2014教育サービス・フランチャイズ動向【前編】/今野 篤
現在、子供向けの教育サービスフランチャイズ(FC)は、確認できるもので80本部ほどある。その内訳は個別指導FCが約50、それ以外の学習教室、幼児教育、英会話・英語教室、民間学童FCが30ほどある。今もなお、教育サービスFCは増え続けており、これは時代の新しいニーズを反映した結果だと言える。FC企業による新たな教育パッケージは大手を中心に年々増えており、その関係はかなり入り乱れてきている。

群雄割拠時代に突入した個別指導FC。50本部8000教室

 現在、個別指導フランチャイズ(FC)ブランドは確認できるだけで、大小含め50本部ほどある。

 トップランナーの明光義塾(明光ネットワークジャパン)、ITTO個別指導学院(自分未来きょういく)、スクールIE(拓人)中心に、大手集団からは個太郎塾(市進HD)、京進スクール・ワン(京進)、AXIS(ワオ・コーポレーション)、さらに塾の周辺領域から城南コベッツ(城南進学研究社)、ベストワン(ECC)、トライプラス(トライグループ)なども加わり、個別指導FC教室は8,000にも上る。日本全国に学習塾は約5万あると言われる中、実に6教室に1教室がFCになる計算だ。

 日本フランチャイズチェーン協会が発表するFC統計調査からも、個別指導FCの勢いがわかる。2012年の統計によると、個別指導FCも含む学習塾・カルチャースクール分野の売上高は前年比107.9%の3,783億円だった。チェーン本部数は昨年同様に83だったが、10年前に比べて倍増している。また、FC教室数は前年比101.6%の32,163教室、1教室あたりの売上高も前年比106.2%の1,176万円と確実に増えている。

 実際には、新興FC本部の進出と早期退職者のFC加盟が増え、新規開校教室はもっとあるものと察する。この背景には、FCに加盟したものの上手くいかず、早期に廃業した教室の存在があるからだ。

 以前のFC展開と言えば、直営教室の成功をベースにFCモデルを開発し、拡販していくケースが多かった。老舗の明光義塾やITTO、スクールIEがそうだ。しかしここ数年の傾向として、直営教室はわずか数教室でも、FC展開をする塾が増えている。中には直営教室が0のチェーンもあるほどだ。これは中小やベンチャーといった、創業間もないアーリーステージにいる企業に多く見られる。

 一方、大手は個別指導以外にも、幼児教室や英語教室、学童教室など様々なパッケージを開発することでFCとしての総合力を高め、幅広い層の生徒集客を狙う戦法を取るようになってきた。



異業種参入組、ベンチャー系が市場を牽引

 ITの進化が教育の変革を引き起こし、社会が熟成され少子化ゆえに教育の多様化が進む。それを背景に個別指導型のシェアは年々高まり、個別指導FCの教室数と売上高もともに伸ばしてきた。その中で近年シェアを拡大してきたのが、異業種参入やベンチャーといったアーリーステージのFC勢である。

 異業種参入組では、先に述べた城南コベッツ(城南進学研究社)が予備校、ベストワン(ECC)が学習教室、トライプラス(トライグループ)が家庭教師で培ったノウハウを元にし、個別指導のコンテンツ化を図りFC展開中だ。

 多くのベンチャー系塾では、デジタル教材を使った自習型の形式をとり、リーズナブルな授業料を設定することで一定層の消費者を捉えた。さらに低価格で開業できることもあり、加盟希望者の懐事情と相まって教室数を急速に伸ばしている。少し前ではセルモ(エデュケーション・ネットワークス)やSSS進学教室(サンマエデュケーション)、そしてヒーローズ(東海出版)がこの代表例である。

 今やFCショーやフェアに行けば、雨後の竹の子如く、必ずと言っていいほど新たなFC本部が出展している。FC本部の増加は競争を激化し、消費者対して差別化されたサービスを提供できない、もしくは加盟者に対して魅力あるパッケージを提供できないFC本部は、競争から脱落し始めている。

