女性誌『Suits WOMAN』で注目を集めた「貧困女子」。これは、普通の毎日を送っていたのに、気がつけば“貧困”と言われる状態になってしまった女性たちのエピソードです。

 今回、お話を伺ったのは、都内の社員食堂でアルバイトとして働く木村悠里さん(仮名・34歳)。都内の私立大学を中退してから、雑貨輸入販売会社に勤務します。しかし5年でその会社が倒産。派遣社員をしながら、夢であったカフェ開店の資金を貯めるために派遣社員として勤務を続けますが、祖母の介護のために仕事を辞めます。

170cmを超える大柄な体型、有名なファストファッションの黒のダウンジャケット、毛玉が付いたグレーのニットにデニムというファッションです。体型はかなりぽっちゃり目。目を強調するようなメイクが印象的です。バッグは真っ赤な合皮のトートバッグで、話題の映画『LA LA LAND』の主人公・ミアが持っていたものにそっくりです。

現在の収入は手取りで月10万円程度。まずは仕事について伺いました。

「今は都内の工事現場にある社員食堂で働いています。時給は1000円で、朝8時から13時までの5時間。基本的に専業主婦の人が扶養の範囲内で働くことを想定している仕事だから、長い時間働けないんですよ。私は朝8時の仕込みから出られるので、重宝されています。お子さんがいる人は、どうしても9時とか10時入りになるじゃないですか。交通費は一律で700円出るのですが、その節約のために片道5kmを原付で往復しています。今は寒いからホントに辛い」

自宅はボロボロの一戸建て。狭く、汚く、臭い……

火〜土の週5で出勤し、午後15時に家に帰って、母親と交代して祖母の世話をしているそうです。

「私が帰ると、母はチェーン店の居酒屋の厨房の仕込みの仕事に出て行って、21時くらいに帰ってきます。祖母は認知症で、誰かが見ていないと徘徊したり、コンロに火をつけたりしちゃうんですよ。ホントに危ないんですよね」

悠里さんの家は、埼玉県との県境にある足立区のエリアにある、築約50年の一戸建て。都内にある実家に住んでおり、家賃を払う必要がないというのは、一人暮らしをしている人にとってはうらやましい話ですが……。

「都内といっても、最寄り駅までチャリで20分ですからね。それに、すごく古くてボロボロの建売住宅ですよ。1階は6畳とキッチン、お風呂場とトイレがあり、2階には4畳半と6畳。狭いし汚いし寒いから、家とも呼べません。この前、給湯器が壊れて、この季節なのに水しか出なくて3日くらい水で頭を洗っていました。あれはホントに困りました」

水シャワーで頭を洗っているとき、わけもなく涙がでたといいます。

「給湯器を買い替える時に、なんとなくひらめきで家の資産価値を調べたら、600万円でした。でもそれは、土地の資産価値であって家の価値は無価値。一度もリフォームしていないし、売るには200万円くらいかけて家を撤去しないと土地は売れないそうです。路地の奥だから買い手も見つかりにくい現実を知りました」

給湯器の買い替えは40万円ほどかかります。その費用はどこから出たのかと聞いてみました。

「祖母の年金です。母がガッツリ管理しているので金額はわからないのですが、月10万円はもらっているはずです。母はホントにお金に汚い女で、私を介護要員にして家に縛り付けているくせに、お金も払わないし、家にいないと不機嫌になるし。特にここ数年は、私がヘアサロンに行ってヘアスタイルを変えると“あら〜若い人はいいわね。色気づいてとてもかわいいわよ”など嫌味たっぷりに言うんですよね。新しい服を買うと、またいろいろとひがみっぽいことを言われるから、黒とかグレーばかり着ています」

家が寒いから、甘いものが欲しくなる。食べながら眠ってしまうこともあるとか……。

 母も毒親の被害者だった、父親から受けた苛烈な支配と虐待とは?〜その2〜へ続きます