トランプ政権の政治的理念、政策面の最高参謀とされるスティーブ・バノン大統領首席戦略官がついに公開の場に姿を表わし、トランプ大統領が推進する政治の特徴を雄弁に語った。

「トランプイズム」とも呼ばれるトランプ氏の政治的理念は、リベラル派が好む「大きな政府」の解体を目指し、アメリカ合衆国の国家主権や国民の利益を最重視することが特徴なのだという。

知る人ぞ知る政治活動家だったバノン氏

 2月23日、バノン氏は首都ワシントン近郊で開かれた保守系政治組織の「政治活動会議」の全米大会に登壇した。

 選挙戦中にトランプ陣営の選対本部長を務めたバノン氏は、ホワイトハウスで「首席戦略官」という従来の大統領府にはなかった地位に任じられた。常に大統領の傍につき、内政、外交の両面で助言を与え、国家安全保障会議の常任メンバーも兼務するポジションである。

 いま63歳のバノン氏は、保守的なオンラインニュースサイト「ブライトバート・ニュース・ネットワーク」(以下、ブライトバート)の会長や社長を長年務めた。「ブライトバート」は草の根の保守派に支持されるニュースや評論で知られ、全米で5000万近くの読者がいるという。

 キャリアの出発は海軍士官で、駆逐艦乗務や国防総省勤務を重ねたが、退役後はハーバード大学で経営学修士号を得て、ゴールドマンサックスにも務めた。ブライトバートの経営に成功しただけでなく、多岐なメディア事業への投資でも巨利を得てきた。

 バノン氏はこれまで一般の知名度こそ低かったが、政治の世界では知る人ぞ知る、有名な活動家だった。2016年8月よりトランプ陣営の選対本部長となり、トランプ氏を勝利に導いた。

「新たな国家的経済システムが必要」

 この日の政治活動会議で、バノン氏は進行役の質問に答える形で、就任から1カ月を迎えたトランプ大統領の理念や信念、施策などについて25分間ほど語った。

 バノン氏の発言の骨子は次の通りである。

「トランプ氏の長所は当初の方針を決して曲げないことだ。大統領に就任してから、多くの人たちが妥協するよう勧めたが、本人は『アメリカ国民に誓ったことは変えられない』と明言し、公約を必ず履行すると強調している」

「トランプ大統領の目標の1つは行政国家の解体だ。行政国家とは、税制、規制、貿易協定などのシステムが経済成長を阻み、アメリカ合衆国の主権を侵害するような官僚的な国家のことだ」

「第2次大戦後の政治と経済のコンセンサスは破綻している。一般の国民に、エリート層や国際機関よりも多くの権限を与えるシステムに移行しなければならない。新たな国家的経済システムが必要なのだ」

「私たちの国は、独自の文化と確固とした存在理由に基づく国家なのだ。その経済システムも、単にグローバルな市場の一部というのではなく、米国民にとって独特の意味を持つ市場経済なのだ」

「経済ナショナリズムこそが重要であり、TPP(環太平洋パートナーシップ)からの離脱はその表れだった。TPP離脱は、近代の米国史でも最も重要な瞬間を刻んだ」

「一部のメディアは経済ナショナリズムに激しく反対している。野党の言動とまったく同じだ。私たちは公約を実現するために、そうしたメディアと毎日、激しく戦っている」

 この日、バノン氏は大統領首席補佐官のラインス・プリーバス氏とともに会議場の壇上に上がっていた。バノン氏とプリーバス氏は「メディアは私たち2人が不仲だと報道しているが、事実ではない」と言って肩を抱き合ったりした。

 バノン氏の服装はネクタイなしのジャケット姿で、かつてはやしていたアゴひげは剃っていた。バノン氏はトランプ大統領よりもずっと明確に、そして豊かな表現力でトランプ氏の政治理念を説明した。バノン氏の説明によって、米国の経済利益を最優先し、国家主権を重視するトランプ政治のイデオロギーが改めて明確になった。

[JBpressの今日の記事(トップページ)へ]

筆者:古森 義久