 また、あまりにも加盟希望者の争奪戦に力を入れ過ぎて、加盟後のフォローが後回しになっているFC本部は決して少なくない。しかしFCビジネスの成功には、加盟者の育成という避けて通れない大きな問題が潜む。

個別指導FCの種類

 個別指導FCは、現在確認できるもので50本部ある。個別指導FCを、「アーリーベンチャー型」「異業種参入型」「集団指導塾参入型」「個別指導専門型」と大きく4つのタイプに分けて解説する。

■アーリーベンチャー型

 FCに参入してから10年に満たないこのグループでは、個別指導のセルモ(エデュケーションネットワークス/大阪)の300教室を筆頭に、ヒーローズ(東海出版/静岡)が120教室と勢力的に展開中。このグループの企業は、低資本で加盟できるモデルやデジタル教材を活用することで、授業料・加盟金共に戦略的な価格付けをし、既存の個別指導FCとは一線を画すビジネスモデルを構築した。

 この他、SSS進学教室(サンマエデュケーション/京都)、英才個別指導学院(エイサイ・コミュニケーション/神奈川)、個別指導GRIP(心地/千葉)、学びの森 JーSTUDIO(グロウバレー/埼玉)などが代表例である。

■異業種参入型

 塾以外の業種から参入したきたこのグループでは、城南コベッツ(城南進学研究社/神奈川)、トライプラス(TRGネットワーク/東京)、ベストワン(ECC/大阪)などが教室数を伸ばしている。これらの企業は、自社のコンテンツやノウハウを塾用のFCパッケージに仕上げ、差別化を図る戦略をとる。

 トライプラスは、家庭教師で培った講師ネットワークを土台に、城南コベッツは予備校で培った成績保証制度や映像授業、ベストワンは総合教育機関ECCのコンテンツやネットワークを活かしたFC創りをしている。

■集団指導塾参入型

 集団指導塾から参入するこのグループは、京進スクールワン(京進/京都)や個太郎塾(市進HD/千葉)、個別指導Axis(ワオ・コーポレーション/大阪)を始め、フリーステップ(成学社/大阪)、秀英iD予備校(秀英予備校/静岡)など早々たる大手上場塾の名前が並ぶ。このグループは、企業スケールやブランド力を有することで、個別指導教室の勢力拡大を狙う。

 個太郎塾は自社開発の映像コンテンツを各教室に導入、個別指導Axisや京進スクール・ワンは東日本での展開、フリーステップや秀英iD予備校も加わり、集団指導塾による個別指導展開はいよいよ佳境に入ったようだ。

■個別指導専門型

 老舗の明光義塾(明光ネットワークジャパン/東京)、ITTO個別指導学院(自分未来きょういく/東京)、スクールIE(拓人/千葉)などは、これまで培ってきたFCのノウハウを活かし、新たなパッケージの開発が活発化している。

 明光ネットワークジャパンは、早稲田アカデミーと共同で難関校・上位校を受験する高学力層向けの早稲田アカデミー個別進学館他、世界を視野にNO.1を目指す明光サッカースクールなどをFC展開。自分未来きょういくは、快適な学習空間と英語施設を併設したみやび個別指導学院、女子専用のすみれ個別指導学院、低価格なNOVA個別指導学院や家庭教師さらさなど、多チャンネル化を進める。やる気スイッチグループの拓人は、個別指導の他に幼児教室チャイルド・アイズ、英会話WinBe(ウィンビー)、民間学童Kids Duo(キッズデュオ)を集結させ、幼児から高校生向けの教育サービスを一体にした複合施設を展開中。また、スポーツを科学するゆめスポを新たにプロデュースした。

 この他、学研CAIスクール(学研エデュケーショナル/東京)は学習のタブレット化など、Dr.関塾(関塾/大阪)、早稲田育英ゼミナール(早稲田育英ゼミナール/東京)、JUKUペガサス(ペガサスプランニング/福岡)、名学館(名学館/愛知)も独自路線を打ち出し全国展開を進める。