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「1歳未満の赤ちゃんたちが、家庭で窒息死しているーー」。先日、消費者庁が発表した内容によると、2010年から2014年までの5年間で、160人もの1歳未満の子どもが亡くなっているという。多くのパパ・ママたちが赤ちゃんを迎えるために、ベビーベッドなど、環境を整えているはずだが、いったい何が起きているのか。防ぐ手立てとあわせて紹介していこう。

1歳未満は多くの時間を寝て過ごす。だからこそ窒息に注意を

そもそも、子どもの「窒息」はどのように起きているのか、発表の内容から探っていこう。消費者庁が発表したデータによると、「家庭内での就寝時に、0歳児の窒息事故が多数起きており、平成22年以降、160件(※)の死亡事故が確認されています」という。

【画像1】消費者庁のデータから。0歳児の不慮の事故死の原因は、窒息(就寝時)が3割にもなる

前回、子どもは溺死が多いとも紹介したが、それは年齢が1〜4歳の子どもたち。一方で0歳台では「窒息」が74人となっていて(出典元:厚生労働省「平成25年人口動態統計」)、特に1歳未満の子どもに迫るキケンだということが分かる。0歳児は1カ月ごとに成長し、変化が著しい時期。0カ月〜3カ月くらいまでは「眠るのが仕事」と言われるとおり、ほとんど寝て過ごすが、怖いのはその眠っているときに窒息してしまうことだ。事故が起きた状況をもう少し詳しくみていこう。

【画像2】0歳児の窒息死の事故状況。どれも痛ましい……。消費者庁の資料より筆者作成

首が座っていない乳児、寝返りがうてない乳児にとっては、大人にとっては思いもよらないもの(クッションや枕、寝具など)で、窒息してしまうのがよく分かる。大人にとってはなんでもないものが赤ちゃんにとっては凶器になるのだなと思うと、とても怖い。

1歳まではベビーベッド&赤ちゃん用寝具が理想的

消費者庁では、睡眠時の窒息を防ぐ方法も具体的に紹介されている。

●赤ちゃんはできるだけベビーベッドで眠らせる。柵はいつもあげておき、転落しないようにする
●布団は赤ちゃん用のものを用意する。枕も赤ちゃん用の固めのモノを使う
●寝ているそばに赤ちゃんの口を覆うようなもの(おもちゃなど)、首に巻き付いてしまうようなものを置かない
●寝ている子どもの近くに子どもの顔や頭が挟まる隙間をなくす
●1歳になるまでは、あお向けで寝かせる
●添い寝時に親が寝込まないようにする

こうしてみると、ベビーベッドと赤ちゃん用布団を使うことで、安全性が高まるのが分かる。

【画像3】イラスト/tokico

ただ、ベビーベッドは「買ったものの使わなかった」「置くスペースがない」という人も多いはず。
筆者も、添い乳(寝かせながらおっぱいを飲ませて、寝つかせる方法)で子育てをし、ベビーベッドは買ったもののほとんど使わなかった身からすると、「ベビーベッドで眠ってくれる赤ちゃんっているのだろうか……」とも思ってしまう。

だが、実際に、これだけ多くの赤ちゃんが窒息で亡くなっていることを考えると、やはり、ベビーベッドを寝室に確保するのが望ましいのではないか。特に、添い寝をしているときに寝込まないといわれても、ママの心身も出産から半年は本調子ではない。睡眠をとって心身を回復させる時期でもあるので、寝込まないというのは少々酷な話だ。1歳になるまでは、ベビーベッドを使うことを徹底し、ママは身体の回復に務めつつ、赤ちゃんが自分で布団などを払いのけることができるようになってから、家族とともに眠るのがいいのかもしれない。

あわせて、うつぶせ寝がキケンであることも知ってほしいという。
「うつぶせ寝がキケンと言われるようになりましたが、昔の子育て情報のままで、まだまだ知らない人もいます。保護者のみなさんにはうつぶせ寝が危ないということをぜひ知ってほしい」とSafe Kids Japanの太田由紀枝さんも話してくれた。

太田さんはさらに、アメリカのCPSC(消費者製品安全委員会)が発表している情報についても教えてくれた。CPSCでは、ベビーベッドに寝かせることを推奨した上で、「ベビーベッドには何も入れないで」というキャンペーンを展開しているそうだ。枕はもちろん、タオルケットや毛布なども使わないほうがよいという。それでは赤ちゃんが寒くて風邪をひいてしまうのでは?と心配になるが、「スリーパー(赤ちゃん用寝袋のようなもの)」や、靴下付きのパジャマを着せることで寒さの心配も解消することができるとか。

小さな赤ちゃんの寝顔は本当に天使のように愛らしい。その赤ちゃんを守るためにも、今一度、寝室の環境を見なおしてみてほしい。

●参考
消費者庁
CPSC “Bare is Best”●取材協力
NPO法人Safe Kids Japan
(嘉屋 恭子)