スマホ打撃を言い訳にしないカメラ! 変革を打ち出したカメラの祭典「CP+2017」で見えたメーカー活路とは【Turning Point】

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2月23日(木)から26日(日)の4日間、パシフィコ横浜(神奈川県)でカメラと写真のワールドプレミアショー「CP+(シーピープラス)」が開催された。
昨年の熊本地震によってカメラの主要部品工場が被災したこともあり、一時製品出荷が滞るなどの影響があったが、現在は生産も再開され、カメラ業界としては、今回の「CP+」で勢いも取り戻したいところだろう。

先日発表となった今年の来場者数は昨年より1,127人減となる66,665人。
昨年はオリンピックイヤーということもあり、フラグシップモデルの発表で盛り上がりを見せたが、今年はこうした目玉となる製品がなく”カメラファン”にとっては話題性や盛り上がりに欠けるイベントだったのかも知れない。

事前に記者向けに行われたCP+の説明会では、中年男性やカメラファンが来場するイベントというイメージを刷新し、若い人や女性の来場者を見込み、来場者数の目標を前回同様7万人とした。
一方で、来場者の人数だけ狙うのではなく、新しい人にも来場して欲しいと補足しており、新しい施策は効果があったのかも気になるところだ。

■女性向けのコンセプトを打ち出したカシオ

昨年と一転して女性向けのコンセプトを打ち出したカシオ


今やカメラと言えばスマートフォンで撮影することが当たり前となっている。
コンパクトデジカメ市場は完全にスマートフォンに喰われた状態だ。そのような状況下でカシオだけはCP+会場のなかで異彩を放っていた。

昨年は同社のタフネスな腕時計「G-SHOCK」のコンセプトを持つ「EXILIM」デジカメ「EX-FR」シリーズを展示。カメラ部分と液晶モニターを分離できる「EX-FR」を中心にアウトドア向けのウェアラブル用途など、多彩な使い方を提案していた。

ところが今年のカシオは、アウトドア要素を排除した。
ブースはポップでカワイイ女性向けのイメージに徹底された。

そしてEXILIMと、スマートフォンやSNSとの相性の良さをアピールしていた。女性が立ち寄りやすく、製品の特徴を理解しやすい展示となっており、この展示コンセプトは非常に良いと感じた。

昨年は海外市場においてその独特な形状から便利なセルフィー撮影に対して評価が高かった「EX-TR」シリーズを逆輸入という形で女性向けにもアピールしていた。
しかし盛り沢山なブース内容が災いしたのか、訴求するポイントやターゲットへの打ち出しが弱くなっていた。

それを踏まえてか、今年は女性向けの製品群を展示しブランドコンセプトを明確にした。
そうしたコンセプトの展示の中から自分にあったカメラが選べるという雰囲気作りができていたのではないだろうか。


カシオは女性向けブランドコンセプトの製品群を展示


展示された製品には、昨年の「EX-FR」の派生モデル「EX-FR100L」もあった。
セルフィー機能の強化やスマートフォン連携、カラーリングの変更など製品作りが実に巧いモデルだ。
Instagram界隈では「ゴープロ女子」が話題となっており、超広角のウェアラブルカメラ「GoPro」を使ったセルフィーが流行している。

今回のブランディングでEX-FR100Lの超広角レンズやタフネス機能そしてデザインが、果たしてゴープロ女子にまで届けることができたかも注目したいところ。

■温度差があった大手カメラメーカー


昨年のオリンピックイヤー盛り上げリが一段落ついたことで、大手メーカーのキヤノンとニコンブースは、比較的落ち着いた印象だ。

キヤノンは新製品としてエントリーモデルの一眼レフ「EOS Kiss X9i」、「EOS 9000D」やミラーレス「EOS M6」の展示、ニコンはウェアラブルカメラ「KeyMission」大々的にアピールした。


ニコンのKeyMission


ニコンのKeyMissionは、硬派なイメージづくりをしており、最近流行のゴープロ女子向けには縁遠い印象だ。

GoProを意識しすぎているのか、GoProを追いかけすぎたために周回遅れになっているようにも感じるところでもある。
ニコンユーザーをもってしても、果たしてこの世界感についていけるのかは心配となるところだが、ニコンが今回の展示で新市場開拓に挑んでいる、なみなみならぬ意欲はうかがうことはできた。

しかしながらGoProが市場で評価されているのは使い勝手だけではない。
動画画質の良さもあるわけで、そうした部分を含めて、ニコンがGoProをどう越えていけるのかがカギとなるだろう。


ペンタックスのカメラ好きなら惹きつけられるAPS-Cフラグシップカメラ「PENTAX KP」

ペンタックスは、小型で個性的なデザインのAPS-Cフラグシップカメラ「PENTAX KP」を展示。

「PENTAX KP」は、レトロな雰囲気も醸し出している直線的なデザインを特徴としている。カメラらしさが感じられる不思議なデザインは、カメラ好きなら惹きつけられることだろう。

ペンタックスらしいコンパクトなボディに防塵防滴機能を搭載し、大きなダイヤルで使いやすい一眼レフにまとめ上げている。



今年の「CP+」は、キヤノンやニコンのパフォーマンス重視のフラグシップカメラが落ち着いた。その一方でミラーレス一眼メーカーが、ここぞとばかりにミラーレス一眼の進化をアピールしていたのが印象的だ。


ソニーとオリンパスはミラーレス一眼でもスポーツ撮影に対応できることをアピール

ソニーとオリンパスは、これまで「スポーツ撮影」はプロ向け一眼レフカメラの独壇場だったが、ミラーレス一眼でもスポーツ撮影に対応できることを体験コーナーでアピールした。
展示機でバスケットボール選手の動きを撮影することで、高速AFや動体追尾、高速連写など、スポーツ撮影に必要な機能をコンパクトなミラーレス一眼のボディで実現していることを実感することができた。


パナソニックは、プロ仕様の4K60pや6Kフォト搭載の「DC-GH5」を展示

パナソニックは、プロ仕様の4K60pで滑らかで高精細な長時間の動画撮影や6Kフォト(4992×3644ドットで秒間30コマ)機能を搭載する「DC-GH5」を展示。


富士フイルムは中判サイズのイメージセンサー搭載ミラーレス「GFX 50S」を展示

富士フイルムは中判サイズのイメージセンサーを搭載したミラーレス「GFX 50S」を展示。実機を触るには60分待ち状態となっていたほど話題性と人気も高いモデル。
パナソニック「DC-GH5」、富士フイルム「GFX 50S」ともに他社にはない強烈な個性を持つカメラだ。

■主催と出展社のコンセプトの一致が課題
冒頭に書いたように、今年の「CP+」は若い人や女性に訪れて欲しいということで様々な施策が行われた。

人気のファミリー向けの記念写真コーナー、ベビーカーでも通りやすい通路の確保、閉場時の音楽を「蛍の光」からSuperflyの「愛を込めて花束を」にするなど、来場者にとっての居心地の良さが重視された。さらに、学生向けには、広告業界へのポートフォリオセミナーも開催された。

しかしながら、こうした配慮に比較して、出展社の展示コンセプトは従来通りで、待ち時間を含めて家族でイベントを楽しむには、まだ難しい展示方法や内容が多かったようにも思えた。
来年は、主催も出展社も新しい顧客開拓に向けて明確なブランディングをしたカシオのように、間口の広いわかりやすいをキーワードで足並みを揃えた展示会となるよう期待したい。


執筆 mi2_303