したのは、2017年1月7日です。ドバイからシドニーに向けてフライトを行っていたエミレーツ航空のEK-412便(A380型機)がオマーンの首都マスカットの南東約1170kmの沖合を高度3万5000フィート(約1万600メートル)で巡航していたところ、同機のパイロットが1000フィート(約300メートル)下方を反対方向から飛んでくるMHS AviationのMHV-604便(チャレンジャー604型機)を確認しました。そのまま両機は300メートルの高度差を保ったまますれ違ったのですが、その直後にビジネスジェットは大きく姿勢を乱してしまいました。

その様子を図解したのが以下のイラスト。高度差1000フィート(約300m)でA380型機とすれ違ったチャレンジャー604型機はその1〜2分後、A380型機の翼が巻き起こす強い乱気流に巻き込まれ、機体の安定を失いました。その威力は機体は完全に裏返してしまうほどで、チャレンジャー604型機は少なくとも3回、おそらくは5回におよぶローリング(回転)状態に陥りました。以下のイラストでは機首を上げて「バック宙」のような状態になった様子が描かれていますが、事故報告書には機体の前後軸を中心に回転する「ロール」方向の回転が生じていたと記載されていることからも、バレルロールに近い動きを行っていたようです。



またこの時、機体は大きく高度を失って一気に1万フィート(約3000メートル)も降下しています。しかしその後、奇跡的に機体コントロールが回復し、通常の飛行に復帰することができたとのこと。機長はすぐに緊急事態を宣言し、最寄りのマスカット国際空港にダイバートして緊急着陸を実施。数名の乗客が病院へと運ばれ、うち1名は重傷だったそうです。また、機体にも修理が必要なダメージがおよんでいたそうです。

飛行機の翼が生みだす乱気流は後方乱気流と呼ばれ、空気の強い下降流(ダウンストリーム)と上昇流が渦となって発生する現象です。この乱気流は機体が大型になるほど強くなり、A380型機のような機体が空港を離陸した後は、事故を避けるために5分程度の間隔を空けることが定められています。

A380が生みだす後方乱気流を捉えたムービーがコレ。幅80メートルにも及ぶ大きな翼による空気の渦が生じており、雲の形を変えてしまうほど。およそ20人乗りのチャレンジャー604型機が遭遇するとひとたまりもないことは容易に想像がつきます。

Emirates A380 CLOUD CUTTING - YouTube