生きた甲虫とコンピューターの「ハイブリッドロボット」開発される

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生きている甲虫とコンピューターのハイブリッドロボットが開発された。行動を人が制御できるため、被災地での捜索などに役立つ可能性があるという。

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生きている甲虫とコンピューターのハイブリッドロボットが、シンガポールの南洋理工大学などの研究チームによって開発された。脚の動きを人が完全に制御できるという。

ロボット化された昆虫は、今回の甲虫のほかにも、これまでに数多くの例がある。スズメガやゴキブリなどだ。しかしそうした昆虫では、歩く速度や歩調、歩き方を人が完全に制御できなかった。そうしたことができるロボットとしては、この甲虫ロボットが第1号になるという。

『Royal Society Interface』誌に発表された論文によると、研究チームは、クビワオオツノハナムグリ(学名:Mecynorrhina torquata)のいちばん前の脚の筋肉に電極を付け、各脚に特定のシーケンスで電流を流すことによって特定の運動を促すようにした。その後、甲虫の上に搭載された無線装置を用いて制御した。

研究チームは、甲虫の通常の動きを3Dモーションキャプチャーシステムで追跡し、シーケンスをプログラミングして、さまざまな歩き方をさせた。甲虫に「ギャロップ」で走らせてから、「3脚」で歩かせることにも成功した。

このハイブリッド昆虫は、被災地で役立つロボットの開発に向けた有益な一歩になるかもしれない。例えば、カメラやマイクを装着して小さな隙間を通り抜けさせ、瓦礫に埋もれた被災者を捜索させることが考えられる。

研究チームはこのハイブリッド昆虫について、人造ロボットと比較してさまざまな利点があると述べている。例えば、甲虫は生きているので、人が制御するのをやめて、自由に移動させることもできる。

「昆虫とコンピューターのハイブリッドロボットが障害物に出くわしたら、コントローラーのスイッチを切って、本来備わっている神経制御ネットワークで障害物を乗り越えたり避けたりさせることができる」と、論文は述べている。

論文はさらに、ハイブリッドの甲虫なら、消費電力が人造ロボットの数百分の1で済むと指摘している。また、今後は、「生きている昆虫プラットフォームに組み込まれた環境発電機」によって自己発電できるかもしれないとも述べている。こうしたことから研究チームは、こうした生体とのハイブリッドなロボットについて、「自然界が提供するロボット・プラットフォーム」だと結論づけている。

一方で、動物愛護活動家たちは、昆虫が痛みを感じることができる証拠があると主張し、ロボットと昆虫のハイブリッドの開発を批判している

※ 南洋理工大学の研究チームは2015年3月、カリフォルニア大学バークレー校の研究チームと提携して、甲虫の飛行を制御する研究も行っている(以下の動画)。