レンジャーズ・ダルビッシュ有【写真:田口有史】

セカンドオピニオンでも手術を勧められたダルビッシュ、最終結論は今週末に発表へ

 レンジャーズダルビッシュ有が、トミー・ジョン手術と呼ばれる右肘靱帯修復手術を受ける方向で準備を進めているようだ。最終的な結論は今週末にも正式発表される見込みだが、レンジャーズのジョン・ダニエルズGMは「その方向で進んでいる」と話した。

 右腕に異変を感じて1回で降板した5日のロイヤルズ戦後、当初は右上腕三頭筋の張りと発表されていた。だが、翌日にMRI検査を受けた結果、右肘内側側副靱帯が部分断裂していたことが判明。レンジャーズでチームドクターを務めるキース・マイスター医師から提示された選択肢は次の3つだった。

1、このままプレーし続ける
2、リハビリを続けながら治療する
3、トミー・ジョン手術

 この中でマイスター医師が強く勧めたのは、トミー・ジョン手術。復帰まで平均12〜15か月を要する大きなプロセスのため、簡単に下せる決断ではない。そこで、昨年、ヤンキースの田中将大が右肘を怪我した際にセカンドオピニオンを求めたデービッド・アルトチェック医師に、同じくセカンドオピニオンを求めた。

 10日にニューヨークでメッツのチームドクターでもあるアルトチェック医師の診察を受けた結果、やはり最善の治療法として勧められたのはトミー・ジョン手術だった。サードオピニオンとして、トミー・ジョン手術の権威として知られるジェームス・アンドリュース医師の意見も求めるが、ダニエルズGMは「別の治療法が推薦されるとは思わない」と話している。

昨年の田中と同じPRP治療ではなく、手術を勧められるのはなぜか

 靱帯の部分断裂が発覚して以降、ダルビッシュは球団を通じて英文のコメントを発表しただけだが、ニューヨークに出掛けた9、10日の2日間を除いてはキャンプ施設に姿を現し、左投げでキャッチボールをするなど明るい様子を見せている。ダニエルズGMは、ダルビッシュの様子について「状況をしっかり把握して、頭の中も整理がついているようだ。球団、本人、医師の3者すべてが同じ意見でまとまっている」と話した。

 手術という選択は、いろいろな点から見ても妥当だろう。昨年、同じように右肘靱帯の部分断裂を負った田中は、PRPと呼ばれる自己多血小板血漿療法を受けて、約2か月半後には戦列復帰を果たしている。ダルビッシュの場合、この治療法を含むリハビリでの治療は選択されなかった。

 それぞれ靱帯の損傷具合が異なるために、一概に比べることはできないが、今回、ダルビッシュがトミー・ジョン手術を勧められた最大の理由は「2度目の負傷」という認識が強いからだ。「2度目」とは、昨年8月に負った右肘の怪我を「1度目」と数えているから。この時は「靱帯周辺が炎症を起こしている」という説明で、患部を休ませて炎症が引いたことを確認し、そこから肘の強化を始めた。ちなみに、この時にPRP療法は行われていない。

 11月下旬に受けたMRI検査で炎症が引いたことが確認され、投球プログラムを始めたわけだが、今回、再び肘を痛めた。しかも、負傷箇所は前回と一緒。違いは「負傷の程度」で、前回は靱帯の線維には異常はなかったが、今回は線維に傷がついている。再びリハビリを選択することは大きなリスクがある。

 また、一度切れた靱帯は自然治癒することがない。靱帯がそれ以上に切れることを避けるため、もしくは切れる速度を緩めるため、靱帯周辺の組織や筋力をアップさせることはできるが、対処療法に過ぎず、根本治療にはならない。「遅かれ早かれ手術をするなら、早いうちに」となるだろう。

ダルビッシュ本人にとっても、このタイミングで手術を受けた方が得策?

 ダルビッシュ本人にとっても、今このタイミングで手術を受けた方が得策だ。来週早々に手術を受ければ、早ければ来季前半にメジャー復帰の可能性がある。手術後すぐに肘の状態や成績が安定することは難しく、復帰したその年は大半の投手が「調整」の期間に充てている。

 手術経験者の誰もが口を揃えるのは「手術の効果が感じられ、結果が伴うようになるのは、手術から2年を過ぎた頃」だということ。ダルビッシュの場合、契約最終年となる2017年が2年目にあたる。シーズン終了後にフリーエージェント(FA)になることを考えると、その年は安定したパフォーマンスを披露しておきたいところ。早く手術を受ければ、それが可能になり、FA市場での価値を上げることができるだろう。

 球団のメリットは、極めてビジネスライクな話になるが、ダルビッシュが怪我をした場合に備えて、契約に“保険”の条項が付記されていたこと。つまり、ダルビッシュが怪我で手術を受け、1年を棒に振った場合、その年俸の一部が保険金で支払われるということだ。

 今季、ダルビッシュの年俸は1000万ドル(約12億1000万円)だが、レンジャーズはその半分の500万ドル(約6億5500万円)以上を保険金で賄うことができる。この保険金を元に、外部から戦力を獲得ができるというわけだ。ちなみに、リハビリでの治療の場合は保険金は支払われないという。ダニエルズGMは、現時点での外部からの補強は否定しているが、自由になる資金を持っていて損はない。

 ダルビッシュは近日中にも最終的決断を下して、記者会見を開く予定だ。

佐藤直子●文 text by Naoko Sato

群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。