介護ビジネスは「誰でも儲かる」というのは幻想であり、そんな時代はとっくに終わっている

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日本は超高齢社会であり、今なお、高齢者の数は増え続けている。このため、期待の“成長産業”として、高齢者ビジネスの代表業種である介護事業に新規参入する企業は多い。しかも、その多くは時間を節約するために、M&Aで行われている。しかし、その実態はとてつもなく厳しく、失敗して撤退する企業は後を絶たない。(ティー・オー・エス株式会社代表取締役、福祉・介護コンサルタント 高山善文)

大きな転換期を迎えている
介護ビジネスの現状

「もう、介護は儲からないよ」

 介護保険制度の始まりと共に脱サラして介護事業を立ち上げ、100億円を超える事業に成長させたのにもかかわらず、先ごろ他社に売却した経営者は言った。

 制度改正のたびに国に翻弄され続けてきた介護ビジネスは今、大きな転換期を迎えている。折しも現在、社会保障審議会において2018年度の介護保険制度改正議論の真っ最中だ。次期改正は介護サービス事業者にとって期待の持てる内容でないことだけは確かである。にもかかわらず、異業種企業による介護サービス事業者のM&Aが活発だ。数少ない成長市場と目されてきた介護ビジネスに今、何が起きているのか。

 2000年度の介護保険制度の始まりによって、異業種から介護ビジネスに参入した営利企業が相次いだ。医療事務のニチイ学館、教育事業のベネッセ、警備会社のセコムなどがその代表例といえよう。営利企業は、持ち前の営業力と規模の拡大、コストダウンによって利益の最大化を狙い、そのたびに国と攻防をしてきた。

 言うまでもなく社会保険である介護保険の財源は税金と保険料である。国から見れば、介護サービス事業者の儲かりすぎは給付費の増大を招くし、あまりにも報酬を絞りすぎると事業者は撤退してしまう。

 それでもなお、全国の介護事業者数はいまだに右肩上がりを続けている。従前は自ら新規事業として介護事業を立ち上げる企業が多かったが、近年の特徴は、M&Aによって異業種から介護ビジネスへ参入する例が多くなっていることだ。

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