自分自身のプレーには納得していたFW本田圭佑だが…

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 重苦しい空気がミックスゾーンに流れていた。日本代表FW本田圭佑(ミラン)は11日のオマーン戦(4-0)をあらためて振り返り、「いいテストでしたね。感じはいい。(コンディションは)上がっていくと思う」と手応えを口にした。

 ミランで出場機会に恵まれず、試合勘が不安視された中での試合。チームとしても個人としても、15日のW杯アジア最終予選・サウジアラビア戦(埼玉)に向けた重要なテストマッチだったが、収穫は大きかったようだ。

「昨日に関しては感じは良くて、タッチ的な感覚も戻った。体力、ボールタッチ、試合勘。試合に出ていないことでそういう言葉が脳に入ることが問題で、精神的な意識がプレーに反映される。テストマッチということもあって、リラックスして(試合に)入ったことで感覚は戻った」

 努めて前向きに話す本田だが、バヒド・ハリルホジッチ監督は試合後の記者会見で「本田は試合のリズムが足りないということが確認できた」と名指しで言及。そのパフォーマンスに不満を隠さなかった。

 自己評価と指揮官の発言に「ギャップは感じている」と認めながらも、「それはありがたいとも感じている。批判も耳に入っているし、それもありがたい。それを見返したい気持ちがないならサッカーを辞めたほうがいい」と強気に言った。

「『パフォーマンスを上げてきたな』『本調子に戻ってきたな』と言われないといけない。こうやって強がって言うだけでなく、周りから『戻ったな』と言われることが大事」

 サウジアラビア戦で周囲を見返し、納得させるだけのプレーを披露することに自信を見せる一方で、指揮官は「キーとなる選手であっても、それに代わる選手のパフォーマンスのほうが高ければ、問題なくその選手を使う」と、本田を先発から外す可能性にも触れた。

「それは監督が決めることだけど、そう決めるのならそれは意味があること。その意味を説明する必要がある。それが納得できるなら受け入れる。監督にはそういう義務がある」。いつもは冷静なエースがわずかに表情を変え、気色ばんだ。

「今の時点で自分が代表において外される理由が……」。そう言いかけた本田はミランに話題を向け、「ミランでは外される理由に納得できるものがある。自分の中で成果を残せなかった。カカ、バロテッリ、エル・シャーラウィ……。みんなミランの困難な状況をチーム一丸となって何とかしようとしたが、乗り越えられなかった。俺もその一人。若返りを図ったチーム編成で外されるのは理解できる」と、ベンチに甘んじている現状に納得せざるを得ないことも認めている。

 しかし、代表ではどうか。「一つの時代の終わり。代表でもロシアのあとにそれが来るのかどうか。今までも自分の力で道を切り開いていた。代表にふさわしいかどうかは自分で判断できる。監督に決める権利があるのは大前提。それについてどうこう言うつもりはない。そこは誤解してほしくない。監督が(先発を)決めるけど、俺が自分で判断できる」。周囲が何と言おうと、監督がどんな評価を下そうと、自分自身はまだまだ日本代表に貢献できる、その力があるとの自負がある。

「サウジアラビア戦は勝たないといけない試合。だれが出てもね。スタメンで出るつもりで自分は準備している」。俺はまだできる。意地とプライドに懸けて、もう一度自分の存在価値を証明するつもりだ。

(取材・文 西山紘平)


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