普通列車のなかには、新幹線や特急並みに長い距離を走るものも存在します。2017年3月のダイヤ改正で、それらの列車に動きがありました。また少々、妙なことになっています。

「距離」最長の普通列車、区間が縮まる

「普通列車」というと、その多くは運行区間がそれほど長くなく、したがって運行時間も短めですが、全国には200km以上の比較的長い距離を走る普通列車も存在しています。

 2017年3月4日(土)、JRグループがダイヤ改正を実施しました。通常、ダイヤ改正というと新幹線や特急列車の動向に注目が行きがちですが、普通列車にも変化が生じています。今回の改正では「日本最長距離を走る普通列車」にも動きがありました。

369M列車をはじめ、山陽本線の岡山・広島地区で普通列車に使われている115系電車(2014年12月、恵 知仁撮影)。

 2017年3月3日(金)まで、日本最長距離を走る定期の普通列車は、山陽本線の「369M列車」でした。岡山駅を16時17分に出発し、福山、広島、新山口など途中の82駅すべてに停車。終点の下関駅へは23時50分に到着します。7時間33分かけて384.7kmを走破する列車です。

 しかし、山陽本線の西条〜八本松間に寺家駅(東広島市)が開業したことなどが影響してダイヤに変化が生じ、3月4日(土)からこの369M列車は、行き先は下関駅のままながら、始発が岡山駅から糸崎駅(広島県三原市)に移ってしまいました。その結果、走行距離は297.2kmに短くなっています。

 369M列車は2016年3月26日のダイヤ改正で誕生しましたが、そのわずか1年後、運転区間が短くなったことで、「日本最長距離を走る普通列車」は北海道の「2427D列車」に変わります。

「日本最長距離を走る普通列車」は乗りたくても乗れない「幻の列車」?

 2427D列車は根室本線の滝川駅(北海道滝川市)から釧路駅(同・釧路市)までを走る普通列車です。369M列車が運行されていた1年間は、距離こそ日本一ではなかったものの、8時間21分という運行時間は、定期の普通列車では最長でした。

根室本線など北海道の普通列車に使用されているキハ40形ディーゼルカー(2007年2月、恵 知仁撮影)。

 この列車は2017年3月4日(土)のダイヤ改正後も存続。滝川駅を午前9時42分に出発し、富良野駅や新得駅を経由。帯広駅で札幌発釧路行きの特急「スーパーおおぞら5号」に抜かれたのち、さらに東へ進み、終点の釧路駅には18時01分に到着します。

 所要時間は今回のダイヤ改正で2分短縮されて8時間19分になりましたが、やはり日本一です。移動距離も、山陽本線369M列車の運転区間が糸崎〜下関間の297.2kmに短くなったいま、308.4kmを走破する2427D列車が最長になりました。

 しかし、これはあくまでダイヤや時刻表での話。実際は、2016年8月以降に相次いだ台風被害により、2427D列車が通る根室本線の東鹿越〜新得間41.5kmはいまも不通であり、列車運転再開のめどが立っていない状況です。

 つまり現状、定期列車で「日本最長距離を走る普通列車」は、ダイヤでは根室本線の2427D列車、実際に乗ることができるのは山陽本線の369M列車となります。

黒磯〜熱海間などの上野東京ラインに使われているE231系電車(写真出典:photolibrary)。

 ちなみにこの2本のほかにも、長距離の普通列車は毎日走っています。たとえば熱海〜黒磯間、旭川〜稚内間、敦賀〜播州赤穂間、出雲市〜岡山間、豊橋〜上諏訪間などです。今回のダイヤ改正では高尾〜長野間245.0kmといった新しい「長距離鈍行」も誕生しています。

【地図】「日本最長距離を走る普通列車」の運転区間

2427D列車の運転区間は根室本線の滝川〜釧路だが、現状は途中の東鹿越〜新得間が不通になっている(国土地理院の地図を加工)。