我孫子東の岩田裕生が1失点完投で八千代松陰を破り県大会出場!

岩田裕生投手(我孫子東)

 近年、成長著しい我孫子東と、多田野数人投手(現・石川ミリオンスターズ)とバッテリーを組んでいた大木陽介監督により、復活傾向にある八千代松陰との一戦。本来であれば、11日に行われる予定だったが、雨天で順延が続き、5日延べての決戦となった。

 試合は、1回裏、我孫子東が1番草刈拓臣(3年)が左前安打を放つと、2番坂巻涼(3年)の犠打で一死二塁となって、3番恩田 綾(3年)の右前安打で一死一、三塁とすると、4番岩田 裕生(3年)の犠飛で我孫子東が1点を先制すると、さらに2回裏、6番前田源太(3年)が右中間を破る三塁打を放つと、7番染谷龍樹(3年)の中前適時打で2点を先行する。

 投げては背番号1を付けた岩田が好投。我孫子東には、180センチ100キロの剛腕・宮城 正規(3年)がいるが、春からは岩田の方が良かったということで、この春はエースナンバーをつけている。

 その岩田だが、昨年に比べて投手らしさが増した。182センチ70キロと細身で、昨年からステップ幅が狭い上半身主導のフォームだった。今年は足を上げたときのバランスの良さ、やや歩幅が広がり、踏み込んだ左足が突っ張る癖がなくなり、前足に体重が乗って、体も突っ込まずに綺麗に上半身の旋回することができるため鋭い腕の振りができる。

 常時130キロ前後(最速132キロ)のストレートと昨年より球速が大きく変わったわけではないが、内外角へのコントロールがだいぶ良くなった。狙い通りに投げることをコマンドと呼ぶが、そのコマンドが高い。そして同じ腕の振りでカーブ、チェンジアップ、スライダーを投げ分ける。

 変化球でカウントを稼ぎながら、ここぞというときにアウトローにストレートが決まり、見逃し三振を多く奪うことができた。大木監督は、「見逃し三振は良くないのですが、しかし横から見ても彼のストレートは素晴らしかった」と敵将が嘆くほど、良かった。投球シーンを見ていて、誰に似ているかと考えたとき、西野 勇士(千葉ロッテ)がピタリと来ると感じた。西野は岩田と同じく上半身主導のフォームだが、腕の振りの鋭さ、上半身の使い方が非常に上手い。体を突っ込ませず、一気に腕が出てくる感覚がある。岩田はそのスタイルがあっているかもしれない。

志治 佑眞(八千代松陰)

 その岩田を援護したい我孫子東は、一死から3番恩田の左前安打。さらに盗塁を決めると、岩田自ら左前安打を放ち、一死一、三塁とすると、西に、三塁となった、6番前田の適時打、3番染谷の右前適時二塁打で4対0と点差を広げる。

岩田は7回表に、味方の失策で無死二、三塁のピンチを招いたが、5番原の犠飛による1失点にとどめ、完投勝利。県大会出場を決めた。

我孫子東の大井監督は、「まだ出場している2年生に焦りがあったのか、ミスがありました。3年生はさすがでしたね。試合を一つずつ振り返ると、反省するところはありましたが、面白い試合でしたね。こういう名のある八千代松陰さんに勝てたのは自信になったと思います」選手たちの戦いぶりを評価していた。岩田だけではなく、多くの選手が昨年より成長を見せていた。正捕手の恩田は、スローイングの精度が2.00秒前後をコンスタントに叩きだすようになり、1.90秒台を計測することもあった。何よりスローイングの精度も上がり、リード面でも狙い球を絞らないリードができていた。

 グラウンドの立ち居振る舞いを見ると、落ち着きがあり、頭の回転が速いタイプと感じた。また背番号15の草刈はアグレッシブな打撃が目につき、打球の速さ、パンチ力ある打撃は今後も注目していきたいものがあった。県大会でも楽しみなチームである。

 敗れた八千代松陰だが、好選手が多かった。背筋がしっかりと伸びた構えから、鋭い打球を打ち分け、投手としても、120キロ後半のストレート、縦の変化球を投げ分ける4番の志治 佑眞(3年)、身のこなしの良さが目立つフィールディング、安定性のあるスローイングに加え、独特のスイング軌道からライナー性の打球が多いショートストップ・星田嶺央(3年)、8回裏に3番手としてマウンドに登り、角度ある130キロ前半のストレート、曲りが鋭いスライダーを武器に投げ分け、2奪三振の本格派右腕・橋本飛翔(3年)と能力が高い選手が揃っていた。

(文=河嶋 宗一)