ハリルは縦にポンとボールを入れる速いサッカーを目指しているけど、イランみたいに対人が強い相手には通用しなかったね。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 イラン対日本の結果は1-1の引き分けだったとはいえ、内容的には日本が3、4失点して負けても不思議ではなかったね。日本は課題が多かったし、こういうレベルの高い相手に対する免疫が明らかに足りないよ。ハリルホジッチ体制で初めて対等レベルの相手と対戦したけど、球際、展開力、高さ、セットプレーなど、すべての面で日本は劣っていた。
 
 激しい競り合いが多いなか、前半の宇佐美、香川、柴崎らは、ほとんどなにもできなかった。一生懸命やっているのは分かるけど、彼らは1対1で潰されて大半の時間は消えていた。今まで生ぬるいプレーをしていたのが、図らずも浮き彫りになったんじゃないかな。
 
 吉田のPK献上はいただけないプレーだったけど、あの場面は日本にとって、ある意味“ラッキー”でもあったんだよ。倒して警告が出てもおかしくなかったし、そうなれば吉田は二枚目の警告で退場だからね(32分に1枚目の警告、45+1分にPK献上)。
 
 吉田も退場も覚悟して、ファウル判定後にずっと下を向いていたでしょ。“優しい審判”で助かったね。カードが出ないと分かって、吉田は「やれやれ」という感じだった。もし吉田が退場していたら強化試合の意味がなくなっていたわけで、不用意な対応は糾弾されてしかるべきだよ。
 
 ハリルは縦にポンとボールを入れる速いサッカーを目指しているけど、イランみたいに対人が強い相手にはまったく通用しなかったね。試合の序盤でそれが分かったはずなのに、同じような展開が続いていた。あれだけ機能していないのだから、もう少し戦い方の工夫をしてもいいよね。それとも、別の戦い方を知らないのかな。
 
 選手の出来が悪くても、いつも軸となるメンバーは同じ。香川、本田、長谷部、吉田ら主軸だって、不甲斐ない出来ならスパッと外すべきだよ。ハリルはなんで躊躇するのかな。外せない裏事情があるとしか思えないね。
 
 交代策を見ても、同じタイプを入れるだけでサッカーの内容がなにも変わらない。南野の存在も終盤まで忘れていたのかな。「時間がない、すぐ南野を呼べ!」という感じでベンチが慌てていなかった? あれがデビューと言えるの? 5分程度の出場をチャンスと言えるの? 誰もが疑問に思うよね。
 
 リオ五輪世代からの突き上げがほとんどないのも気掛かり。ベンチにいるスタッフだけ無駄に豪華で、通常のコーチ陣に加えて、U-22代表監督、技術委員長まで座っている。強化する部分を間違えているんじゃないかな。
 
 だって、肝心の若い選手たちにチャンスがまったく巡ってこないんだから。ようやくリオ五輪世代の選手が出場すると思ったら、南野を88分に投入しているし、強化のチグハグ感には笑うしかないよね。
 
 改めて違和感を覚えたのは、ベンチに霜田技術委員長が座っていること。その事実に組織の緩みを感じてしまう。ハリルが座ってほしいと要望したようだけど、彼が上司になって組織を動かしている感すら受けるよ。査定する側の技術委員長が現場に出ちゃったら、誰が俯瞰して組織を仕切るの? ハリルの独裁体制が始まりそうで怖いね。
 
 話は変わるけど、日本陸連(日本陸上競技連盟)が8月の世界選手権後に会議を行なって、こんな事実が確認されたようだよ。日本人選手の記録自体は伸びていたけど、逆に世界との記録の差は広がっていたんだ。
 
 つまり強化方法、組織の在り方を変えないと、いつまで経っても世界との差は縮まらない。これはサッカーもまったく同じ。選手たちが「成長している」「上手くなっている」「手応えがある」と言ったところで、実際に世界レベルで通用しなければ意味がないよね。