全三巻で企画された《オーストリア綺想小説コレクション》の最終巻。先行する二冊もとびきりユニークな作品だったが、本書も負けず劣らずの不思議な小説だ。原書は1921年の刊行。枠物語の形式で書かれている。枠にあたる部分は、二十世紀にいるゼノン・フォラウフが語り手だ。彼は夢のなかで繰り返し、前世の記憶に立ちかえる。そこでの自我は、十八世紀の男爵メルヒオール・フォン・ドロンテなのだ。