あなたは自分の買いモノを愛せますか/野町 直弘
あなたは最後まで責任を持ってその買いモノをしていますか?

私は下手ですがゴルフを楽しみます。
ゴルフは色々な道具が必要なスポーツなのでお金はかかりますが、道具を揃えることも楽しみの一つです。今回はそんな買いモノについて書きます。

昨年の10月頃だったと記憶していますが、私はあるWebサイトでゴルフシューズを購入しました。それはスポーツメーカー品ではなくて名前も聞いたことがない輸入モノで品質的な不安はあったものの比較的求めやすい値段であったこと、デザインと色が好みだったことから購入したものです。購入からモノが届くまでのお店の対は申し分なくまた実際のモノを確認してかなり気に入り、履き心地も良く、良いモノを買う事ができたと感じていたところでした。

ところが、先日そのシューズの踵全体がプレイ中に知らない間に取れてしまったのです。
ゴルフをやられる方でしたらご存知でしょうが、スパイクの鋲が一か所、2か所取れることは良くあることです。しかし、踵全体が根こそぎ取れてしまう、それも一年経たずにというのは殆どないレアなケースと言えます。

その後の不誠実な店舗側の対応も重なり私は相当落ち込みました。最後には店舗も相応の謝罪をしてくれたので一件落着になったのですが、それでも何かモヤモヤしたものを感じずにいられません。どうも納得いかないのです。何故でしょう。

そう、多くの人は「自分が良い買いモノをしたと信じている(信じたい)」のです。
自分が良い買いモノをしたと一時期は考えていたにも係わらず、踵が取れてしまうような所謂酷い買いモノだったことが心の中のモヤモヤ感につながっていました。

これは企業でモノを買われているプロフェッショナルバイヤーの方も同じでしょう。
皆良いサプライヤーから最高の買い物をしていると信じています(信じたいと
思っています)。これは悪いことではありません。

一方でちょっと失敗した買いモノだったな、と思うこともたまにはあるでしょう。また、今の自分の買い物が一番良い買いモノか検証してみたいと考えているバイヤーもいるでしょう。しかし、そんな検証はできないものです。というのは多くの買いモノの選択肢を実際に購入して比較することは殆どの場合にあり得ないからです。
またそのように考えているバイヤーも殆どのケースで自分が選んだサプライヤや自分の買いモノが悪い買いモノだったとは認めたくない(認めない)でしょう。

バイヤーのサプライヤ選定に至る意思決定は教科書的には多面的な評価を行い総合的に一番良い評価のところに決定しましょうとなります。また一人のバイヤーの独断だけでなく、会社全体としての決定を承認プロセスを経て最終決定すべきでしょう。
しかしベースとなるサプライヤ選定提案は担当バイヤーの仕事であることは間違いありません。またそこにバイヤーの主観を入れるなというのは到底無理なことです。

私はむしろそこに主観が入ってもよいと考えます。意思決定をするのが人間であれば好き嫌いがあるのは当然なことです。ここと取引をしたい、このサプライヤからこの新しい技術を導入してみたい、という思いはむしろ大切にすべきことではないでしょうか。

このようにバイヤーの意思決定に主観が入ってくるのは止むをえないことです。
しかし忘れてならないのはこの意思決定を行ったバイヤーが説明責任をもつということです。またそれ以上にこの意思決定に対してバイヤーが責任をもつことが大事なこと。

何らかのトラブルがあっても最期まで付き合い抜き、サプライヤとその辛苦をともにすること、たとえ社内の人間を敵に回してもサプライヤを信じ抜き腹を括ること、また自社のメンバーの攻撃からサプライヤを守り抜くこと。これがバイヤーの責務ではないでしょうか。

あなたは自分の買い物を愛し、最後まで責任を持てているでしょうか。