By K嘛

過去映画作品を分析したり解説したりするビデオエッセイをYouTubeで公開しているルイス・ボンドさんというユーチューバー(YouTuber)が、スタンリー・キューブリックをテーマとしたビデオエッセイをアップロードしたところ、「時計じかけのオレンジ」のサウンドトラックを販売する音楽出版会社により著作権侵害で訴えられ、最高15万ドル(約1600万円)の損害賠償を求められていることが明らかになりました。

YouTuber Sued Over Stanley Kubrick Movies Analysis - TorrentFreak

https://torrentfreak.com/youtuber-sued-stanley-kubrick-movies-analysis-160606/

映画監督を目指しているというボンドさんは、YouTubeChannel Criswellというチャンネルを開設し、映画作品を解説するビデオエッセイをアップロードしています。そのボンドさんが、2016年6月3日に「I'm Being Sued(訴えられました)」というムービーをアップロードし、同年2月に公開したスタンリー・キューブリックの作品に関するビデオエッセイが著作権を侵害しているとして訴えられ、裁判所から召喚状が届いたことをムービーの中で明かにしました。

I'm Being Sued - YouTube

ムービーで事の経緯を説明するボンドさんは訴訟について「ものすごく心配している」と話し、訴訟を起こした人については言及しなかったものの「訴えを起こした人は、最高15万ドル(約1600万円)の損害賠償を支払えと言っています」と莫大な損害賠償を求められていることを赤裸々に語っています。

IT関連メディアのTorrentFreakによると、ボンドさんを訴えたのはSerendip LLCという企業です。Serendip LLCは2月にボンドさんのムービーに対して削除依頼を申請。しかし、ボンドさんが削除依頼に対して異議申し立てを行ったため、YouTubeは「10営業日以内に連邦裁判所で訴訟を起こさないのであれば、動画は再び公開状態になります」とSerendip LLCに通知しました。YouTubeからの通知に従い、Serendip LLCはボンドさんを相手取り訴訟を起こしたというわけです。

ボンドさんはムービーの中で「スタンリー・キューブリックのビデオエッセイに関する問題はもう終わったことだと思っていました。訴えられるなんて夢にも思っていなかったです」と話しています。

問題のビデオは、再編集されボンドさんのもう1つのチャンネルで公開中。ムービーの冒頭では「著作権侵害による削除申請により、15分以上のムービーの公開を禁止されたため、問題のムービーを再編集してこちらのチャンネルで公開しています」という旨のメッセージが表示されます。

Stanley Kubrick - The Cinematic Experience - YouTube

Serendip LLCは映画「機械じかけのオレンジ」のサウンドトラックを手がけた作曲家ウェンディ・カルロスが作曲した楽曲の著作権を所有しており、ボンドさんのムービーで「時計じかけのオレンジ」のサウンドトラックの「時計じかけのオレンジ・タイトルミュージック」「時計じかけのオレンジ 〜マーチ」「ウィリアム・テル序曲」という3つの楽曲が許諾やライセンスなしで使用されていると主張しています。Serendip LLCによると、相当な分量の楽曲が無断で使用されていて、使用されている楽曲は映画の映像と同期しておらず、かつ、楽曲に対する音楽的な解説もなく、無関係な映像のBGMと使用されているとのこと。

しかし、TorrentFreakは、楽曲の解説なしでBGMとして使われているというSerendip LLCの主張が、「フェアユース」に対する予防線ではないかと考えています。著作権者の許諾なく著作物を使用しても、公正な利用であると認められれば著作権侵害に当たらないとするフェアユースという著作権侵害の主張に対する対抗手段がアメリカにあり、Serendip LLCはボンドさんが楽曲使用をフェアユースと主張する可能性を考慮しているのではないかということです。

TorrentFreaksは「大きな企業がボンドさんのような一個人を著作権侵害で訴えるのはインターネットから大きな反感を買う可能性がある」としています。